On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2013-06-28 09:35:22

無念ふたたび


▼「希望の現場 メタンハイドレート」(ワニプラス)が、既にして、たとえばアマゾン(*アマゾンをはじめ多国籍企業はきちんと税を払ってください)で「在庫切れ」となってしまいました。

 版元や編集者に「この印刷部数では、きっと在庫切れになって、読者に迷惑をかけます」と最初から申してきたのに、さっそくこの現実です。
 発売前の増刷、という異例の措置はありましたが、それを合わせても1万3千部。日本国民の「建国以来初めての自前資源」への願いと、ほんものの希望への渇望、そしてメイン著者の青山千春博士の新しい生き方へのフェアな関心、それらの強さを、ぼくは実感しています。
 この書の後半、「希望の現場とは何だろう」を苦しみつつ書きながら、それをありありとぼくは身近に感じていました。

 発売日は、きのう6月27日。しかし、たとえば上記のアマゾンの入荷日は「6月30日」となっていて、さらに本日6月28日、すでに「在庫切れ」です。


▼ほんとうは、根本の書、「ぼくらの祖国」(扶桑社)で、まったく同じ「読者の求めに応じられない無念」、「本を読みたい、という国民がそこにいらっしゃるのに、本がなかなか印刷されない」という悲痛を、特に出版の初期、読者の要望がいちばん強かったときににこそ、さんざん味わいました。
 その無念を、青山千春博士にも繰り返させるのは、辛いことです。
 悲痛というのは大袈裟じゃないか、と感じるかたもいらっしゃるでしょう。分かります。しかし、一字一字に魂を入れて書きあげた本は、書き上げただけでは「本」ではありません。読者の体内に入って初めて、「本」になることができるのです。
 読者がいないのなら、もって瞑すべし、印刷部数がどれほど少ないままでも、一切何も言えない。
 しかし読者がそこに、そんなに沢山いらっしゃるのに、なぜか印刷されない。
 これほど残念無念、悲しいことはありませぬ。

 まだ見ぬ読者のみなさまがた、こころの底から、ごめんなさい。
 いつか、こういう壁が倒せる日も来るでしょう。
 待ってください、どうかお待ちください。
 版元や編集者のせいにするのではなく、「こんな本はこんな程度にしか読まれない。多くの関心は写真集やタレントの本、あるいはハウツーもの」という日本の出版界の思い込みを、わたしたちの静かな、たゆまぬ努力で、きっとすこしだけは変えてみせます。


▼そして真の力は、やはり読者です。
「ぼくらの祖国」が現在、ささやかなりにロングセラーになっているのは、たびたび繰り返された、すこし前まで果てしなく繰り返された「在庫切れ」にめげずに、負けずに、待ってくださった読者のおかげ、ただただ、みなさん自身のおかげなのです。
 社交辞令など、もちろんカケラもない。
 読者こそが創る「本」という文化。だから、書き手のぼくも、また書こうという気がするのです。

…青山千春博士は船乗りです。
 船乗りという、にんげんは、「過去の波は一切、考えない。いま乗り切りつつある波も、もはやあまり考えない。考えるのは、ただ、次の波だけ」というオモシロイ性質があります。
 だから、日本女性で大型船船長の資格をとるファーストランナーであった青山千春博士はもう、次の本を書いています。
 それは…うーむ、内容は、彼女が書き上げてから紹介しましょう。ぼくも読んでいないのですから。しかし、そのコンセプトは、客観的にすごく興味深い!
 上記ですこし触れた、「新しい生き方」をめぐる本です。

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