On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2013-09-27 00:20:43

悲喜こもごもと言うべきか…



▼こんな書き込みがありました。

~ここから引用~

なぜ硫黄島だけ特別視ですか
2013-09-26 17:54:28
○○ ○子 (※実際は、実名と思われる名前。公開して良いとは書いてありませんから伏せます)

私の父はシベリア抑留され、従兄弟は左腕を失いました。
どうして、硫黄島だけ特別扱いするのですか。
当時日本だったサイパンやグアムは無視ですか。

~引用ここまで(名前以外は、すべて原文のまま)~


▼ぼくは何度も、何度も、発信してきました。硫黄島を、反転のための最初のきっかけにしませんか、というささやかな提案を。

 先の大戦で、ひとつきりの命を、後生のわたしたちのために喪われた日本国民のかたがたのうち、およそ半数しかご遺骨が祖国や故郷に帰っていません。
 玉砕の島も、まさしくサイパンをはじめ幾つもあります。そのうち硫黄島は、日本国内の島です。東京の一部です。外交交渉も何も要らない、この島の英霊を取り返すことすらしないで、どうして現在の国境線の外の英霊を取り返すことができるでしょうか。
 あくまでも、その意味でずっと、硫黄島の問題に取り組んでいます。

 シベリア抑留についても、ぼくなりに取り組み続けています。
 たとえば、不正不当な抑留の犠牲になった日本国民のなかでも身体の弱ったひとや、強姦の繰り返しなどによって生きる力を失った女性や、病気になった子供たちだけを集めて、ソ連が北朝鮮に送って、さらなる強制労働に就かせ死に至らしめた事実にたどり着いて、関テレのアンカーで発信し、拉致被害者のお父さまから「初めて知りました。拉致の真相にも通じる重大な事実として考えたい」という手紙をいただきました。

 どうして「硫黄島だけ特別扱い」とか「無視ですか」という言葉になるのでしょう。

 沖縄の白梅の少女たちのことにも取り組んできましたが、いつも述べているように、沖縄戦の学徒看護隊は、白梅学徒隊を含め9つありました。
 まずは、天の計らいでご縁の生まれた白梅の少女たちを、ウチナンチュ(沖縄県民)にも、ヤマトンチュ(本土の日本国民)にも思い出していただく、知っていただくことを、丁寧に、徹底的にやっていくことしか道は開けません。
 ひとりの人間にできることは限られているからこそ、謙虚に、地道に、ご縁をいただいた事柄をこそ懸命にやるほかありません。

 書き込まれた方は、おそらくはぼくの発信のごく一部だけご覧になって、「特別扱いしている」、「ほかは無視している」と、おっしゃっているのでしょう。
 そして、ぼくを含めて人間には、発信だけではなく、行動もあります。報いも結果も求めない行動もあります。それは表に出ませんね。それをすべて、お話しせねばなりませんか?
 褒められるためにやっているのではありませんから、すべてを話すことはしません。それには時間を使いません。ぼくの時間も、すべての命と同じく、短く、限られています。

 あなた御自身の関心事さえ、満たされれば、たとえば逆に硫黄島はどうでもよくなるのでしょうか。
 いや、そんなことは決してないと、信じます。
 むしろ、あなたの善意や、真剣な願いから出た、書き込みですね。そう考えます。

 そのうえで、悲しいですね。
 あなたの書き込みに、連帯は、あるでしょうか。
 ほんとうに悲しいですね。
 できれば、すべての発信、すべての取り組みについて、もう限界までやりましたからと、やめたい気持ちになりそうですね。いや、これは、あなたのせいではありませぬ。


▼一方で、こんな書き込みもありました。

~ここから引用~
 
硫黄島
2013-09-26 15:33:20
○○○○○ (※原文は実名です。講演会などで、接しているひとです。実名ですから公開しません)

青山さま

昨日のニュースアンカーは、またも泣きながら拝見しました。
毎週、泣いているようなぁ・・・

硫黄島にふれたのは、青山さんの動画とNHKの皆既日食の生中継と、○○○(※原文は、実在する組織が書いてあります)に勤務していた時だけです。
(映画は、なんかちょっと違う感じがしました。)

硫黄島の皆既日食の映像をみていたとき、たしかに男性のうめき声が聞こえました。
その生放送の直前にすごいスコールがあったそうです。

やっと、実現にむけて進んで行く喜びは、とても大きいものですね。
長い長い任務を終え、英霊のみなさまが一刻も早くお帰りになる日がくればいいなと思います。

今日のボイスがんばってください☆
サイン会、いきます(※このあと、何文字か文字化け)

~引用ここまで(名前以外は原文のまま)~


▼ぼくは、この書き込みのなかの「長い長い任務を終え、英霊のみなさまが一刻も早くお帰りになる…」という言葉に、深く、こころが動かされました。
 そうですね、英霊のかたがたを考えれば、ぼくのこれまでのことなど、ごくごく短い任務に過ぎません。

 嬉しいですね、こうした、意図しない、さりげない励ましが。
 嬉しいですね、わたしたち日本国民の新しい目覚めが。

 悲喜こもごものなか、天が不肖ぼくに、「もう帰ってこい」と命じるまでは、遂行すべきをやりましょう。
 ほんとうは、人知れず、やりたいのです。
 しかし、みなさんの眼を見ながら、あるいは、眼を見る気持ちで、伝えるべきを伝えるには、そういうわけにもいきませんね。

 
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