On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2014-02-09 14:53:13

ぼくそこ、「ぼくらの祖国」の新バージョン登場!



▼ロングセラーになっている「ぼくらの祖国」(扶桑社/通称ぼくそこ)の、いわば新バージョンが出ます。2月11日の紀元節です。
(敗戦後の奇妙な言葉で言うと、建国記念日。建国というのは、近代的な概念です。しかし日本は、遙か古代に成立した国家です。記念日というのも、まさしく現代語です。復古主義で言うのではなく、紀元節でないと、本来の意味を成しません)

 ぼくそこの続編ではありません。続編は3月の刊行を目指して、正直いま、執筆時間をひねり出すのに必死です。
 それは…オーディオブック版の「ぼくらの祖国」、ぼくそこです。


▼「オーディオブック版を出しませんか」という話が来たとき、最初ぼくは目の不自由な方のためということだけを考えました。
「それはもちろん、肝心なことですが、それにとどまらず、すべてのひとのためのものです」…と、言われて思い出したのです。
 ぼく自身が、まだカセットテープ(ふ、ふるい)のオーディオブック、すなわち耳で聴く「源氏物語」から始まって古今東西の小説を、英米文学を含めて、運転する車のなかで聴きまくっていた頃が、学生時代にあったことを。
 ぼくの母は、読書家です。その母から「あんたはいっつも忙しい子や。スキー合宿に車のレースに家庭教師のバイトに授業に、何か書いてもいるし、友だちも沢山やし、盛りだくさんや。本を座って読む時間もないやろ。そやから、これはどうや」と教えてくれたのが、まさしくオーディオブックでした。


▼まさか、そのオーディオブック版を自分で出すことになるとは、夢にも思いませんでした。
 ぼくそこ本文の録音は、その道のプロがなさいます。
 しかし、著者であるぼくの肉声も、いわばサービス音声(特典音源)として録音することになり、先日、その専用スタジオに入りました。
 著者によっては、せいぜい5分程度の録音という人もあるようですが、ぼくに対しては、オーディオブックを出している「オトバンク」という会社から「期待している人も多いので、20分ぐらいお願いします」という話がありました。
 この「オトバンク」は、ぼくそこの版元の扶桑社からの紹介でした。

 録音の当日、隙間のない日程の中に無理矢理、短い時間を挟み込んで、都内のオトバンクの住所に、社有車を運転して出向きました。
 しかし、なかなか、そのオトバンクは見つからず、探しているうちに次の日程の時間もどんどん近づきます。
 やっと、目立たないビルの中にオトバンクのオフィスを見つけて、ディレクターたちや扶桑社の担当編集者といくらか雑談したあと、すぐ録音ブースに入りました。
 録音ブースは、ラジオスタジオをすこし広くしたような感じの密閉空間。小窓の外に、ヘッドフォンを付けたディレクターがいます。
 そして実質、いつものごとく打ち合わせなしで、ぼくは話し出しました。
 そして…信じがたいことに、50分を超えて話しました。
 原稿は、これもいつものように一切ありませんでした。

 ぼくそこ、ぼくらの祖国は、まさしく根本の書です。
 語るうち、胸のうちが熱く高まり、おのれでも迸(ほとばし)るかのように語り続けることになりました。

 50分を超える語りというのは、もはやサービス音声とか特典音源の域を超えて、それ自体が一つの作品として世に問うのがふつうの尺(トーク時間)です。


▼しかしオトバンクは、ほんとうに良心的に判断してくれました。
 そのまま、特定音源として、サービス音声として提供してくれます。
 したがって、ふつうの書籍の「ぼくらの祖国」をすでに読んだ方も、電車の中、あるいは車の中で聴ける、さらには台所仕事やそのほかの仕事をしつつ聴けるということ以外に、ぼくのまったく新しい語りを、このオーディオブックだけで聴くことができます。

 そして、ここが肝心なことの一つですが、オトバンクは、ぼくの語りをまったくカット、編集していません。
 知らないところで編集され放題のテレビ収録とは違います。その意味でも、ラジオ生放送に似ていますね。
 そしてラジオ生放送よりも、はるかにぼくの語りが長尺です。


▼どうやって手に入れるのか。
 ぼくも知らなかったのですが、今では、カセットテープやCDを買うのではなく、「日本最大級のオーディオブックポータルサイト」(あくまでオトバンクの説明)というここにアクセスして購入するそうです。
 それ以外の手段では、手に入らないそうです。

 そして、2月11日の紀元節(前述したように復古主義で、こう申しているのではありませぬ)に合わせて、発売開始とすることまで、このオトバンクは志を持って考え、決めてくれました。
 みなさん、よろしければ、とりあえず上記のサイトに行ってみてください。

 そして、「ぼくらの祖国」販売ページも設定されるそうです。
ここです。…2月10日までは、ここへ行っても、オトバンクの説明によれば現在は(上掲の)FeBeトップページになってしまいますが、2月11日(火)になったら、「ぼくらの祖国」の販売ページへと移行するそうです。


 念のため、オトバンクの情報もアップしておきます。

株式会社オトバンク ~聞き入る文化~
〒113-0033
東京都文京区本郷3-4-6 御茶ノ水エビヌマビル8階
■TEL :03-5805-2915 (代表)
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