On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2014-03-05 10:35:46

胸苦しいほどの苦境のさなかから  その1

▼この地味ブログを訪ねてくださる方のうち多くが、すでにお気づきのように、この頃ブログに書き込む時間もまったくと言っていいほどありません。
 内政も外政も水面下を含めて烈しく動いています。こういう時こそ現場が大切です。現場を歩いていると、どうしても物を書く時間が確保できません。睡眠を削り、どれほど身を削っても、書く時間は短くなります。

 ぼくは、今さまざまな分野の仕事をしていても、原点は、ひとりの物書きであることです。おそらくは最後もまた、物書きです。
 言葉を彫刻刀として、仏さまを彫り出すように、一字一句を、句読点のひとつに至るまで存分に吟味して、文章という彫刻を仕上げていくのが、命ある限りいちばん大切な仕事です。
 だから書く時間が確保できないと、胸のうちを焼かれるように苦しくなります。


▼現在を具体的に申せば、「ぼくらの祖国」の続編のノンフィクションと、小説新作をそれぞれ完成させることができず、苦しみ抜いています。

「ぼくらの祖国」は先日、ついに第17刷となりました。想像しなかったほどのロングセラーになっています。
 ネット書店でみても、ランキングが分かりやすいアマゾンを例にとると一昨日もふたたび500位台に上がっていました。2011年12月の発刊からもう2年3か月近くが過ぎています。日本の出版界は、新刊書が半年も持たない現状ですから、そう滅多には起きないことです。

 そして、この「ぼくらの祖国」通称「ぼくそこ」、または「赤本」は、上記のふつうの書籍だけではなく電子書籍も、オーディオブック版もいずれも良く読まれていて、こころの底から勇気づけられます。

 いちばん新しく刊行されたオーディオブック版は、こないだニッポン放送の報道番組「ザ・ボイス木曜日」のスタッフが「ずっと1位じゃないですかっ」と叫んで教えてくれました。
 ぼくは『いや、そんなはずないだろ。発売した、その最初だけじゃないかな、1位って』と内心で思っただけで、何も応えませんでした。
 ところが今みてみると、確かに最新の週間ランキング(3月3日更新)で1位ですね~(ここです)。
 深い感謝に加えて、正直、感動です。
 愚かな、こころ冷える嫌がらせも多いなか、励まされます。
 嫌がらせで、ぼくがめげることはありません。そうではなく、こうした無駄な所業をする人々のその卑しさ、信じがたい、本当の意味の愚かさに、ぞっとしてしまうのです。
 大切なわたしたちのツールであるネットを、悪用して、そうした人々が書き散らしている真っ赤な嘘の数々は、実は、その人々自身の欲望や願望です。ぼくや独研の行動に関して、想像を絶する考えられないデタラメの動機付けをしていたりしますが、それはその人々自身が、そうした動機でしか生きていないことをみずから暴露しています。

 しかし、読者が増えていくだけではなく、下に述べる独立講演会にわざわざ参加してくださる方の爆発的とも言える増加ぶりに、いやいや、多くのひとびととは連帯できると、励まされます。
 ぼくらの考え方、歴史への見方も日本の役割への考えも、敗戦後の日本ではまだまだ圧倒的に少数派です。
 そこは謙虚に考えねばなりません。しかし、確かに一歩づつ、前へ進んでいます。


▼このオーディオブック版は、「読者サービスとして、3分から5分ほど著者の新しいメッセージを入れましょう」と版元から話があり、1月9日に録音スタジオに行って原稿なしで即、マイクを通じてみなさんにありのままを話しているうちに、なんと50分を超えてしまったのです。
 それでも版元は、「そのまま無編集・カット無しで、値段も上げずに配信しましょう」と言ってくれました。その版元の志も報われています。うれしいです。
(関心のあるかたは、ぼくそこ本体は、例えばここここ。電子書籍は例えば、ここここ。オーディオブック版は、ここです)


▼しかし、だからこそ良い続編を出さねばなりません。
 タイトルは、もう決まっています。

「祖国は甦る」

 当初は、昨年末の出版を目指していて、目の眩むような忙しさで断念。
 次は、新学年が始まるまえの3月、つまり今月の出版を目指して、これも断念。
 今は、連休に入るまえの4月下旬を目指しているのですが、まだ編集者にも言っていないことを言えば、かなり苦しくなっています。


▼ある意味、もっと深刻なのは、小説の新作です。
 ぼくは2002年8月に純文学の小説「平成」を文藝春秋社から刊行しました。
 当時、まったく無名で(…いまも半分、無名のようなものです。謙遜じゃありませぬ)、この小説を書きました。
 それが純文学誌として長い伝統を持つ「文學界」(文藝春秋社)に掲載され、さらには新刊書として本になりました。
 この本は、読売新聞をはじめ全国紙や地方紙から「しんぶん赤旗」(共産党の機関紙)までの新聞、そして論壇誌、文芸誌を問わずたくさんの雑誌に、書評だけは山のように出て、インタビューも数多く受け、図書館にも驚くほど多く収蔵されました。
 しかし一般には売れませんでした。
 そのために文藝春秋社が、絶版にしています。

 この「平成」が、たとえばアマゾンで古本として出品され、先日も、独研(独立総合研究所)の会員制クラブ、ぼくと行動を共にして国会や総理官邸、自衛隊基地などなどの現場訪問から雪上集会(スキー&ボード)やぼくの運転するレーシングカーへの同乗まで体験する「インディペンデント・クラブ」(IDC)の会員が「1万円で手に入れました。サインをお願いできますか」ということでした。
 サインしながら、責任も感じました。
 ぼくは文藝春秋社が、無名の新人の書いた小説を異例の単行本にしてくれたことに今も感謝しています。
「なぜこんな高値が付いているのに、再版してくれないのか。青山さんからも文春に聴いてください」というメールも読者からずいぶんと頂いていますが、ぼくが出版社に尋ねるのは違うと思います。
 つまり、ぼくが小説の新作を出していけば、「平成」の再版の問題も自然に解決するのではと考えるからです。
 それがプロの物書きとしての、あるべき姿勢です。

 その「平成」の刊行から、12年近く、ぼくが小説新作を世に出さなかったのは、書けなかったのではなくて、書く時間を作らなかったからです。
 なぜ作らなかったのか。
 それは小説の執筆が、一番やりたいことだからです。

 ひとさまに、こんな生き方は決して勧めません。
 しかし、ぼくは、一番やりたいこと、一番好きなことは、後回しにするのです。
 それを優先すれば自分中心になると思うからです。
 おそらくは子供の頃に受けた家庭教育から来ているのだろうと思いますが、それを変えないできました。

 ただ一方で、その2002年の3月から、すなわち「平成」が単行本として世に出る半年近く前から、次の小説を、これも純文学として起稿、すなわち書き始めました。
 書く時間を最小限しか作らなかったから、完成に長い、長い時間を要して、それでも昨2013年の7月4日、起稿から実に11年3か月半を経て初稿を脱稿したのです。
 当初は(400字詰め原稿用紙で)40枚ほどの短編として予定していたのが、173枚になっていました。
 これを、伝統ある文芸誌の編集者や元編集者の意見も聴きながら改稿し続け、昨年10月6日に出張先のホノルルで第7稿205枚として、いったん完成しました。
 しかし、編集者との議論も踏まえて、さらに彫り込むことにしました。
 ぼく自身、「まだ、ほんとうの仏さまが姿を現していない」と考えたからです。

 そこから、すでに4か月半ほども過ぎました。
 時間を掛けたおかげで、どうやって仏さまに現れていただくか、どこの何をどう書き直すか、それは頭の中で固まりました。
 しかし、実際には、一字一句を時間を掛けて彫り直すのです。句読点を打つか打たないか、どこに打つかだけで、ひと晩まるまる掛かることも現実に何度もありました。
 いまの日程の現状で、いわば、その贅沢な時間を作り出すことは、難事そのものです。


▼童話作家ミヒャエル・エンデの創造した「時間泥棒」というキャラクターを思い出します。
 しかし、ぼくが書く時間を作り出すのに苦しみ抜いているのは、時間泥棒という他者のせいではありません。
 ぼく自身のせいです。

 ただ意思の力で、突き抜けていくほかない。
 書きます。一字づつ書き続けます。
 独研から配信しているディープな会員制レポートである東京コンフィデンシャル・レポート(TCR)も、情報収集から執筆まで、独研の研究員には一切関与させず、ぼくひとりですべて遂行していますから2月は配信がやや少なくなってしまったのですが、この3月にそれを全部、取り返す配信をします。すでに3月3日月曜から配信を再開しています。(関心のあるかたは、ここです)
「ぼくそこ」の続編、小説新作、いずれも苦境からこそ、本物を産み出します。
 不肖ながら、ぼくは、逆境にこそ力が湧き出てきますから。


▼そして、それを支えてくださる、みんなの気持ちが、この頃はっきりと感じられるのは、ぼくの真新しいエネルギー源です。
 たとえば、独研が自主開催している「独立講演会」に参加されるかたが、前述したように、目を見張るほどに増えています。
 東京開催でも、関西開催でも、以前のほぼ倍の規模です。

 実は、次回の独立講演会の募集がもうとっくに始まっています。
 2月28日金曜の正午から始まりましたから、もう6日目です。
 3月10日月曜の正午には、締め切ってしまいますから、申込期間の半ばを過ぎています。みなさんにお詫びします。このブログに書き込む時間も作れなくて、お知らせが遅れ、そのために参加できないかたも居ると思います。(→★ひとつ上のエントリーにあるように、独立講演会事務局が12日水曜の正午まで〆切を延長してくれました)
 できれば、お出でください。今回も、ほかの講演会ではあり得ない、たっぷりの時間(4時間半から5時間ほど)をとり、ありとあらゆる分野の質問をお受けして、その場でお答えする機会は、この独立講演会しかあり得ません。

 1日も早くお知らせすべきは、もうふたつあります。
 ひとつには、北海道テレビの「朝まで生討論」という番組に初参加します。3月8日土曜の未明です。
 大事なことは、この放送がネット(ニコ生、YOUTUBE、ユーストリーム)でそのまま生中継され、誰でもツィッターで参加できることです。
 これは、ぼくもかつて参加していた「朝まで生テレビ」の北海道版だそうです。以前は司会が田原さんだったそうですが、今では「番組が自立して、北大の教授が司会です」と番組スタッフは話されていました。

 もうひとつは、昨年に敢行した「アメリカ西海岸での講演」を今年もやることが、具体的に決まり、申込の受付がこれも始まっていることです。
 韓国や中国が不当に日本と日本国民を貶める工作が続いているアメリカで、それにフェアに反撃する意義も込めて、講演します。
 去年と同じように、ことしも飛行機代などは、ぼくと独研が自己負担します。
 真っ赤な嘘で固めた工作と正面から戦っている在外邦人の方々の、意気に応えます。
 アメリカに住んでいるかたがたはもちろん、世界のどこからも、できればお出でください。事実、昨年は日本から太平洋を越えて参加されたかたもいらっしゃいました。

 この三つ、いずれも公式HPなどからの情報、申込方法を下掲します。

▼独研(独立総合研究所)の公式HPから抜粋

*第27回 独立講演会@東京 (お申込みの受付を開始しました)
【講演日】
2014年3月30日(日)
【講演時間】
開場:13時00分
開演:14時00分 ~ 18時30分 予定
【講演内容】
「祖国は甦っているか」
【場所】
大手町サンケイプラザ ホール(4F)
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-2 電話03-3273-2258
大手町駅より直結、東京駅丸の内北口より徒歩7分
詳細は、こちらへ。
【受講料】
一般 5,000円 / インディペンデント・クラブ(IDC)会員 4,000円
【申込期間】
2014年2月28日(金)正午~ 2014年3月10日(月)正午(→★ひとつ上のエントリーに記したように12日水曜正午まで延長になりました) 
※申込期間内のみ、申し込みを受付致します。(→★そうです。12日水曜正午が、ぎりぎり最後です)
【申込方法】
「申込フォーム」ボタンをクリックし、リンク先のページよりお申込みください。
 ここです。
【抽選結果通知】
当選・落選発表は、3月10日(月)申込締切り以降、メールにてご連絡致します。
※会場の規模によって抽選になる場合がございます。
【禁止事項】
※参加資格の譲渡
※講演の撮影・録音・録画
※講演中のパソコンの使用
※事前にお申込をされていない方の入場


▼北海道テレビからの独研宛てメールからの抜粋

*今回の番組はネットでの中継(ニコ生、YOUTUBE、ユーストリーム)を
する予定です。
そして、ツイッターで視聴者も意見に参加することができます。
北海道外で番組を視聴できない方のために、青山さんから番組についてブログなどで話していただけると幸いです。
番組URLは、ここです。
ツイッターのハッシュタグは#h_asanamaです。


▼日本を思う在米日本人の会が作成されたHP(ここ)から

*青山繁晴氏の感動の講演を、再びSan Joseで!
 昨年ご多忙の中、「在米邦人に向け講演したい」との強いご希望で、全くのボランティアでわざわざサンノゼまで講演にいらして下さいました青山繁晴氏が、再び今年の5月、サンノゼで在米邦人の為に、「きみの出番、祖国は甦る」の演題で講演をして下さることとなりました。
 青山氏の日本を思う熱い心に溢れた講演を受講してみませんか。
 ぜひお知り合いの日本人の方々をお誘い合わせの上、お越しください。
 皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げております。

講演会詳細
日にち 2014年5月18日(日)
演 題 「きみの出番、祖国は甦る」
場 所
Yu-ai Kai Japanese American Community Senior Service,
588 N. Fourth Street, San Jose, CA 95112

10時~    開場
10時半~  サイン会
13時~    講演会
(サイン会終了から講演会開始までの間、お食事の為の外出は可能です。
再入場の際には、受付時に手首に巻くリストバンドを係員にお見せ下さい。
また、会場にもリフレッシュメントをご用意する予定です。)

受講料
$75(チケット発行手数料$2.87が別途かかります)
チケット販売についてはこちらをご覧ください。

主 催
日本を思う在米日本人の会
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