On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2020-05-05 09:25:47
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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共に苦しむ  (推敲しました)

▼きのうの総理会見、そして限定版の緊急事態宣言への切り替え、それらの真意のひとつが、医療崩壊を防ぐということにあったことに、お気づきの日本国民は多いと思います。

 武漢熱から命を救うことに加えて、ふだんから病院は、さまざまに病と戦うひとで満ちています。
 かつて学生時代の一夜に、東京の世田谷区で国立小児病院  ( 当時 )  の大きな建物の窓すべてに灯りを見て、子どもがあんなに沢山、あの中で苦しんでいるのかと胸が潰れたことを忘れがたく覚えています。子どもの時から心臓弁膜症と戦うきょうだいが生家に居たために、よけいに実感が迫ったのでした。

 国民みんなが情況を乗り越えるためには、医療、具体的には個々の医師、看護師、多様な分野の検査技師がわたしたちの根幹を、過去も、危機の現在も、危機のあとの将来も支えているということをより大切にする国にしたい、その強い意思を、特に最近の議論や協議で、不肖ぼくは安倍晋三総理から明瞭に感じています。

▼昨日は、それがよく顕れた記者会見ではなかったでしょうか。

 民放テレビの若手女性記者で、「安倍総理の会見から伝わるもの、心に響くのものが少ないと感じる」というただ一点の疑問を尋ねるために、ぼくの議員会館事務所にやってきたひとがいます。
 特定の狙いを持たずに取材する記者は、この頃は珍しいので、じっと耳を傾けました。

 護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 / JDI ) が総理へ提言するために官邸を訪れたとき、たまたま国会日程のために、ただ一度だけ、代表のぼくひとりだったときがありました。
 官邸を去る前には、慣例として総理番記者のぶら下がり取材を受ける、実質的な義務があります。
 義務というと言うと、当然、異論もあるでしょうが、一国の総理に提言を致した以上は義務だとぼくは考えています。
 護る会の提言内容や会としての見解を説明し終わったあと、この記者から、何度かの総理会見全体への感想を聞かれました。
 護る会としての説明と質疑は済んでいた上に、ひとりだったために、護る会全体の意見を述べなければならないという意識がほんのすこし緩んでしまい、「このあとは護る会の意見ではなく、あくまでぼく個人の意見です」と明確に断ったうえで、「総理の会見にはもっと国家の戦略観、実際には安倍総理がしっかり持つ戦略観や、ふだんは示される人間的にして率直な考えを、もっと示してほしい」と述べました。
 この記者は、それに良い意味で引っかかって、取材と言うより雑談、フランクな本音をさりげなく聴きに来たのでした。

▼ブログの記事を短くすると約束したので、もう締めなければなりませんが、きのうの安倍総理は、この若い記者の疑問にすこし応えるような会見ではなかったでしょうか。

 ぼく自身も若手記者だったとき、すでに新書を発刊されていた著名な政治記者で、のちに共同通信の論説委員長となられた大先輩が「青山くん、日本で何かを新しくやろうとしたら、総理になっちゃ駄目なんだよ。総理になった途端、何もできなくなる」と何度か仰ったのが、耳に今も残っています。
 既得権益を分けあわざるを得ない官僚機構、あるいは派閥という遺物集団が強く牽制しあう自由民主党などに取り囲まれるのが、日本の総理だという意味合いもあると考えます。
 だからこそ、ふだん官僚を行政官と呼び、その行政官たる矜持 ( きょうじ ) を持つひとびとと連携すべきを確実に連携し、自由民主党に護る会をつくり、その護る会で「増税派」を批判を浴びても主張する超少数派の議員とも消費減税へ運動します。
 いずれも内部から、つまりは日本らしくどこの組織にもいらっしゃる志の人、有能そのものの人材と共に、変えていこうと非力ながら努めています。
 そのうえで、最後は最高指導者が動かないと、まさしく何も変わりません。

 きのうの安倍総理は、プロンプターに従来ほどには頼らず、国民の眼を見ようとされていた印象もありました。
 ありのままに申してまことに不充分ですが、変化はあると感じました。

 甘いですか ?
 どんな意見・異見もあって当然と言うより、意見・異見がなければなりません。
 だから、まさしく甘いのかも知れません。しかしぼくの意見としては、感染症の行方とあわせて、わずかであっても前進を感じました。

 共に苦しむ。
 ほんとうの立脚点は、ここにあります。

 あの国立小児病院の灯りのもとに居た子どもたちと、医師、看護師、検査技師のかたがたのように。
 それは夜を粛然と渡る船でありました。



 
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