On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2020-12-03 19:45:24
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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根本問題を抉(えぐ)る議員は応援します。自衛隊を中東の海に出しているのに任務が付与されていない?

 

 ずっと部会をはじめ議論の場が重なり、正直、他に何もできない状態です。
 しかし、ひとつひとつが重大な議論です。

 この部会は、外交部会、国防部会、外交調査会、安保調査会という4つが合同して開かれました。
 テーマは、タンカーなど日本の船がペルシャ湾やアデン湾からアラビア海を通り日本へ向かうルートで、あるいはその逆ルートで、日本の船と積み荷、船員を護るために派遣されている自衛隊の任務を1年、延長するかどうかでした。

 参加議員のほぼ全員が、延長、それ自体に異論はありません。
 ぼくもそうです。
 そのうえで、安倍内閣で防衛大臣を務めた中谷元(なかたに・げん)衆議院議員が、挙手され、発言されました。
 他の議員の発言を、あえて紹介したいと思います。
 中谷さんとは長いお付き合いです。いまは、護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 / JDI ) のメンバーでいらっしゃいます。
 元陸上自衛隊レインジャー隊員で、大きな身体でいまもフルマラソンを完走なさるひとで、超人ですが、とても温厚な、そして冷静なひとです。
 その中谷さんが、静かな怒りを滲ませて仰ったのが、「派遣されている自衛官は、任務を正しく付与されていない」。
 どういうことか。
 実は、情報収集活動という名目になっているのです。

 防衛省が席上、配布した資料にも、海上自衛隊の護衛艦の洋上写真に、「情報収集に就いている」という趣旨の説明が付いています。
 つまり、情報収集しか許されていないわけですから、いざ、日本の船が襲われたらどうするか。
 これを中谷さんは、真摯に問いました。
 防衛省の答えは「電話などで連絡を受け、閣議を開いて、海上警備行動を決定し、発動します」
 誰でも、それで間に合うのか、と思います。
 しかも防衛出動ではなく、海上警備行動ですから、できることはごく限られています。

 これは防衛省を責めればいいという問題ではなく、実は、憲法9条をはじめ日本の法体系がおかしいという問題です。
 中谷さんは、それを承知で、現場の自衛官、日本の船舶、船員のみなさんのことを思って、やむにやまれず問題提起されたのでした。

 部会の場は、いくらか、しんと鎮まりました。
 日本社会では、安全保障、外交はあまり票になりません。
 それを扱う部会にわざわざ来る議員はみな、こうした問題の根深さを知っているからです。

 ぼくは、そこで挙手をして「別に中谷さんに何も頼まれていませんが・・・」と話し始めました。
 もちろん、ほんとうです。
 そして「この部会は、防衛大臣経験者が多く来られます。中谷さんもそのひとりとして、もしも国会で逆に質問されたら、大臣としては答えに困る問題だからこそ、現状に安住せず、根本解決へ向かうことを提起されたのだと思います。支持します」と述べました。

 上掲の写真は、参加議員のかたが撮ってくれました。
 とても上手な写真ですね。感謝です。
 ぼくの向こうには、前・外交部会長の中山泰秀・防衛副大臣が写っていらっしゃいます。外交部会長当時に、ぼくが副部会長でご一緒しましたね。



 この写真はぼくが撮りました。
 たまたま向かいに座った中谷さんが、防衛省の答弁を、苦悩の表情を浮かべつつ真剣に聴いておられます。

 ぼくは議員になってから、つくづく思うのです。
 もう、敗戦後の日本のいわば「ノックアウト体制」はそろそろ、限界だと。
 中谷さんも、ぼくも、敗戦当時には全く生まれていません。今日、自由民主党本部のこの部屋にいた誰もが、おそらく生まれていません。
 しかし、ぼくらの祖国は、たった一度の敗戦に、ノックアウトされたまま実に75年のあいだ、何も変わらないでいるのです。

 ほんとうは、ノックアウトもされていません。
 永い歴史で、敗戦を初めて経験したから、ノックアウトされたんだ、勝者の言うことを総て聞かねばならないんだと思い込んだだけのことです。





 
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