On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2020-12-17 05:30:50
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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みなさん、もう一度、お尋ねします

▼11月に発刊した物語、「わたしは灰猫」 ( 扶桑社 ) を読んでくださったかたがたから、このブログに、読後感がずっと絶えることなく届き続けています。
 あらためて、深きも深い感謝を捧げます。

 構想し始めたのが発刊のおよそ20年前、実際に最初の1行を記したのが発刊の18年4か月前、その頃には、こんなに時間を費やすとはもちろんまったく想像だにしていませんでした。
 ただ、やはり初稿と比べると、そして書き始めてから10年の段階の原稿と比べても、書き手本人ながら自作を突き放して考えれば考えるほど、格段に良くなっているのは事実と思えます。

▼これほどまでに時間が掛かるのは、ぼくが物書きの他に多種と言うほかない仕事をして、いまでは公務に携わっているからですが、ほんらいのぼくは速筆です。
 子どもの頃から文章を書き続けていますが、特に、長いものはあっという間に書いてしまうタイプです。亡き母は、母の愛した有名作家の名を挙げて「きょうは時間が無いから短いものは書けないと、いうてたよ。長いものは簡単に書けるンや」と、いつも通りに厳しく言っていました。
 母がその91年の生涯でぼくを褒めるのは、「あんた、声は通るなぁ」。ほぼ、これだけでありました。

 ぼくは、それに怠け者です。
 そんなに速く書いてしまうなと、ストップを掛けられるほどの速筆、しかし怠け者で滅多に集中して書かない。
 これが生来のぼくなのに、書いては消し、書いては直しで延々と書き続ける。それも、生来はのんびり寝るのが大好きなのに、寝ないで、体力だけを頼みに目をこすって集中して夜明けまでは書く。
 真逆です。
 だから子どもの頃から、宮澤賢治の『セロ弾きゴーシュ』の主人公に共感していました。
 あの主人公のようなハッピーエンドにはならないだろうなと、子ども心に覚悟しつつ。

 なぜ、こんなSTRUGGLE(ぼくらの言葉には無いひとこと。泥の中をじりじりと進む戦いぶり)の人生になったのか。

▼それを想うとき、ふと気づくのは、作家と読者は、作曲家と演奏家に似ているということです。
 作曲家が楽譜に曲を書きます。楽譜が読めるひとには、それを読むだけで、頭の中に曲が鳴り響きます。しかしほんとうには、良き演奏家が実際の音にして初めて、曲になります。
 そして、その演奏家だけの作品にもなります。

 この足かけ5年、ラジオ音楽番組のMCを務めています。クロスFM(本社・北九州市)の坂田社長が、このブログと同じ名前の番組にしたいと熱望されて、番組名は「オン・ザ・ロード」です。毎週土曜の午後3時から5時まで2時間の放送です。ラジコを使っていただければ、全国で聴いていただけます。
 収録はロック、ポップス、R&B、ボサノバ、ジャズ、クラシックいずれも全曲、フルコーラスを聴いてから話しますから、もの凄く時間を費やします。
 日程としては相当に無理があり、秘書さんたちも心配していますが、ぼくの視野を確実に拡げています。
「その演奏家だけの曲」を毎週、スタジオで聴きつつ、ぼくの原点、文章を書くことに直にかかわる読者のみなさんのことが頭に浮かびます。
 だから作曲家と演奏家、その一体の関係が、作家と読者、その一体の関係と実は同じであるとも気づいたのです。

 作家が、今のぼくならモバイルパソコンのハードディスクに原稿を書きます。それを画面に出せば、あるいはプリントアウトすれば、日本語が読めるひとには、それを読むだけで、頭の中に作品世界が広がります。しかしほんとうには、良き読者の体内の経験を通り抜けて初めて、物語になります。
 そして、その読者だけの作品にもなります。

 だから、読者がどのようにお読みになったかは、決定的に重要です。

▼そのために、読者から寄せられた読後感は、できれば、多くのひとと共有したいとも考えるのです。
 新動画の「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」にて、すでにひとつ、紹介しました。三浦麻未公設第一秘書に、とても上手に読み上げてもらいました。
 それは、「わたしは灰猫」が正式に発刊される直前、ごく一部の大型書店に並んだらすぐに買って読んでいただいた読者から届いた、読後感の第1号でした。

 きょう12月17日木曜も「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」の収録をします。
 そのときに、読後感の読みあげを続けたいのです。

「わたしのは、やめてください」と書き込みがある分は、もちろん読み上げません。
 そういうかたは、仰っていただけますでしょうか。このブログに書き込んでいただけますでしょうか。
 伏して、お願いします。





 
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