On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2021-03-11 08:18:34
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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深い弔意と共に、いまも苦しみ、戦っているすべての被災者のために、あらためましておのれの任務について表明します



 10年目の3.11の今日も、朝8時から尖閣防衛をはじめ日本の危機に向かい合うため外交部会・外交調査会の合同会議が開かれ、参加しています。
 写真をよく見ると、あることにお気づきかも知れません。

 みな、黒い服です。
 弔意のためです。
 きょうは弔意を示す催しも開かれます。
 
▼西暦1995年1月17日に阪神淡路大震災があって、神戸生まれのぼくの知友も含めて6434人もの、決して還ってこない命が奪われました。さらに行方不明者がいまも、3人いらっしゃいます。
 まさか、その16年後におよそ2万2千人の死者と行方不明者を出す震災が起きるとは想像できませんでしたが、民間の危機管理の専門家として神戸の尊い犠牲と経験も元に、独立総合研究所の調査研究、それに基づく政府への提案を含めて備えに努めてきました。

 神戸には津波も、原子力災害もありませんでしたが、ぼくの専門分野のひとつ、テロリズムを含めた原子力災害には特に備えてきたのです。
 福島原子力災害は、防潮堤が低かった、東京電力と通産省・経産省は、東電社内の若い社員の問題提起を採用せず、低いままにした、ほんとうはそれだけで起きました。
 防潮堤さえ高ければ、その後のことは何も起きていません。すなわち地震で壊れたのではありません。

 作業員以外で、各分野の専門家の中で、原子力災害が進行中の現場でそれを見たのはぼくひとりです。
 もう発生当時の現場は、ほとんど残っていません。いま安全な状態で見ている専門家は、発生当時の実態を見ることができません。
 吉田昌郎・福島第一原発所長 ( 当時 ) は、福島第一原発の構内の免震重要棟でぼくの手を両手で握り、「こんな奥までよくぞ来てくださいましたなぁ。ありがとう、ありがとう」と仰いました。
 吉田所長によると、専門家がみんな現場からむしろ逃げていく、遠ざかるという事実があったそうです。逆方向に、現場の中心へ向かってきたのは「青山さんだけだった」と仰っていました。

 現場で見ると、地震で壊れたのではないと良く分かりました。
 それをふくめて国会でも何度も事実を指摘していますが、オールドメディアをはじめ、社会的にはこの現場証言、現場からの情報は、無いことにされています。
 
 さまざまに無念です。

▼いまも故郷に、生活や仕事の拠点に帰れないかたがたもふくめて、苦悩し、戦い続けている被災者が非常に多くいらっしゃるのが現実です。
 10年前にはカケラも想像しなかったことのひとつとして、ぼくは今、国会に居ます。
 専門家としての経験と構想も活かしつつ、真の復興と、国家危機管理の多面的な確立へ、取り組んでいきます。

▼きょうからおよそ1か月後の4月15日 ( @西暦2011年 ) には、人が誰もいなくなった原子力災害の被災地へ許可を得て車を運転して入り、そして車を降りて歩きました。
 桜の咲き誇るなか、痩せ細った動物たちと接し、崩れている道路をぼくなりの運転技術を尽くしてようやく走り抜け、最後に福島第一原発の正門にたどり着きました。

 監視カメラの映像でぼくの姿を確認した、前出の吉田昌郎・福島第一原発所長が、思いがけず、ぼくに入構許可を出した、と言うより実際には「来てくださいませんか」とまったく予想外の提案をなさいました。
 そして1週間後の4月22日 ( @西暦2011年 ) に、作業員以外では初めて、原子力災害がまだ進行中だった福島第一原発の構内に入りました。
 1シーベルト、1ミリシーベルトではなく1シーベルトという高い線量の場所もありました。
 それとは逆に、地域、すなわち構内ではない周辺地域の線量が事前に聴いていた、あるいは噂されていたよりは低いことにも、実は驚きました。
 ただいずれにしても、原発テロ対策のために、世界の現場を歩いてきた立場からも、山の位置、風向き、建物のありようなどによって、これほどまでに放射線量の実測値が変わっていく経験はまったく初めてで、未曾有の事故であることを痛感しました。

 今まだ、上記の部会に参加中です。
 このあと今日も予算委員会です。
 4月15日と22日の出来事については、その頃にまた、記していきたいと考えています。





 
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