On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2021-12-27 15:33:38
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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(推敲しました)  イラク戦争と雪



▼全国の雪害は依然、心配な情況です。ぼく自身も雪の影響を受けながら、移動中ですが、できるかぎりの対応を続けています。
 ぼくの帰京については、すこし前進しています。

▼鉄道の車窓から雪景色を見ると、イラク戦争に民間の専門家として丸腰で行き、多くの悲惨を体験したときのことが必ず、甦ります。
 イラク戦争について議論するために、戦場をいったん離れて、アメリカ合州国の東部に入り、ニューヨークからワシントンDCにアムトラック ( 急行列車 ) で向かっているとき、クリスマスの絵葉書そのものの雪景色を抜けていきました。
 あの乾ききった砂漠の戦場、そして同じイラクの泥まみれの湿地帯の戦場と比べて、あまりにも美しく、それが悲しくて、憤りを胸いっぱいに感じて、ワシントンDCでは、ペンタゴン ( 国防総省 ) の知友と烈しい言い合いになりました。
 イラク戦争は不当であると指摘するぼくに、知友は一歩も譲らずイラク戦争の正当性を主張し、いつもは辛うじて見つかる一致点がまったく見つかりません。

▼あれから世はずいぶんと変化して動き、ぼく自身もまさかの国会議員になったりの変化が起きているけれど、あの戦場で若い命を散らしたアメリカの兵士も、赤ちゃん、少年少女からご老人まで殺されたイラクのひとびとも、永遠に喪われたままです。
 すべてが止まってしまった現実が、そこにカラカラに乾いて置き去りです。
 雪の、潤いたっぷりの白さと真逆なのです。
 雪も、過ぎると怖いです。ひとびとのたいへんな重荷になります。
 それを良く知りつつ、あの砂、あの泥、そこで眠るひとの唇を雪で湿らせてあげることができればと、つい、短い間ですが、考えてしまいます。

▼いまだに、細部は明らかにできないことも少なくないけれど、こうした戦地の現実も、新潮社の新刊に書き記そうと苦闘しています。

 新たに、処女小説「夜想交叉路」の見直しも、同時進行を始めています。
 書き直さずにそのまま出版して欲しいという声もいただき、その声を嬉しくも思いました。
 しかし、一部は書き直します。
 なぜか。
 それは、「夜想交叉路」が世に出るときに、前書きか、あとがきで、誠実に記します。









 
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