On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2022-01-27 13:45:12
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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中国をめぐる国会決議  ロシアをめぐる国会決議


( 総会から持ち帰ったウクライナ危機をめぐる国会決議の原案、その冒頭部分です。
 まだ原案であり、各党・各会派が持ち帰って議論されますから、全文は掲げません。
 ぼく自身の意思によって、表題の案と文章のごく一部のみにとどめます )

ひとつ前のエントリーで記したように、きょう1月27日木曜に、超党派の議連である「日本ウクライナ友好議連」の総会が開かれ、ウクライナ情勢をめぐる国会決議案が、与野党の各会派の代表に提示されました。

▼その場で議連の関係者が明らかにしたのは、2月1日に、中国による人権侵害に関する国会決議がようやく採決される見通しであり、その1週間後の2月8日にまず衆議院本会議で、今度はロシアによるウクライナへの大規模侵攻の恐れについて国会決議を採決することを目指し、翌日の2月9日に参議院本会議でも採決することを目指すということです。

▼中国に対する決議案には、「中国」という言葉がありません。
 それと同様に、ロシアに対する決議案には、ロシアという言葉が実質的にありません。
( 冒頭に「ウクライナは、EUとロシアの間に位置する」という文章はありますが、そういう意味ではなく、ロシアがウクライナ侵攻を企んでいるという意味の「ロシア」の明記がないということです )

 一方で、中国への決議案は、かつて中国に対する決議の色を薄めるために入れてあった「ミャンマー」が消えて、「ウイグル、チベット、南モンゴル、香港」という中国共産党による人権弾圧の現場だけが記されました。
 つまり、中国の問題に集中する決議案とはなっています。

 きょう示されたロシアに対する決議案の全文をここに記すことはしません。
 各党・各会派が持ち帰って、文面・文章を検討することになったからです。まだ原案の段階です。
 ただ、その原案には「本院 ( 日本国衆議院 ) は ( 中略 ) 自国と地域の安定を望むウクライナ国民と共にある」、「力による現状変更は断じて容認できない」という文言があり、全体として、ロシアがウクライナ侵攻を思いとどまることを求める内容となっています。

▼いずれも、各党・各会派のあいだで妥協を図るために、このような文面になります。
 きょうの日本ウクライナ友好議連の総会では、会長の自由民主党の森英介・元法務大臣、副会長の泉健太・立憲民主党代表がそれぞれあいさつされ、立憲民主、維新、公明、国民民主、共産、れいわ、有志の会 ( 衆議院の院内会派 ) の外交政策代表者が、意見を述べられました。

 ふだんの自由民主党の議連とまったく雰囲気が違います。
 各党・各会派の集まりですから、具体的な議論は、その各党・各会派に戻ってする訳ですね。
 きょうは、いわば決議案を、各党・各会派に渡すための総会です。
 各党・各会派の代表はそれぞれ、「決議を出すことには基本的に賛同する。具体的な文面は持ち帰って検討し、必要な手続きを踏む」という趣旨を共通して述べられました。

▼国会決議をめぐる、こうした動きのすべての背景にあるのは「国会決議は全党・全会派一致でおこなう」という慣習です。
 主権者・国民からは「そんな慣習はおかしい」という声も噴出します。
 このブログにおいては、国会にそういう慣習があるのも、それが変わらないのも青山繁晴参議院議員の責任であるというコメントも、ふつうに来ます。たくさん来ます。

 ぼくはこう考え、こう行動しています。
 まず、客観的な事実として慣習のない議会は、ぼくの知る限り世界に存在しません。
 たとえばアメリカ議会・上下両院は、まだ若い印象のある議会ですが、その慣習は、日本の国会より遙かに複雑です。複雑怪奇に絡み合う慣習をすべてクリアしないと、いかなる法案も成立しません。
 歴史の古いイギリス議会は、トンデモというか面白い慣習が幾つもあります。ぼくの知る一例では、与野党の席は真正面から向かい合って怖いぐらいに接近していますが、剣2本分の間隔は確保されています。
 血みどろの歴史をくぐってきた議会だからです。
 双方の剣はカチカチと先端は触れあうけど、闘いにまではいかない、という意味だろうなと、現場の議場で感じました。

 なぜ、議会や国会には、慣習があるか。
 違う立場、違う考えのぶつかり合う場だからです。
 法律や規則だけでは、その違いを乗り越えて、法案の成立に至ることがとてもできません。
 慣習が実際には、潤滑油の役割を果たすのです。 
 これはすべて、民主主義の議会、国会のことですね。
 独裁国家では、まるで違います。

 たとえば中国で国会に当たるのが、北京で、間違った冬季五輪が終わったあとの3月に開かれる全人代 ( 全国人民代表大会 ) ですが、違う立場、違う意見はまったく存在しないことにされて議事がすべて進行します。
 あの広大な議場に集う「人民代表」、つまり国会議員は、全員、時の独裁者に忠誠を誓うのです。今はもちろん、終生の独裁者を目指す習近平国家主席への絶対服従を形にするのが『議会』です。

 したがって、議会・国会に慣習があるのは、民主主義の成せるわざでもあります。

▼これを客観的に知りつつ、ぼくは国会の現場で、議員としてどう行動しているか。
「慣習なんてケシカラン」、「慣習なんてクダラナイ」と言って終わりにするのではなく、慣習を踏まえつつ、すなわち民主主義のリアルな現実を踏まえつつ、すこしでも前進するように、慣習に甘えないで、最後まで努力をします。

 中国の人権蹂躙をめぐる国会決議については、たとえば南モンゴルの人権弾圧をやめさせるための議連において、周囲の反発を承知で「中国という主語を入れるべきだ」と、最近も主張しました。
 人権蹂躙やジェノサイドを行っているのは中国共産党による独裁であることを、国会決議に盛り込むべきだと最後まで主張したのです。
 それでも「中国」の明記はついに、全党・全会派の合意をつくるためと称して、実りませんでした。しかし無駄な努力だったとは、思いませぬ。
 前述したように、ウイグル、チベット、南モンゴル、香港と明記することによって、中国共産党による人権蹂躙に絞った決議であることを浮き彫りにするよう変わった、その背景のひとつ、ちいさくても背景のひとつ、これになる効果はあったと考えています。

▼きょうの「日本ウクライナ友好議連」に、自由民主党の議員はほとんど来ませんでした。参議院議員は、ぼく以外にはゼロです。
 基本的に、会長、および事務局長という役員を務める自由民主党・衆議院議員だけでした。
 なぜか。
 もうお分かりのように、今日はまずは衆議院での国会決議を進めるための場であり、また各党・各会派の代表を集めた儀式的な場、いわば慣習に基づく決まり切った場だからです。
 なのにどうして、参議院議員にして、しかも役員ではないぼくが自由意志で参加したか。

 主権者に負託された責任として、主権者・国民の代わりに現場を踏み、民主主義による議会・国会の宿命でもある慣習をよく知りつつ、しかし甘えない行動をとることの一環だからです。

 これがぼくの生き方です。
 7月10日予定の参院選に向けても、こういう生き方のまま臨みます。
 したがって結果はどうなるか、まったく分かりません。いかなる団体の支持・支援も断って、団体の付けてくれる基礎票というやつが皆無なのですから。
 団体に依存するのは、国政選挙において、与野党を問わない慣習です。
 その慣習を良く知りつつ、甘えることはしません。





 
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