On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2022-07-27 16:53:35
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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安倍さんの部屋


(これはもちろん、安倍さんの部屋ではないです。
 安倍さんの議員会館の部屋は、こんな殺風景ではなく、上手に住みこなしておられるなぁと感じる、温もりや安らぎもあるような議員室でした。
 これは、ぼくの議員室です。亡き父母、その背後は連合艦隊の旗艦の甲板に勢揃いなさった司令長官と幕僚たち、そしてこの画面には映っていないですが、電話機の右隣には青山繁子の写真、つまりみな、遺影です。
 ぼくの背後に居るのも、坂本龍馬さん、中岡慎太郎さん、ともに暗殺されたおふたりです。
 亡き命に囲まれて、ぼくはおのれの命をいま、生きています。
 ここで仕事をしていると、生と死の狭間で働いているなぁ、小さな事にかまけているヒマは無いなぁと思うのです)

▼いま議員会館の青山繁晴事務所にて、執務しています。
 きょう7月27日水曜でいうと、法務省の行政官 ( 官僚 ) と日本の家族法制をめぐって議論し、経産省の行政官と洋上風力をめぐって議論し、あるいは民間のエネルギー関係者とよもやまを議論したり、また、短い時間しか取れなくてもカンボジアの地雷除去に努力されているかたにお会いしたりです。
 国会が閉じていても、公務の連続です。

 この時季の、つまり選挙のあとの議員会館というのは、引っ越しのための養生が全館になされています。
 廊下や壁を作業で傷つけないために、青いシートなどが貼ってあるのですね。
 落選議員、引退議員が去り、初当選議員、再登場する議員を迎える引っ越し作業です。
 それなりの感慨を感じる光景です。
 ただ、この議員会館より、国会議員が家族と生活することもある議員宿舎の方が、もっと生々しいです。
 記者時代に、たくさん目撃をしました。
 泣きべその表情のベテラン議員もいました。

▼ぼくが今、秘書さんと居る部屋は、実業家出身の議員がいらっしゃった部屋です。
 落選なさったのではなく、「議員の仕事は想像していたのと違う。思うように活躍できない」と仰り、1期だけで辞められたと聞きました。
 6年前にここへ入ったとき、それを聞いた瞬間、『俺は、1期6年で辞めるという願いが、逆に、実現できなくなるのじゃないか』と予感がしました。
 ただし当時は、ちょっと辛い、ビターな予感というか、それだけでした。
 それがほんとうになり、きのう7月26日から、2期目の任期がすでに始まっています。

▼上述の写真説明にも書きましたが、安倍さんの居る部屋というのは、議員会館も、ご自宅も、それは素敵な場所でした。
 寛ぎもあるし、いい緊張感もある。
 調度品もよく考えられて揃っていて、間違っても、ぼくのように資料や本が積みっぱなしになっているなんてことは無かったです。
 生きること、国事に励むこと、いずれも愉しんでおられる安倍晋三さん本来の姿を感じさせる部屋だったのです。

 ぼくの居るのは参議院の議員会館です。安倍さんが住みこなしておられた衆議院の議員会館の部屋が今どうなっているのかは、わかりません。
 見に行く気には、とても、とても、なれません。

 あそこに、安倍晋三内閣総理大臣がいないというのは、あり得ないことです。
 実は、7年8か月にわたる総理大臣を辞められて、総理官邸から議員会館に戻られたときですら、それが信じられなかったです。
 官邸に居るのが、安倍さんでした。
 その総理官邸の内奥、日本国宰相の執務室を秘かにお訪ねすると、総理はいつも、片腕をソファに乗せたり、時には身を乗り出したり、ぼくが民間の専門家のときも、国会議員となってからも、同じようにリラックスして気持ちよく語ってくださいました。

 安倍さんとぼくのあいだに、利害関係があったことはありません。
 議員となってからも、どんな派閥にも属しませんし、それに変わりはありませんでした。
 ぼくの勝手な印象だけですが、いつも愉しそうに、現職の総理が時間を忘れるかのように話されました。人払いもなさって、SPも秘書官もいませんでした。
 もちろん、強固な守りの総理官邸で、しかも分厚いドアの外ではSPがしっかり固めていたからこそです。
 あの自由自在な議論の時間を、これから日本国のために活かしていくのが、不肖ながらささやかな任務のひとつだと考えています。





 
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