On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2023-11-07 02:48:38
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【追記しました】  NHKの青山千春・東京海洋大学特任准教授の研究をめぐる放送について、わたしは「新たな誤解をつくる放送だ」と言わざるを得ません



▼きのう11月6日月曜の午後に、NHKが全国放送にて青山千春・東京海洋大学特任准教授がカニ篭漁の漁家のかたがたと連携している研究について放送しました。
 わたしは出張中で、生放送で視ることができず、のちほど視ました。

▼放送内容は、メタンハイドレートの研究開発については全く、ひとことたりとも触れませんでした。
 青山千春博士が世界の特許 ( 日本、アメリカ、オーストラリア、EU全加盟国、ノルウェー、韓国、中国、ロシア ) を持つ、ほんらいは海洋資源開発のための超音波技術を応用して、カニの特性を調べる航海についてのみ、取りあげるものでした。

 しかし実際はこれは、メタンハイドレートを採掘して国産の海洋資源として実用化する際に、海を活用することについてカニ篭漁と両立させるために行っている画期的な実験です。
 日本国民のうち、予備知識なく放送をご覧になったかたはおそらくその全員が、青山千春博士を漁業資源だけの学者と思ったでしょうし、これがまさか新資源のための研究だとはゆめ、考えられなかったでしょう。

▼青山千春博士は、海の現場を回るにつれ、『これまでの漁業補償が漁家にお金を渡し、その間は漁業を休んでもらうことも少なくなく、日本の根っこのひとつである漁業の従事者を減らしかねない』という現実に目覚めました。
 だからこそ、カニ篭漁と海洋資源開発との共存を図る、知られざる努力を重ねているのです。
 安全な大学に閉じこもらず、危険がいっぱいの海の現場に出て、漁業者の信頼を勝ちとり、連携を続けています。
 
 わたしは、自身も地球物理学の国際学会で何度か口頭発表を行い、世界の学者と付き合いがあります。
 しかしこのような学者は、極めて稀です。
 その事実を無視し、国民に誤解を与える放送と言わざるを得ません。

▼わたしは、あまりに当然ながら、報道の自由をどこまでも尊重します。
 したがって報道内容に触れることはほんらいは致しませぬ。

 しかし、上記のような誤解を与えることが、日本の自前資源開発への研究者たちの努力、あるいは官界の中にようやく生まれ始めた国士の行政官たちの努力の足を引っ張り、それに協力してくださる漁家のみなさんの志を裏切るものに近いと、指摘するほかありません。

▼また、この放送は、公共放送の使命からも深刻な問題があります。
 放送の冒頭で、アナウンサーとお笑い芸人のかたがたとのやり取りで、「面白い情報だけど、調べるまでもない」という趣旨をアナウンサーが述べ、「え、調べるまでもないことを放送するんですか」とお笑い芸人のかたが型どおりに突っ込むという発言がありました。
 これも、唖然とせざるを得ません。

 カニ篭漁の漁船はとても小さく、落水の恐怖が常にあります。
 そしてカニ篭漁は、夜間に徹夜で行う漁です。

 昼間に研究や講義にいそしむ科学者が同乗して研究をおこなうとき、襲ってくる烈しい眠気とも闘いますから、真っ暗な海に落水して命を落とす重大な危険に直面します。
 それでも、国家国民のために、日本初の自前の資源開発と漁業を両立させるために、現場実験を、無償で敢行しているのです。

 それが「調べるまでもない」ことでしょうか。
 また青山千春博士について「眠そうにしている」といった、からかうような発言もありました。
 いや、早朝から夜までふだん、ぶっ通しで研究している学者が、リスクの高い夜の海の現場で懸命に眠気と闘っている姿です。

 こうしたアナウンサーとお笑い芸人のかたがとのやり取りは、実際は、台本通りに行っているものです。
 わたしはかつてテレビ番組に参加していましたから、その舞台裏を熟知しています。
 すなわち責任は、放送作家と、ディレクター、プロデューサーにあります。

 ところが放送された画面には、ディレクターかプロデューサーが、ひどい船酔いと眠気に苦しみ、ずっと膝を抱えて身動きできない映像が何度か流れました。
 すなわち、ディレクターかプロデューサーは、現場の痛み、苦闘を知っているのですね。
 それでなぜ、こんな茶化した演出で、放送するのでしょうか。

 仮に「柔らかく放送したかった」という弁明をNHKがするにしても、公共放送の使命を明らかに逸脱しています。
 漁家や研究者への敬意がまるで感じられません。

▼わたしは青山千春博士に、上記のような告発を、わたしのブログでせざるを得ないと述べました。
 すると青山千春博士は、すこし悲しみました。
「書かないで」とは決して言いません。
 しかし残念そうでした。
 彼女自身は、曲がりなりにもNHKがようやく研究を取りあげたことを、こころから喜んでいるのです。

 また青山千春博士によると、この「メタンハイドレートの研究開発とカニ篭漁の連携の研究」については番組が2本あり、そのうちの1本は、メタンハイドレートの研究にも触れていて、それはローカルですでに放送され、触れていない1本がきのう全国放送に ” 昇格 ” して放送されたとのことです。

 わたしは、そのローカル放送も視ました。
 確かに、メタンハイドレートの研究開発にも幾分かは触れていました。
 ただし、その放送も冒頭部分では、まるでメタンハイドレートの研究開発が日本の海を荒らすかのような言及があり、根拠のない、これもまさしく公共放送とは思えない乱暴な内容が一部にあったと言わざるを得ません。

 こうした放送であってもなお、喜ばざるを得ない青山千春・東京海洋大学特任准教授をみていると、この女性研究者がこれまでいかに酷い扱い、すなわち女性が船に乗ることへの妨害、圧力、偏見を受け、自前資源開発に携わってからは「日本に資源などあるはずが無い」という刷り込み、思い込み、既得権益からの妨害に遭ってきたかが、あらためて深刻に伝わってきます。

▼みなさん、折しも、写真のような書籍が11月25日に発刊されます。
 上記の妨害、圧力、偏見、既得権益との戦いのすべてが初めて、明らかにされています。

 本の宣伝などではありませぬ !
 公共放送のこの、信じがたい放送を視て、わたしは責任を持って、明言します。「必読」という言葉が、これほど当てはまる書もないでしょうと。

 予約の段階から、たとえひとりでも多くの国民に知っていただき、NHKも率先して生み出している新たな誤解に、正しく対峙していただくことを祈ります。
 ネット書店では、たとえばここここにあります。
 また、書店でも、予約注文できるかをお尋ねいただけますか ?

★ウクライナ戦争でエネルギー危機も襲来し、わたしたち日本人は自前資源を持つことの意義をあらためて知りました。
 そのときにNHKは公共放送であることを、受信料の支払いを求める時にあれほど強調しながら、どうしてこのように自前資源への現場の努力を茶化し、真実性や公正さに課題のある放送ができるのでしょうか。
 NHKの関係者おひとりおひとりの良心に、深く、問います。

 NHKは、メタンハイドレートの研究開発についてあらためて青山千春・東京海洋大学特任准教授にも取材し、きちんと取り組まれるべきではないかと考えます。
 ただし、それはあくまでも報道の自由に基づいて、NHK自身が考え、決められることです。
 NHKは法的に、公共放送であっても国営放送ではないからです。

 そしてわたしは、別途、国営放送も必要であると考えます。
 自由民主党の国会議員として実際に、参議院の総務委員会で「国営放送の必要性」を質問しました。
 当時の高市総務大臣は、おそらく総務官僚の作成された答弁案を読み上げられ、明確に答弁されず、委員会後に長い知己でもあるわたしに「厳しい質問をするわね」と、まさしく厳しい表情で仰いました。

 しかし現在は、ネットを活用すれば、かつては考えられないほどの低コスト、少ない人員で、国営放送を開始し、運営できます。
 新しい政権が生まれれば、これも取り組みが始まるべきです。









 
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