2006-10-24 08:24:16
たいしたことじゃないけど、ちょっと意外なこと
▼このごろのぼくの『ちょっと意外かもしれない』こと。
ひとつ。
自分のテレビ出演を、独研(独立総合研究所)のホームページで知る。
テレビ番組への参加には、蛇足ながら、3つの種類がある。
生出演と、スタジオ収録による参加と、独研の社長室その他でのコメント撮りによる参加。
このうち、スタジオで収録した番組も、このごろ放送日を忘れていることが増えたけど、コメント撮りだけだった番組は、放送日を覚えていることの方が少ない。
みなさんの眼には、テレビ出演ばかりが目立つのは当然のことだけど、実際のぼくは、本業のシンクタンク社長と、物書きが、この頃めちゃらくちゃらに忙しいから、といっても単なる貧乏暇なしに過ぎないのだけど、テレビ出演をひとつひとつ、とても覚えていられなくなってしまう。
テレビ番組に参加するときは、それが本業ではなくても、視聴者への重い、重い責任があるから、ぼくなりに、つまり下手くそなりに、せいいっぱいの力を尽くして集中する。
それは、生出演でも、スタジオ収録でも、コメント撮りだけでも変わらない。
だけど、そのあとは、忘れる。
テレビ出演が増えたとか、多すぎるとかじゃない。ほんのちょっとだけ増え気味かもしれないけど、実際は、あまり変わらず、出演は少ない。
忘れるほどには、とてもとても、ありません。
ところが、忘れる。
パソコンで、情報源と電子メールのやりとりをしたり原稿を書いているとき、いつもパソコン画面の右上に小さく、テレビ画面が出ている。
その画面に、たまに自分が現れるので、すこし驚いたりする。
「あれ? 出てるな」。
これが多いので、このごろ、たまに独研のHPの『プレスルーム』を見てみる。
そこに載せ忘れている番組は、つまり、ぼくも、みなさんと同じく見逃してしまうのです。
そして、自分の出演を無事に見られたときは、残念ながら、いつも穴があれば入りたい心境に襲われてしまう。謙遜などでは、全くない。
もっと分かりやすく話せなければ、だめだ、駄目だ、だめだ。
自分をテレビで見ると凄く恥ずかしいということが、番組の放送日を忘れる理由になっているのかなぁ。
それもあるだろうけど、もともとぼくは、本業の物書きとしても、書き終わった瞬間にかなり強烈なカタルシス(浄化作用)が起きて、何を書いたか忘れる方だ。
どんな本を出したか、どんな雑誌に寄稿したか、それは忘れないけど、内容に自分の考えや思いや情報のうち何を盛り込んだかは、あっという間に忘れる。
物書きには、ふたつの種があると思う。
自分が何を書いたか、それを大切に手のひらに載せて、なんども眺める人。
それから、書きあげた瞬間にカタルシスが自然に起きて洗い流してしまう人。
ぼくは、生まれながらの性格としても、それからプロの書き手としてそれなりに自己鍛錬した副産物としても、後者の方だ。
それがテレビ出演にも、たぶん、共通しているのだろうと、いま思った。
▼意外かもしれないこと、もうひとつ。
ひとりになる時間は、ほぼ無い。
常に、同行者が付いてくれている。
そのこと自体は意外じゃないかもしれないけど、ひとりの時間の無いことが気にならない、負担にならない、それは自分でも、ちょっと意外だ。
誰でも、ひとりの時間を確保したいだろうし、ぼくも、かつてはそうだったのだけどなぁ。
逆に言うと、ぼくよりも、付いてくれる同行者がたいへんです。
▼意外かもしれないこと、さらにひとつ。
この生活のさなかでも、ノンストップで終夜、お酒を馬のごとく呑むことや、仮眠の代わりにジムへ行ってバーベルとダンベルを挙げること、それから、絶対に見たい映画だけはどうにか見ること、それらは続いている。
先日、20数年間ずっと変わらずに、ぼくの情報源でいてくれるひと、つまり記者時代から変わらない信頼関係のある人物に会って、北朝鮮の核実験をめぐる話をしているとき、突如として、昭和天皇を描いたロシア映画「太陽」を見ようということになり、銀座で、場所を移動して、いきなり、見た。
映画が終わって、そのひとの顔をちらり見ると、即座に「青山さん、びっくりしたんでしょう」と言われた。
いやぁ、さすがに長い付き合いですね、そのとおり、とてもびっくりする映画だった。
明らかに歴史的事実に反するところも少なくないから、あれが、わたしたちの昭和天皇の実像だと考えるのは、間違っている。
ただ、それでも、監督の視座に、驚いた。
そして、ぼくの知らない事実が、いや、ぼくが真実だと思い込んでいて真実でないことが、この世にはまだまだ凄まじく沢山あるのだということ、その当然のことを、胸に呼び起こした。
それは感謝している。
命をひっそり閉じるときまで、そのときまで、恥多き日々のなかにあっても、なにより謙虚でいたい。
自由自在でいて謙虚な、魂でありたい。
*写真は、黒部ダムへ登る行程で見あげた、剣(つるぎ)立山連峰の山々。
画面の中央に、針ノ木の大雪渓がみえます。
携帯電話で撮った写真だから、見にくいでしょうが、よく見ていただくと、白い雪渓が分かると思います。
かつては夏、この雪渓を登り、夏スキーを滑っていました。
あのとき非力なりにつくった足腰が、今もなお、ぼくの支えです。
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