On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2009-08-05 19:19:50

びっくり




▼さきほど生放送のあった関西テレビの報道番組「アンカー」で、「青山のニュースDEズバリ」のコーナー後半、ぼくが社民党や共産党のマニフェストとオバマ大統領の関係について話している最中に、カメラの後ろ側、つまり視聴者には一切みえないところで、ディレクターやフロア・ディレクターが両手で激しくバツ印を出しているのです。

 びっくりしました。
 このカメラの向こう側からは、主として時間が無くなったときに、「CMへ」とか「終わってください」とかの指示が出ます。
 生放送だから、やり直しがもちろん絶対にきかないので、スタジオにはもともと緊張感が漂っています。そのなかで、時間配分が壊れると、番組がおかしくなるので、この指示にはいつも注意を払っています。

 だけども、バツ印なんて、出たことがない。
 ディレクターがうろうろ動くだけで、ほんとうは相当に気を取られるのに、何人もが一斉に激しい身振りで、バツ印です。
 気になるどころじゃない。
 ふつうなら声が出なくなるところだったと思います。

 しかし、それは視聴者には関係がない。
 ぼくは視聴者のためだけに話しているのだから、きょうはその瞬間、「このバツ印は、内容が困る、それ以上は喋るなと言っているのか、それとも、ただ時間が全然、まったくないですと言っているのか、どちらだろう。ここは、後者だと解釈して、数十秒で言うべきを言うしかない」と考えました。
 すると気持ちは落ち着き、急に話すのをやめてしまったりする一種の「放送事故」にならずに済みました。


▼だけども、視聴者からすれば、やはり話が中途半端になったと思います。
 そこで番組の終わりに、ひとこと、「バツ印が出たりしていたので、話が中途半端になって済みませんでした」と、視聴者のかたがたに申しました。

 今回の選挙報道では、民放もNHKもたいへんにナーバスになっています。ぼくには、その理由がよく得心はできませんが、「政権交代がかかっている選挙だから」ということだそうです。
 政権交代があろうがなからろうが、いつも同じフェアネスを追求していけばいいと、ぼくは思います。
 しかし、局がいずれもナーバスになっている現実があります。それに、話していることがマニフェストの内容についてだったし、バツ印をみて「内容が困ると言っているのかな」とも考えたわけです。

 けれども、ぼくは内容は変えませんでした。「時間が無くなったんだ」と受け止めて、話しぶりが駆け足になったから、舌足らずにはなったけれど、変えませんでした。


▼そして番組が終わってから、スタッフに確認すると、内容に干渉する意図はまったくなくて、ただただ時間が無くなったという意味のバツ印だったということです。
 視聴者のみなさんのなかにも、ひょっとしたら、「関テレが内容にブレーキをかけた」と誤解される人がいらっしゃるかも知れないので、こうして、帰り道の空港で、書き込んでいます。
 視聴者のみなさん、慌ただしいところをお見せして、あらためて、ごめんなさい。
 それに実は、きょうは過去もっとも体調が悪いなかの放送でしたから、よけいに聞き苦しいところもあったのじゃないかと思います。それも、ごめんなさい。
 病気というのじゃありません。11年8か月あまり、1日も休んでいないために疲労に限界が来ているようです。


                              8月5日 夕刻


(※新刊のサイン会に関するお知らせが、この一つ前と、二つ前の書き込みにあります)
 
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