On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2009-08-28 09:16:33

硫黄島をめぐる決心と約束、そして、「あと2日」




▼いま8月28日金曜の朝6時40分、新宿駅のホームにいます。
 これから、特急電車で長野県の松本方面へ出張に向かいます。
 あと2日に迫った総選挙の関連です。

 このホームは、学生時代にアルペン競技スキーに打ち込んでいたとき、合宿に向かうのによく特急を待っていたホームです。なんとも言えない懐かしさが込みあげてきます。
 今朝も、登山の格好をした乗客が沢山いらっしゃいます。
 当時のぼくは、2メートル15センチという滑降競技用の特注スキーを含め4台のスキーを抱えて、大きなザックのその上に担ぎ、このホームをうろうろしていました。

 大学時代のアルペン・スキー、それから中学・高校時代の陸上競技、いずれも下手くそなへっぽこ選手でしたが、それらを通じて培った足腰の強さ、それが今のぼくの極端な忙中の生活を、まさしく足許から支えてくれています。
 そのスキーで、ことし2月にはかなり無茶なジャンプをして、腰の骨を5本、折りましたが、足腰こそが支えであることは変わりません。

 だから、このホームの懐かしい光景にも、浅くはない感謝の気持ちを感じます。


▼きのう8月27日木曜は、東京の八重洲ブックセンターで、新刊「王道の日本、覇道の中国、火道の米国」(PHP)の2回目のサイン会でした。
 今回は初めて、ミニ講演を致したあとにサイン会になるという設定でした。

 午後6時10分、都内からタクシーで八重洲ブックセンターの正面に着くと、PHP担当編集者の S さん、独研(独立総合研究所)秘書の M ( ちなみに、東京海洋大学で航海学などを学び、元は水泳女子個人メドレーの選手でもあった M には「さん」とか「ちゃん」とか付ける気がしないのです。うはは)、それに八重洲ブックセンターの幹部やスタッフ、PHPの幹部のかたがたなどがずらりと並んで待ってくださっていました。

 実は、約束は6時ちょうどだったので、まことにまことに恐縮しつつお詫びしつつ、珍しくほんの少し緊張感を感じながら、八重洲ブックセンター7階の控え室に入りました。
 そしてブックセンター副店長に「八重洲ブックセンターは学生のときも、記者時代も、よく通った書店です。まさか、ここでサイン会をする日が来るとは思わなかったので、すこし緊張しているんですよ」とお話ししました。
 もちろん本心。

 そして、八重洲ブックセンターに置くためのサイン本に10冊、サインをし、気を入れながら落款を押しました。きょうから八重洲ブックセンターに並んでいるはずです。

 開始時刻の6時半が近づき、会場の8階に上がると、ガラス越しにたくさんの読者のかたがすでに集まってらっしゃるのが見えました。
 うわー、沢山のひとだ。もう感謝でいっぱいです。

 司会の女性スタッフが開始を告げるあいだ、ミニ舞台の袖から、何人かの読者が見えます。思わず、にっこりして頭を下げました。

 そして、まずはミニ講演となり、最初に、おおむね次のように語りました。

「ぼくの講演はふだん、最短でも2時間、長いと4時間、話しています。きょうは、あとにサイン会が控えていますから、30分にせねばなりません。そこで、何を選んでお話しするかをずいぶんと考えました。みなさんが、今こうしてお手元に持っていただいている新刊は、タイトルに中国もアメリカもありますが、中国やアメリカを批評するためにそうしているのではなくて、中国の覇道、アメリカの、ぼくの造語ではありますが火道、それらを通じて考える、ではわたしたちはどう生きるのか、いかに生き、いかに死すのか、それをみなさんと一緒に考えたいというのが、新刊のいちばんの目的です。ぼくらは同じ立場です。この祖国の、最終責任を担っています。だから一緒に考えたいのです。きょうの、この短いお話も、ぼくらの生き方の根っこに通じることを考えるために、硫黄島のことを、選ばせていただきます」

 硫黄島のことは、ふだんの講演では、講演の最後の20分か30分をいただいて話しています。
 きのうのミニ講演では、ふだんの話の途中を端折(はしょ)って、その代わり、ふだんにはあまり話していない部分を話そうと思ったのですが、それはかないませんでした。
 事前に厳しく「30分だけですよ」と言われていたのに、50分ほどになってしまい、そのうえ、ふだん、硫黄島での出来事をかいつまんで話している、その内容に近い内容にとどまりました。

 ミニ講演を終えるとき、ぼくは「やはり、硫黄島のことも、もう書籍にして、みなさんにすべてを伝えるべきだ」と痛感し、ミニ講演でも「これまで硫黄島のことは、正直、辛すぎて、まだ本を書く気になれなかったのです。だけど、きょうは講演時間が短かかっただけに、もう決心して、本を書くべきだと痛感しました」と述べました。

 聞き入ってくださっていた、たくさんの読者のなかに、深く頷かれるお顔をいくつも見ました。
 これはもう、みなさんとの約束成立ですね。


▼八重洲ブックセンターでのサイン会は、午後10時を過ぎて終わりました。
 閉店時間は午後9時なのに、快く、時間を延長して支えてくださったブックセンターの幹部とスタッフのみなさん、PHPのみなさん、独研の社員たち(経理室の敏腕の総務部員 S も特別参加してくれました)、そして読者のみなさん、こころから、ありがとうございました。


▼さて、投票まであと2日。
 8月30日日曜の当日は、前にお知らせした通り、関西テレビの選挙特番に参加(生出演)します。
 番組開始は19時58分、そして24時54分、つまり翌日の午前1時近くまで生放送が続きます。

 メインキャスターは、関テレの報道番組「アンカー」を支える山本浩之(ヤマヒロ)アナ、そして同じアンカーの村西利恵アナ、岡安譲アナが最前線の選挙事務所から生中継してくれます。

 解説は、風格ある政治評論家の森田実さん、公平で冷静な分析の政治アナリスト、伊藤惇夫さん、そしてぼくです。
 関テレ報道局の若手ディレクターに言わせると「今回の各局の選挙特番きっての重厚な布陣」ということになります。面と向かってそう言われたぼくは、森田さん、伊藤さんについては確かにそうでも、ぼくについてはあまりに照れくさいというのが正直な実感ですが…。
 それに、有権者目線でメッセンジャー黒田さんが参加され、関テレの懐かしい情報番組「2時ワクッ」で一緒だった藤本恵子アナがスタジオでデータ解説などを支えてくれます。

 今回は、ふだん水曜「アンカー」で放送している「青山のニュースDEズバリ」をこの選挙特番でも、放送します。
 選挙特番としては初めての試みです。
 さぁ何をテーマに話すか、キーワードは何か。
 それは刻々と開いていく票の行方、みんなの一票一票の行方をじっくりと見つつ、その場で深く考えさせていただきます。

 もしもよろしければ、視てください。待っています。



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