On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2011-12-08 22:38:20

シスコの月に吠える




▼みなさん、今はサンフラシスコ時刻の12月8日未明4時25分です。
 2年半ぶりの新刊「ぼくらの祖国」は、ようやく、ぼくの執筆およびゲラ直しがすべて終わり、いま出版元の扶桑社で詰めの作業が行われています。

 正直、命を削りに削ったと言うほかありません。
 26歳で社会人になってから、ずっと多忙な仕事生活ではありましたが、ここまで極端に過酷な徹夜仕事を続けたことはありません。
 信じがたいことに、4週間ほど、ただの一度もまともに睡眠を取りませんでした。

 そしてこの「ぼくらの祖国」執筆以外の仕事も、一切手を抜くことはありませんでした。
 会食などの約束も、一度交わした約束は守るよう力を尽くしますから、すべて予定通りに果たしました。


▼さて、ゲラを直すとき、がんがん新たに書き加えていったために、扶桑社の編集者によると30ページ近くも本のページが増えてしまったそうです。
 そのために、定価が1500円の予定から、100円上がって、1600円になりました。
 みなさんの財布に負担をかけます。ごめんなさい。
 うーむ、もともとは1000円ぐらいの薄い本を考えていたので、うーむ、予定外です。

 ただ、その書き加えはどうしても必要なものでした。
 本に良心を込めるためには、欠かせない書き加えでした。
 100円の負担増を、どうか許してください。


▼最後に決まった予定通り、12月27日に主要な書店に並び始め、28日に全国の書店に回ります。
 といっても初版は1万2千部ですから、予約をされていないと、なかなか届かない書店もあると思われます。
 無理に予約をお勧めするつもりは、ゆめ、ありません。
 ただ、年末年始に読みたいなというかたは、予約なさらないと手に入らないかもしれないのが実際のところです。


▼サイン会は、必ず行います。
 みなさんと会いたいからです。
 すでに日程調整に入りつつあります。


▼きのうシスコ時刻の朝7時28分に、本の最後に入る「あとがき」のゲラ直しを扶桑社にメール送信して、ぼくの執筆は終わりました。
 このときも、完全徹夜でした。

 徹夜明けのまま、サンフランスシスコに同道している青山千春博士(もちろん睡眠、充分です)と朝食を食べに行き、しっかり食べて、ホテルの部屋に戻って、すぐに眠りました。
 胃が生まれつき丈夫なので、食べてすぐに寝ても問題ない、というかお腹いっぱいの方がしっかり眠れます。

 しかし、シスコに来ている本題である学会出席があります。
 だから4時間ほどだけ眠ったら、ふらふらしつつ起きて風呂に入り、資源・エネルギー・環境・宇宙をめぐる世界最大の国際学会、AGU(地球物理学連合)の会場に歩いて行きました。

 歩くうち、目が覚めていくだけでなく、体調がずいぶんと回復しているのをはっきり感じました。
 2月に大腸癌の手術をして以来、癌はごく早期で問題なかったけれど、全身麻酔で大きく開腹する手術をした影響が残って、本来の体調では全くなかったのです。
 ところが、この過酷な4週間を経て、むしろ体調が戻ってきたのを実感しています。

「ぼくらの祖国」は終わっても、独研(独立総合研究所)から完全会員制で配信している東京コンフィデンシャル・レポート(TCR)をこの12月には合計11本、送る予定ですから、休むことは全くできません。

 それでも、気分は悪くありません。

「ぼくらの祖国」は、パソコンの中の原稿が、バックアップまで含めて、狙い撃ちのように二度にわたり完全破壊されたという不可思議な事件から、難行苦行が始まりました。
 そして、ようやくに仕上げの段階になったときに、このブログにもあえて記している、奇怪にして、あまりに悪質な名誉毀損が発生し、非常な妨害を受けました。
 しかし、とにもかくにも、すべての障害を打ち破って、発刊に至りました。

 祖国が甦るために、どれぐらいこの書が貢献できるかは、天がお決めになります。
 ぼくは、ようやくにして、物書きにも戻りました。
 今まであたためてきたものを、どんどん書物にしていきます。


▼写真は、きのうの夕方に携帯で撮った、学会の光景です。
 すさまじい人の群れでしょう。
 これがひとりひとり全員、研究者と学者なんです。
 世界中から集まっています。
 事務局によると、発表を申告した人だけで、2万人だそうです。ふひ。

 会場の外には、月が出ていました。
 画面の上は、満月の光です。
 研究者と学者が、会場の外に出ても熱く議論しています。

 きょう12月8日は、真珠湾攻撃から70年の日です。
 まだ70年しか、経っていないのです。


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