On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2006-04-15 14:53:52

視聴者は、やはりよく観ている



▼このHPへの書き込みに教えてもらって2チャンネルに行ってみると、たしかに、いくらか話題・議論になっていた。

 ぼくの削除した書き込みを、2チャンネルに転載されていること自体は、まったく異論がない。
 それがネットだから。

 その話をしたいのじゃなくて、展開されている議論の中身について、すこし話したい。
 ありのままに言うと、たいへん面白かった。
 そして、もっとありのままに言うと、2チャンネルに書き込んでいる人は、言葉遣いはかなりラフでも、直感力とか本質を掴む力は、かなり高いと思った。

 こういうことを書くと、2チャンネルにおもねていると言われるだろうし、言いたい人は言えばいいけど、ぼくはぼくなりに覚悟して残りの人生を生きているから、おもねたりなどしない。
 ほんとうに、感心したのだ。

 まず、書いてある内容のうち少なくないものが、フェアだと思う。
 もう一度言うけど、言葉遣いはラフだ。ぼくなら使わない言葉が多い。
 それに皮肉っぽい書きぶりが多い。ぼくは皮肉は言わないので、そこは感覚が違う。

 だけれども、たとえば、ぼくを批判する書き込みのなかに「時間や構成の制限から発言を削除されることはテレビではやむを得ないことなのに、番組が偏向しているかのように言うのは、間違っている」という趣旨の書き込みがある。

 前半は、もともと、同じ考えだ。
 それを承知の上で書いたことは、削除した一文「正直、驚いた」でも、そのあとにアップした一文「みなさん、書き込みをありがとう」でも、ぼく自身も触れている。
 感心したのは、後半の部分。
 ぼくの言い分は、自分の発言があまりに極端にカットされていた、ということだから、受け取り方によっては、自分の不満だけを述べている、逆に自分の発言さえ採用されていればそれでいいのか、という感じ方があってもおかしくない。

 HPへのコメントで、そういった書き込みは一つもなかったけれど、ぼく自身がふと、そう思った。
 そして「視聴者は収録をみることができないのだから、この青山の言い分は、身勝手なだけなのか、それともいくらかはフェアな部分があるのかという判断はできないな。だから、この一文は正しくない」と思って削除した。
 主文を削除したから、コメントも削除した。しかしコメントは、そのほとんどが参考になるものだったから、ぼくの記録には保存した。

 コメントが嫌で削除したというのは、誤解に過ぎないから、そう考えている人にはそれも伝えたいけど、いま述べているのは、それよりも、上に例示したぼくへの批判書き込みが「自分の発言が削除されたことが不満なだけ」などとはせずに、「番組が偏向しているかのように言うのはおかしい」としているところだ。

 問題を下のレベルに持っていかずに、きちんと、ほんらいのレベルに保って批判している。
 そこが、いい。

 そのとおり、ぼくは、こう述べたかった。
「いくらバラエティでも、出演した政治家、タレント、専門家、一般市民の大半が、太田総理の言い分に対して、収録では真剣に、しかも単に堅苦しく真剣に反論したのじゃなくて、熱く面白く、そして真剣に反論して、凄く活発な議論になったのに、ほとんどその片鱗も残らず、一方的に太田総理の立場を容認気味になったかのように編集したのは、いくら編集権がテレビ局にあっても、やりすぎではないか。そもそも視聴者は、熱いディベートを望む人のほうが、一方的な作りを望む人よりは、多いのではないか」
 ぼくへの批判コメントは、そこをちゃんと踏まえている。

 そのうえでの批判だから、批判は批判として、耳を傾けます。
 この批判を書き込んだ人が誰かについて、2チャンネルには推測も書き込まれているけど、それは分からないし、それを追求するより、誰が書いたかにかかわらず汲むべきは汲みたい。
 批判を受け容れるということではないですよ、汲むべきところがないか、きちんと見たいというということです。
 

▼2チャンネルに、ぼくがイラクの場所を知らなかったような書き込みがあるけど、ここは中東をも専門分野にする者としてちょっと見逃せないので、事実を書いておきます。

 放送された「抜き打ちテスト」は3種類。
 このテストは、ぼくの知る限りほんとうに抜き打ちだった。そこは、この番組はフェアです。嘘をついていない。

 一つは、白地図にイラクを書き込むテスト。
 2人の自民党議員は、なんとヨルダンを塗りつぶした。
 社民党の福島さんは、正解だった。
 ぼくは当たり前だけど、正解です。
 これについては、正解者リストがちゃんと放送された。
 ぼくは収録で自民党議員に、「いくらなんでも、これはひどい。ヨルダンの人も怒るよ」と言い、それから「言い訳をしちゃ駄目だ」とも言った。
 放送では、完全にカット。

 もう一つは、官製はがきの値段。
 2人の自民党議員も、ぼくも、それから、たぶん出演者の半分ぐらいが正解。

 残る一つは、小泉さんの前の首相を5代ほど書かせるテスト。
 これも自民党議員は2人とも間違えた。
 さらに、言い訳もあった。
 だけども、これは記憶違いで済む話じゃない。政治の流れが分かっていないのではないかと思ってしまう。

 政治の流れとは、たとえば宮沢政権を最期の自民党単独政権として、細川政権で非自民連立政権が誕生し、その細川さんがあっというまに退陣して、羽田政権ができたけれど、小沢さんが社会党とケンカしたために2か月でつぶれ、怒った社会党が自民党と組んで自社政権の村山政権が成立、おかげで息を吹き返した自民党が橋本政権、そして小渕政権と続け、小渕さんが小沢さんとのトラブルのあと急死し、森さんが急遽、政権を担ったけれども、無惨に崩壊したために変人と言われた小泉さんが首相になることができたーということです。
 小沢さんの表舞台への再登場で、政界が活気づいているのに、この流れが分かっていないのなら困ったことです。

 このテストの正解者はなぜか、太田総理を支持する側に割り当てられていた出演者、福島さんらだけリストアップされて、太田総理を支持しない側にいた、ぼくを含む正解者はリストアップされなかったのです。
 特別な意図があったとは思わない。
 しかしリストを出す以上は、最低限、誤解がないようにして欲しかった。

 ただし公平のために言うと、ぼくは実は放送前、自民党議員のあまりに問題の多い間違い2つ、なかでもイラクの場所を知らなかったシーンは、放送されないのじゃないかも知れないと思っていたので、それがちゃんと放送されたことは、この番組には、そのフェアネスはある。そこは評価する。

 だけども、もう一度最後に言うと、賢い視聴者が望むものは、一方的な展開じゃなく、収録通りの、盛りあがった熱いディベートだったのではないだろうか。

 ぼくへの書き込みのなかに、「青山さんが何も発言しないように放送されたので、太田総理の主張を容認したのかと思った」というのもあった。
 こうしたことも起きるのが、時間の制限のあるテレビだから、絶対に困るというのではない。やむを得ない場合もある。
 だけども、具体的な収録の様子からして、今回はそれがやむを得なかったとは、やはり考えにくい。





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