On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2019-03-17 04:05:17
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
Comments (8)

ことばの彫刻 (ほんのひとことだけ、書き足しました)

▼ゆうべというか、今夜というか、先のエントリーで「敬愛する国士の偉大な作曲家」と会食と書いたのは、ドラクエのすぎやまこういち先生です。
 お会いしたことだけは書いていいと思いますから、記しておきます。
 すぎやまこういち先生がどれほどに国を憂え、国を愛する日々を送っておられるかを、あらためて、みんなに知っていただきたいですね。
 すぎやま先生、そして奥さまとは、このように時々、お会いして、日本と安倍政権の現在とこれからをお話ししています。

▼どんな会合でも、その前に、急ぎの仕事は終わらせておくようにいつも懸命に努力するのですが、今夜は、月刊Hanadaの連載エッセイ「澄哲録片片」 ( ちょうてつろく・へんぺん ) の最終チェック、すなわち念念校ゲラのチェックが印刷の都合で夜8時を回ってしまったので、会食中に先生ご夫妻にお断りしてパソコンを起動してチェックすることになってしまいました。
 先生は作曲家、僭越な物言いながら、ものづくりは同じですから、とても快く分かってくださいました。

▼蛇足ながら、月刊誌でも、単行本でも、原稿を出版社に送ると、それが仮印刷されて、まずは初校ゲラが送られてきます。
 それに手を入れて、戻すと、その修正を反映して再校ゲラが送られてきます。ゲラとは仮印刷のことですね。
 書き手によっては、この再校ゲラのチェックで終わる人もいると編集者から聞いていますが、不肖ぼくはさらにチェックを重ねます。
 再校ゲラに再度の直しを入れて出版社に戻すと、念校ゲラが送られてきます。「念校ゲラ」、つまり念のために出るゲラというわけです。

▼ゲラを見るときは、さまざまな視点で、おのれが書いた原稿をチェックします。
 鳥瞰図をみるように、自分の原稿を突き放して遠くから全体を見てみるチェック。
 細部にこだわって、句読点から用語、表現ぶり、そしてテーマそのものまで、何もかもチェックします。
 同時に、月刊Hanadaの連載はノンフィクションですから、なによりファクト・事実の確認を、あらためて徹底的にやります。ネットの利用は最小限度にして、おのれが蓄積している資料にあたり、外部資料にあたり、必要があれば当事者や関係者に電話とEメールで再確認します。

 これらによって、ちょうど彫刻の細部にもう一度、彫刻刀を入れるように、自分の原稿に磨きをかけ、同時に、月刊誌の場合は行数が一定の範囲内にピタリと入るように削ったり、書き込んだりを繰り返します。
 文字数を一字づつ精密に数えて、スペースに収まるよう文章を練ることも多いです。

 そうやって初校ゲラの修正が終わり、出版社に戻すと、ふたたび仮印刷されて再校ゲラとなって、またこちらに戻ります。
 これを新しい眼でチェックすると、不思議なほど、修正すべき点が出てきます。
 ほんとうに再修正すべきかどうか、じっくりと考えつつ手を入れて、出版社に戻すと、念校ゲラとしてまた戻ります。
 この念校ゲラを、どこからどう見ても、もはや直すべき点がないなら、ここで作業は終わります。
 ところが、ここに至ってもなお、違う視点で見てみれば、ここを直すともっと良くなるというところが出てきます。
 その修正を実行して、出版社に戻すと、出てくるのが念念校ゲラですね。
 出版社は当然、こうした過程で印刷するときに、一定の時間が必要です。
 それを急がせたりはしません。

 今回の場合は、念念校ゲラがEメールの添付ファイルで送られてきたときには、会食が始まっていたわけです。

▼こうやってゲラ直しを重ねるのは、それなりに、たいへんではあるけれど、原稿そのものは書き上がっているわけですから、幸せと言えば幸せな段階です。

 原稿を書くとき、最初の最初は、漠然とイメージを遊ばせ、頭の奥で、テーマを深めていきます。
 いや、そうではなくて、そもそもどんなテーマにするか、それ自体を考えつつ、自由に行きつ戻りつして、思考を熟成していきます。
 これもまた、ゲラ直しの段階とは別な、ちょっとした幸福と言えなくもないですね。

▼ほかの職業的書き手が、どのようになさっているかは、まったく知りません。
 一度も考えたことがありません。
 ちいさい頃から文章を書いているせいもあるのか、他の人のノウハウには関心がないです。

 テーマがまだ熟 ( こな ) れていなくても、プロフェッショナルな書き手の宿命として、〆切がどんどん迫ってきますから、もう文字にしていきます。
 文字にすると、テーマの掘り下げの未熟な部分が、予想以上にはっきりしてきて、これも愉しいと云えば愉しいですね。
 曖昧な書き方をしているのは、何でも仕事になれば苦しいものですから、簡単に愉しいとはとても云えないのです。

▼ぼくの場合、最初から列車が走るようにどんどんと筆が進むことは、まず、ないですね。
 最初、そしてかなりの段階まで、毎度のように苦吟します。
 じりじりと這うように書いていることも、あります。

 しかし、そうしている間に突如、がんがんに筆が進みます。
 そうやって一気に書いた部分こそ、自分でいい気になっていますから、ゲラの段階では注意深く、独りよがりになっていないかを調べます。
 日記を書くのではなく、ひとさまに読んでいただくために書くのが、職業としての書き手ですから。

▼現在のぼくにとって、最大のリスクは、ぼくの原稿を直す編集者が実は居ないことです。
 直さないでくれと頼んだことは一度もありませぬ。
 しかし、どなたも直さないです。
 単純な書き間違いとか、そういう指摘はしてくれますが、文章やテーマへの直しは一切ありません。
 なぜかな。
 共同通信の記者時代には、最低でも5つの関門がありました。
 現在は関門がない、これは、とても大きなリスクだと常に自覚しています。
 だから、書くときも、書き上がってゲラ直しに入るときも、自分を突き放すことが肝心です。
 これは一方で、原稿を書くときに客観視する鍛錬にもなってはいるようです。

▼まぁ、こんな感じで今月の下旬に出る月刊Hanadaの「澄哲録片片」 ( ちょうてつろく・へんぺん ) は、みなさんの元へ届きます。
 苦楽をともにする編集者、校正マン、デザイナー、印刷スタッフのみなさまのために、特に月刊Hanadaは良心の塊のような編集者、沼ちゃんのためにも、よろしければ定期購読 ( ここ ) をお考えになってくださいませんか。 ( ちなみに、定期購読者が増えてもぼくの利益には何もなりません。月刊Hanadaのような志ある論壇誌がしっかり根付いてほしいと願うばかりです )

▼そして新刊の『不安ノ解体』 ( 予約は例えばここ ) も、このようにしてみなさんのところに届くのは、同じです。
 だけども、単行本と月刊誌とでは分量が違います。
 なにせ、『不安ノ解体』で申せば500ページ近いですから。
 公務が絶対最優先、そして週末は今、ほとんど地方からの応援要請に応えています。要請をすべて受けることはありませんが、それでも週末は基本的になくなってしまいます。
 それに例えば明日の、いや今日の独立講演会のようなほかの仕事もあれこれとあり、正直、『不安ノ解体』を世に問うまでの膨大な作業は、ちょっと大袈裟になるけど、気が遠くなる感じもありましたね。わはは。

 やっぱり大袈裟でした。気は遠くなりません。
 ぼくは生来は怠け者です。謙遜じゃないよ。だから、たいへんだっただけでした。ふひ。

 
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彫刻【哲】
2019-03-18 08:21:11
「ことばの彫刻」という表現で思い出したアニメ作品がありました。

「舟を編む」という作品で、主人公が口下手でコミュニケーションも苦手。
ですが、少しずつこつこつ積み上げていく真面目さ。
本を何冊も何冊も読み、部屋の中が本まみれになるくらいあちこちタワーを作り、
言葉を一つ一つ丁寧に考える個性と能力。

それらを持って、たまたま出会った上司に見いだされ、一冊の辞書を作るという作品です。


この二つに接して僕が思ったのは「本を創るというのは、大きな大きな海の中で、適切な言葉、表現を選んで舟を編み、出来上がったものを何度も何度も彫刻刀で彫っていく」ような作業なのだろうなぁと感じています。

件の作品でも、間違いや抜けがあってはいけないと何度も見直し、たまたま見つけた抜けでアルバイトを雇って全員で最後のチェックをやるという作業をしています。

登録語数が多いため徹夜したり、嫌になって泣き言を言ったり、それを励まして一緒に頑張っていく。
でも最後、すべての作業が終わると皆で抱き合って喜んでいました。

一冊の本が苦しみぬいて出来たというのはどのような感覚なのでしょうか。
長い長い記事が書きあがり納期を守れたというのはどういう感覚なのでしょうか。

僕には知ることができませんが、どうぞその苦しみも楽しんでしまいましょう。
楽しくないでしょうけれど(笑)

いつお読みになれるかわかりませんが、今週もよろしくお願いします。
国会での質問、楽しみにしています。

平成もあと約1ヶ月と半分。
いろいろ課題や問題はありますが共にがんばりましょう。

そういえば薬師寺みちよさんという無所属議員さんの質問がすごくわかりやすく、聞きやすかったです。相変わらず政府の答弁は抽象的でしたが……。
あのような質問の仕方、姿勢が増えてほしいと思った今日この頃でした。
硫黄島【田中】
2019-03-17 19:48:36
こんばんは。
3月17日の朝日新聞「天声人語」で、硫黄島、栗林中将のことが取り上げられています。

「ぼくらの死生観」を泣きながら読んだわたしには、この天声人語はいったい何を言いたいのか、わたしの読解力が足りないせいか、意味がわかりません。
ただ、何だか嫌な読後感が残りました。

今夜、休む前に「ぼくらの死生観」を読み直します。

「不安ノ解体」も予約しました、楽しみにお待ちしています。
韓国に竹島の損害賠償請求をすべきではありませんか?【なにわのおじさん】
2019-03-17 18:28:31
竹島は現在韓国に不法占拠されています。
これまでに日本の漁民の方が竹島で漁をしようとして、竹島に近づき
韓国の兵隊にかなりの人(44人が殺されています)
不法に抑留された人は3929人、
拿捕された漁船は328隻に上るといわれています。
国会ではなぜこれを追及しないのでしょうか?
でっち上げの慰安婦に国の税金を払い、そのうえ企業からもかなりの額を寄付させられているようですね。
こんなでっち上げ話に金を払わされて、何故日本人への補償はどうなっているのか?

こんな韓国に怒りがこみ上げてきます。
せめて、国会でこの事実を取り上げて韓国側へ請求する意志を見せるべきでは
ないでしょうか?
日本のマスコミはまず取り上げないでしょうが、これこそ日本の意志を
見せるべきではないでしょうか?
消費税増税を凍結!したい。【山岸】
2019-03-17 11:40:04
青山さん、いつもご苦労様です。
少し暗い話になりますが、ここから反転してほしいという思いで書きます。

去年まで内閣参与をされていた、藤井聡京大教授が個人所得のデータをネット番組でおっしゃっていました。曰く、日本人の平均個人所得のピークは97年の5%増税前で過去20年で100万円近く減少しているとのことでした。もちろん、8%増税の時も大幅に減少しています。個人消費に至っても8%増税前を回復していない中での10%増税はあり
えません。残念ながらこれは、愚かな野党が言及している「実質賃金」という架空な、間違ったデータではないように感じます。

ただ、失業率改善は事実です。某自民党議員によると、関東の出生率が改善したとの事で、アベノミクスによる成果だそうです。私も概ね事実であると考えます。しかし、仕事があれば良いというわけではありません。

私はいわゆる「若者」と呼ばれる世代です。先日、テレビで「若者の~離れ」という特集をやっていました。
「若者の車離れ」に始まって、「酒離れ」「恋愛離れ」と言った具合です。キャスターと呼ばれる人が最近の若者は積極性が足りない云々話していました。ただ、「最近の若者」から言わせてもらえば、単純にお金がないから行動出来ないだけです。食べていくのがやっととは言いませんが、余分なものを買うお金がありません。日本人も
「爆買い」がしたいです。

中国人が世界で「爆買い」をしているかと思えば、米国ではトランポノミクス(金融の緩和状態を維持しつつ、大型公共投資+減税)により、好景気です。去年の商戦での売り上げが過去最多となったとの事です。つまり、個人消費が過去最多です。株価も史上最高値を記録しました。

我が国では個人消費が過去最多というのはいつごろだったでしょうか。少なくとも、消費税8%の今ではありません。株価に至っては25年以上前が史上最高値で、未だにその水準を回復していません。残念ながら、主要国でこのような状況なのは日本だけです。そのような状況での増税はありえません。ここから反転するためにまずは、増税の凍結が絶対必要だと思います。
月刊Hanada定期講読。【大阪府 在住】
2019-03-17 09:46:55
青山さん、
筋トレでますますパワーアップですね!
明日の虎ノ門ニュースは残念(夜にならないかなぁ‥)
ですが、国会の方よろしくお願いいたします。

って、いつも青山さんばかりにお願いして
本当にすみません‥

この度、新聞の購読をやめて、
月刊Hanadaの定期講読を申し込みました。

いつもありがとうございます。
福島から独立講演会参加します!【河和ただし】
2019-03-17 09:26:53
おはようございます。初めてコメントさせていただきます。青山先生、いつ休んでいるんでしょうか!?ご自愛くださいと言いつつも、今日の講演会楽しみにしております。先日の虎ノ門での福島原発のお話、正直泣きました。そんなことがあったのかと。時の政権に対しては腸も煮えくり返る思いです。東京に1泊して月曜日も!と思ったら、青山先生ではなかったのですね。残念。でも、おじきの須田さん、ケントさんとのことで、虎ノ門観覧に行きます(実は出演者は全員好きなので・笑)
勇者、青山議員。。。。【林よしえ】
2019-03-17 08:26:33
あの選挙カー、思い出します。。。

わぁ~、青山さぁ~ん、ドラクエ!!!
トキメキました。。。

すぎやまこういち先生、大好き!!
今夏、公開予定のドラクエアニメも、
絶対!観ます。。。
芭蕉と蕪村【元大学院生(コメント公開可)】
2019-03-17 05:45:06
昨日のon the roadも楽しく拝聴いたしました。
趣味で下手な俳句をよみますので、芭蕉と蕪村の対比のお話が興味深かったです。
俳文の芭蕉と、俳画の蕪村の本質をついたお話だと感じました。
青山さんの今月の彫刻も楽しみです。

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