▼武漢熱クライシスの発生で、もっとも大きく動揺しているのは、もちろん発生源である中国です。
　しかし北朝鮮をめぐる情報を連日、入手して精査していると、北朝鮮の異変は中国を上回るとも思えます。
　ある意味、当然ですね。
　大きな生き物に依存して生きていた生き物があるとして ( 実際、海洋を中心に生物世界には珍しくありません ) 、その大きなものがおかしくなれば、それに依存していた生き物は直ちに、生きるか死ぬかの瀬戸際に追い詰められます。

▼先日の予算委員会での質問五問のうち、第一の質問の冒頭に、「わたしたちの多くが忘れていて何のケアも無い同胞、はらからがいらっしゃる」と述べたのは、こうしたことが背景です。
　世界の在外邦人は、必要に応じて領事メールなどを受け取り、武漢熱についても情報の提供があります。
　しかし現状で充分とは、在外邦人のみなさんにとって、とても言えないでしょう。
　世界の各地への拡大ぶりを見ると、さらなるケアが必須です。

　一方で、北朝鮮に拉致されている被害者、拉致されている疑いのある特定失踪者、そして別の理由で北朝鮮にいらっしゃる日本国民だけが、日本からいかなる救いの手も伸びていません。

▼こうしたなか、北朝鮮は「一人の感染者もいない」と発表していますが、この極端な発表ぶりが逆に、深刻な事態を印象づけています。
　予算委員会で触れた事例に加えて、金正恩委員長が突如、政権の重要な支えの人物を解任したり、異常な情況が続いています。
　いや、続いていると言うより、拡大し深化しています。

　日本は動かねばなりません。
　予算委員会で「北朝鮮に医療協力を提起し、医療チームの派遣が実現したなら、同胞のケアも行いたいと要請する」と提案する直前、すなわち予算委員会が始まる前、答弁者となる閣僚席に近寄り、ご挨拶を致しました。
　その際、閣僚は問わず語りに「医療チームの派遣、素晴らしい提案です」と仰いました。
　そのあとの答弁は、公式見解となりましたが、あえて「検討だけは仰ってくださいませんか」と再質問すると、答弁席に立たれて、ぼくの眼の奥までじっと覗き込まれ、「できることはすべてやる、そこです」という趣旨を力を込めて答弁されました。
　ぼくは政府内で本気で検討されることを、身体の奥深くまで実感しました。
　指導力、実行力のある閣僚ですから。

▼さまざまな厳しい制限のあるなかを、志を持って傍聴席いっぱいに集うてくださった主権者のみなさんは、ぼくが予算委員会の開会前にすべての答弁予定閣僚にひとりひとり挨拶している様子を目撃されたと思います。
　あれは単なる挨拶ではありませんね。
　いわゆる与党質問にとどまることに甘んじない、与野党の別なく政府から、すべての日本国民にとってすこしでも意義のある前進、前進のある答弁を引き出すための、ささやかな行動です。

　ほんらいの予算委員会、国会審議は、たとえばこうしたあり方ではないかと不肖ながら考えることを、非力そのものながら実践しています。
　だから、前述の質問のとき、与野党を超える一致点として医療チームの派遣を考えてもらえないかという趣旨も、今回の非常に短かった質問時間のなかでも、申しました。
　ふだん野次を飛ばす議員も、じっと聴いておられる気配を背中にありありと感じました。

　あとに続いてくださる方々がいるとして、そのみなさまにも、ひとつの例をお示しする気持ちです。

▼さぁ、今日も終日、その予算委員会です。
　まもなく国会へ向け出発します。
　わが人生は粉々に、予想通りに壊れました。しかし、わたし自身は逆に、鋼 ( はがね ) となりました。