On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2023-01-24 03:44:28
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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第211通常国会の初日から、大噴火しました  怒りの日になってしまいました  それでも必要なのは忍耐と勇気です



▼庶民が殺され続けるウクライナで、日本の隣国ロシアの軍隊が、稼働中の原子力発電所を砲撃し続けるという、これまで想定されてこなかった未曾有の危機がいまも進行しています。
 そのさなか、岸田政権は「環境のためにも火力発電に頼り過ぎず、原子力を最大活用する」という新しい方針を日本国民と世界に宣言しました。

 わたしは昨夏の参院選の遊説で、こう主張していました。
「岸田政権は、電気自動車が万能であるかのように言いつつ、電気を節約 ( 節電 ) したらポイントをあげるという、おかしな矛盾の政策を打ち出しています。自由民主党の公認候補だからこそ、この政策に反対します。エネルギーの自律のためにも、海洋の自前資源を実用化し、それと同時に、福島原子力災害をチェルノブイリ ( チョルノーブィリ ) 事故とみずから同一視した日本政府の誤りを直視して、原子力発電の安全を確保し稼働させるべきです」

▼選挙後にずっと、政権に働きかけを続けて、半年後に政策として実現したのです。

 政策として決めた以上は、政府は直ちに、原子力発電所における核セキュリティ ( セーフティだけでは無くセキュリティ ) を根本的に強化せねばなりません。
 しかし、例によって動きが鈍い。
 巨大な日本の官僚機構はじっと様子をうかがって、とりあえず、何もしない気配だし、与党の国会議員は、政権が一体、どんな危機のなかで何を宣言したのか、その自覚がまったく足りません。

▼それであるなら、不肖わたしのやるべきことは、おのずから決まります。
 国民の負託だけを唯一の支えとし、何もかもみずからの意志で背負い、莫大な費用であってもすべて自弁することによって自由と自律を確保し、臨時国会と通常国会のあいだの貴重な時間を使って、世界を訪ね歩く以外にありません。

 世界が同時に、同じ危機に直面しているのです。
 だから民主主義国家はみな、おたがいが一体どうしているのか、それぞれどんな工夫があるのか、知りたいのです。
 国際原子力機関 ( IAEA ) を率いる、勇敢なグロッシー事務局長も、それを知りたいのです。
 日本政府に必要なのも、諸国の機密に属する水面下の努力、それが具体的には何なのかという情報です。

 わたしは民間の専門家の時代から25年のあいだ、このPP ( Physical Protection / 核物質防護 ) の分野でも、他のいくつかの分野と同様に、現場に生き、専門的な知見を蓄積してきました。
 世界には、共通語としての英語というコミュニケーション手段もあります。
 諸国の専門家・担当官、それにIAEAのグロッシー事務局長と直に会って、眼をみて、なぜここに来たかを魂を込めて通訳など挟まず直に話し、それによって信頼関係をその場で構築し、深い情報と意見を交換する。
 そして長い旅の最後には、武装攻撃にもリアルに備えているアメリカの原発に入り、軍出身の担当者と議論しながら現場を歩く。
 要は・・・こういうことです。

 やるべきことをやっただけ、わたしのささやかな生き方としては、やって当たり前のことを致したのみです。

▼そこから、やっと帰国したのが、おととい1月22日・日曜の夜でした。
 23日月曜の夜明けを迎えて、自宅の日本の風呂にじっくり入り、これまでの17日間でどれほど身体が冷え切っていたか、そして日本のお湯のおかげでそこから回復してゆくことをありがたく実感しつつ、国会議事堂に向かいました。

▼第211通常国会の開幕です。
 2度の本会議や、特別委員会の開会という、公式日程をまずは嘘なく、務めます。
 なぜ、「嘘なく」と書いたか。
 著名な野党議員のなかには、本会議に際して、最初と最後、それに採決の時だけ着席して、公式記録には何も問題がないようにしておき、中抜き、まるで当然かのように退席して何をしてらっしゃるのか分からない人も居るのです。
 この人だけではありません。
 常習の野党議員は、いつも同じ人で何人も居ます。

▼しかし、このエントリーのタイトルに記した「大噴火」、「怒りの日」は、このことではないのです。
 こうした野党議員も、主権者に選ばれて、国会議事堂に来ています。
 主権者が、みずからの一票がどのように使われているか、検証もなさるでしょう。それが本筋です。

▼本会議や委員会以外に、議員会館の青山繁晴事務所にて、行政官・官僚との議論という任務があります。

▽まず、午前中に議論したのが、「サイドローディング」問題です。
 これは、岸田内閣が河野太郎大臣の主導のもと、スマホにサイドローディングを認める、すなわちソフトウエアをこれまでの入手経路以外から入手できるようにしようとしていることです。
 中国がこれを悪用する恐れがあるため、担当官に来てもらったのですが、まるで「良いことずくめで、リスクなど存在しない」かのように説明し、何度繰り返し注意してもその説明をやめず、ついに大爆発しました。

 そして「中国をはじめとするリスクもちゃんと明示する説明を用意して、やり直しなさい」と怒りを込めて告げ、退場して出直すことを強く求めました。
 国民の負託によって議論をしていることそのものを軽視する、民主主義とは言えないその姿勢、行動にはまことに許しがたいものがあります。

▽これだけでも心身を消耗する、ストレスフルなことでしたが、これでまったく終わりませんでした。

▽午後には、同じく議員会館の青山繁晴事務所にて、「GX法案」なるものをめぐって、議論です。
 これは国会 ( 参議院 ) の経済産業委員会の理事、自由民主党の経済産業部会の部会長代理としての、任務です。

 みなさんはこの、GX、グリーン・トランスフォーメーションなるものを、一体、どう思いますか ?
 DX、デジタル・トランスフォーメーションと並んで、まるで今の内政の2本柱のように現政権は扱っています。
 しかし英語漬けだった17日間の翌日、日本語という国語のある祖国に居て、この呆れたカタカナ政策の本質的な志の低さが、はっきり見えました。

 誤魔化しです。
 前述の「原子力の最大活用」も、グリーンだからいい、GXだから良いといわんばかりに、原子力基本法や、セーフティにもセキュリティにも大切な原子炉規制法や、その改正は全部、GX法案になるものに、入れ込んであるのです。
 再生可能エネルギーの大促進などと並べて、いや、一緒くたにしています。
 つまり、原子力が見えにくくなっています。

▽このGX法案をめぐる議論のために現れた行政官・官僚は、だらだらと焦点のない説明をします。
 これに対して何度も繰り返し、「資料を読めば分かることを説明して、話が終わったことにするのではなく、本質的な議論に絞ってやりましょう」と求めても、その都度、この行政官は「分かりました」と答えつつ、やることはまったく変えません。
 ほとんど病的にすら、見えました。
 もう、それしかできなくなっているのです。

 この人も学生時代にはきっと、国家と国民のためになりたいと考えて、この官庁に入ってきたはずです。
 中央官庁で、立派な役職に昇進し、しかし一体その人間の内部で何が起きているのか、その一種の頽廃 ( たいはい ) がありありと伝わりました。

 そこで、その場でこゝろを決めて、再び大爆発しました。
 感情の激発ではありませぬ。安倍総理や岸田総理に対するのと同じく、諫言 ( かんげん ) のためです。
 行政官は、ただ単にわたしが怒ったと思っているでしょうが、違います。
 あなたのためにこそ、おのれを励まして、爆発したのです。

▽その次に、このGX法案について、別角度から、すなわち国会審議の全体像として、別の行政官が説明に来られました。
 ふだん信頼しているん人であるだけに、このグリーン・トランスフォーメーションなる奇怪な名の政策・法案が当然かのように話すことに対し、みたび大爆発しました。

 こう申しました。
「あなたがふるさとに帰ったとき、おばあさま、おじいさまに、グリーン・トランスフォーメーションをやるんですと説明しますか。あなたの故郷は、原発の立地県ではないですか。これこれの理由と志で、原子力をちゃんとやり直しますと説明したいでしょう」
 こう聞くと、「そうです」と苦笑しつつ、頷きます。

「それなら、唯々諾々と、内閣官房が降ろしてくることに従うのではなく、担当官庁の誇りを持って言うべきをなぜ言わない。わたしが世界を自費で回って、原子力の新しい安全をつくろうとしてきたこともご存じでしょう。あなた自身も、これまで努力してきたのでしょう。国民にまともに話せないで、いったい何のために、やってきたのですか」

 烈しく詰め寄って、こう申しました。
 それから時間が経ち、翌日の朝が近づいている今なお、この行政官たちのためにも怒った、何より国民の代理人として怒ったという気持ちは真実です。

▼冒頭の写真は、3年に一度の記念写真です。
 参議院の選挙は、3年に一度あります。 ( 任期6年の議員の半数を、3年ごとに改選する )
 その選挙が挙行されて、最初の通常国会の初日に、こうやって写真を撮り、国会内に掲示されます。

 それはいいのですが、毎回、もの凄く時間が掛かります。
 公務の最中の国会議員の時間が、どんどん消費されます。
 なぜか。
 列を揃えることに、係のかたがたが熱心に、指示なさるからです。

 係のかたがたは、上からの指示で、真面目に、熱心にやっておられます。
 何も悪くありません。それどころか、職務に忠実な立派な仕事ぶりです。

 だから、どれほど時間が掛かっても、これまでは黙って待っていました。
 しかし今日は、おのれを励まして「早くしましょう。乱れがあってもいいではないですか」と声を出しました。
 たぶん、ほかの議員からは『青山さん、今日はどうしたんだ』と思われたでしょう。

 日本はいったい何をやっているのか。
 一糸乱れぬ列を、国会議員に作らせることが、第一なのか。
 少々乱れがあった方がむしろ、自律した意思を持つはずの国会議員の写真にはふさわしいのではないのか。
 国民に負託されているのは、「一糸乱れず、同じ方を向く」ことなのか。
 まさか。
 自律した意思なく、ほんとうの仕事など、できませぬ。

 わたしが何度、声を出しても、延々とシャッターはおりません。
 その理由は・・・後ろの扉が開いているから、ということでした。
 扉が開いていたり、人の出入りがあって、何がいけないのでしょうか。

 あくまで記念写真の撮影というだけです。
 いちいち逆らわずに、じっと待っていれば良いと、おおくのひとが思うでしょう。ぼくも、そう思います。

 しかしきのうは、こう思いました。
・・・いつも形にとらわれ、ひとと同じ横並びの行動だけを国会議員にも、学校の生徒にも、会社の社員にも求める。
 たとえばスキーでも、全員がいつでもどこでも同じ滑りをすることを求めて教えるから、山も斜面も雪質も旗門の設定もどんどん変化するアルペンの試合では、ワールドカップに行った日本選手がことごとく、ろくに完走もできない。強化費を一般のスキーヤーからもいただいて渡欧、渡米しているのに、勝つどころかゴールすらできない。
 いつも惨めな途中棄権に終わって、選手は個性を発揮できないまま、うつむく。

 きのうの記念撮影の様子も、ことの本質に近づこうとしない日本の病のひとつの表れと考えました。
 ここは、国会なのです。
 記念撮影ひとつのあり方も、国会のあり方に通じます。議員が、細かいことを気にせずバラバラに見えて、しっかり連帯感がある。
 それが国会議員の本来の記念撮影ではないでしょうか。
 そこで、あえて声を出したのでした。

 そして、まったく無駄に終わりました。
 わたしの人格が疑われただけです。

 それでも、どんなに損だけをしても、日本を中から変えることをやめません。
 そして報われずに、死にます。
 覚悟を決めずに、なんの日本男子か。






 
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