On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2006-09-04 17:02:21

寝言





▼独立総合研究所(独研)の若き秘書室長が、一生懸命に工夫して日程を調整してくれたおかげで、きょう9月4日の月曜は、どこへも動かないで、原稿を書いている。

 あまりに動きの激しい日々だから、山のような原稿と格闘していても、飛行機に乗ったり車に揺られたりの移動がないだけで、いくらかは、ホッとする。


▼といっても、仕上げ段階に入っているノンフィクション新刊本の執筆には、なかなかたどり着けない。
 まず、独研の社業は動いているから、いろいろな連絡に電話や電子メールでリアルタイムで応えなきゃいけない。

 それから、締め切りを過ぎている「講演録のゲラ直し」2本をやらねばならないし、そのあとは、独研から配信している会員制レポート「東京コンフィデンシャル・レポート」の執筆だ。
 それが終わってようやく、新刊本の原稿に戻れるから、結局はいつもと同じく夜を徹しての執筆になるのだけど、それでも、執筆開始時間がまだ「深夜」の段階で、いつもの「未明」あるいは「明け方近く」よりは、ましだ。


▼講演録のゲラ直しは、ちょっと苦手な仕事で時間がかかってしまう。

 しかし、ぼく本人の了解や確認なしに、講演内容をネット上にアップしてしまう講演主催者も多いから、それよりはずっといい。
 講演内容の公開はかまわないけど、筆記したひとや、講演要旨をまとめたひとが誤解したままネット上にアップされることも珍しくない。
 だから、きちんとゲラを送ってくださった主催者には、きちんと全文をチェックし、分かりやすく修正して、お返ししたい。

 「東京コンフィデンシャル・レポート」は、独研の柱の業務のひとつだし、なによりも会員が配信を待っていてくださることを考えると、いつも最優先に書きたい気持ちがある。
 取材はもう、何本分も終わっているから、こうしたときに文章にしたい。


▼きょうの午後2時ごろだったか、あまりの疲労に、机の脇のちいさなベッドに横になっていると、すこし眠り込み、悪夢に苦しんで、「なんて愚かなんだ」と叫び、その叫び声で眼が醒めた。
 眼は醒めたのだけど、深い、際限もなく深い、疲労と、どっと噴き出た体調不良で、身体が動かない。
 真っ黒な泥のなかから這い出るように、ようやくベッドから降りて、ふたたび机に向かう。

 それにしても、短い悪夢のなかで、ある身近な人の所業に苦しみ抜いて、とうとう夢のなかから転がり落ちて、実際に口に出して「なんて愚かなんだ」と叫んでしまった。

 夢のなかでは、その身近な人に叫んだのだけど、眼が醒めてからは、おのれ自身に叫んだように感じている。
 なんだか世間からは順調にみえているのかも知れないけど、実際のぼくの感覚は、英語で言うSTRUGGLE、そのものだ。
 STRUGGLE、泥のなかを這っていくように、もがきながら戦うことを意味する。意味するだけじゃなく、語尾のGGLEあたりに、すごく生々しい語感がある。

 きょうのように、ひとりになると、いつも、どこでも、ぼくは自分の弱さと愚かさに向き合っている。



 写真は、石垣島の沖合の激しいスコールを、携帯電話で撮りました。

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