2010-11-08 01:33:56
苦渋 その2 (字数制限があり、2つに分けています。その1からどうぞ)
▼繁子を膝に載せたまま、仕事をしていると、「サンデーモーニング」の放送がある。
収録2時間半、放送は30秒ほどだったかな?
しかし収録に応じた以上は、これも予想の範囲内だ。
この日曜、今度はテレビ朝日「ワイド・スクランブル」から連絡。月曜の朝に、電話でコメント収録に応じることになった。
午後3時すぎ、フジテレビ「知りたがり」のディレクターら3人が仕事部屋のあるマンションにお見えになり、午後4時半までたっぷり1時間半、議論する。
「朝ズバッ」からは、スタジオ参加(出演)は今回は見送るとの連絡。場合によっては、同じTBSの「サンデーモーニング」で収録したコメントを使うとのこと。どーぞ。覚悟を決めて収録に応じたのだから、どのようにでも、どーぞ。
夜、フジテレビ「知りたがり」のスタッフから、電話で確認取材。
いやはや、いささか疲れました。ぼくはタレントじゃなく、評論家でもなく、テレビコメンテーターで食っているのでも、ありませぬ。
安全保障の実務家であり、ひとりの物書きでもある。
前者の仕事はかろうじて遂行しているけど、後者がこれでは遂行できない。
ちなみに独研にとっても、この現状は問題がある。
つい最近、ベテランで良心派の、人柄もよい新聞記者に「青山さんは、テレビに出てるし、お金がいっぱい入るでしょう」と言われて、ははぁ、世間はやっぱりそう見るのかな、と思った。
テレビであれ講演であれ、その収入はぼくの懐には1円も入らず、すべて独研の収入になる。独研は、志を込めて遂行している調査・研究プロジェクトの総収支が創立以来ずっと赤字だから、その赤字をこれで補う。
そのうえ、テレビはいわゆる「文化人枠」であって、スタジオ生出演でも地方なら例外なく赤字、東京でもいわゆる「些少」、ただし謙遜語の「些少」ではなく、ホントに些少、ましてやコメント収録なら、テレビ界以外のひとが聞いたら誰しも絶句するぐらいの額だ。
これは海外の常識とも違うらしく、一度、アメリカ国務省の幹部に聞かれるまま、金額をありのままに言ったら、何度も聞き返された上に、最後は大笑いされてしまった。
だから独研としては実は、ぼくにほかの仕事をしてもらった方が、はるかに独研の収支に貢献する。
ぼくも1日は24時間しかなく、1年は365日しかないから、誰にも媚びず独立不羈(ふき)でいられるよう自分で食い扶持を稼ぐために会社組織である独研は、ぼくを本来は有効に使いたい。
ただ、苦渋としては、それよりも、とにかく時間、命ある時間、二度と返ってくることはない時間という一番かけがえのないものを、周りからほとんど好き勝手に奪われることにある。
それはやむを得ない。周りは周りでご自分の責務を果たすのに必死であり、その結果、ぼくの時間を奪うことにまで気を遣っている場合ではないだろう。
▼たった今の苦渋は、それだけではない。
ほんとうの苦渋は、不公正な手段で真実を世に問うほかないと信じた海の保安官の苦悩が、不肖ながらこのぼくと共にあることだ。
尖閣諸島のビデオをネットにアップした者は誰か、それがまだ特定されない以上は、その真意はまだ分からない。
しかしアップした者であってもなくても、誠実な保安官ほど苦しんでいる。
尖閣の海だけじゃない。竹島の海、北方領土の海、いずれの現場でも、同じ現場に入ると、保安官たちの引き裂かれた苦しみを、非力なぼくも共にする。
現場にいない時も、東京にいても、その苦渋の共感は胸の奥にある。
一般的なテレビ番組では、なかなかそれを伝えられない。
しかし、ほんの欠片(かけら)でも、ふつうの生活者に伝えられるかもしれないのなら、自分が疲れるからといって、膨大な時間を取られるからといって、避けるべきじゃない。嫌がるべきじゃない。
だけども、失われた時間を取り戻すには、睡眠を削るというか、なくす、それしかない。
それでは、せっかく人間ドックに入って、躯づくりをすると決心した意味が失われる。
この土曜にようやく診察が実現した声帯ドクターも、「食べてすぐ寝るのも、声帯にたいへん良くありません」とおっしゃっていた。
しかし食べて眠くなった勢いで、ぐっと深く、短く仮眠する、それ以外にない生活をしている。
テレビ局だけではなく、いわば「仕事の側」が、ぼくの躯をほんとうの意味で考えてくれることは、まったくない。
独研の秘書室すら、ぼくを案じながらも、無茶な日程だってどんどん入れるほかない。
そして睡眠を削りに削ってなお、特に執筆時間が失われるのは、回復できない。
ぼくは最後には、ひとりの物書きであることが原点だし、それが根幹だ。ものを愉しんで書く時間がなくなれば、青山繁晴ではなくなる。
まぁ、たとえば風邪を引いていても気づかないということが、どうにかぼくを支えているのでしょう。
ひとの危機管理にささやかに寄与するのが仕事で、おのれの危機管理はしない。
それで実は、どうにか持っているらしい。
ふひ、五連発。
よければ、みなさんも、どうぞ。誰しも生きるのはたいへんだから。ちいさく一緒に、ふひぃ。
収録2時間半、放送は30秒ほどだったかな?
しかし収録に応じた以上は、これも予想の範囲内だ。
この日曜、今度はテレビ朝日「ワイド・スクランブル」から連絡。月曜の朝に、電話でコメント収録に応じることになった。
午後3時すぎ、フジテレビ「知りたがり」のディレクターら3人が仕事部屋のあるマンションにお見えになり、午後4時半までたっぷり1時間半、議論する。
「朝ズバッ」からは、スタジオ参加(出演)は今回は見送るとの連絡。場合によっては、同じTBSの「サンデーモーニング」で収録したコメントを使うとのこと。どーぞ。覚悟を決めて収録に応じたのだから、どのようにでも、どーぞ。
夜、フジテレビ「知りたがり」のスタッフから、電話で確認取材。
いやはや、いささか疲れました。ぼくはタレントじゃなく、評論家でもなく、テレビコメンテーターで食っているのでも、ありませぬ。
安全保障の実務家であり、ひとりの物書きでもある。
前者の仕事はかろうじて遂行しているけど、後者がこれでは遂行できない。
ちなみに独研にとっても、この現状は問題がある。
つい最近、ベテランで良心派の、人柄もよい新聞記者に「青山さんは、テレビに出てるし、お金がいっぱい入るでしょう」と言われて、ははぁ、世間はやっぱりそう見るのかな、と思った。
テレビであれ講演であれ、その収入はぼくの懐には1円も入らず、すべて独研の収入になる。独研は、志を込めて遂行している調査・研究プロジェクトの総収支が創立以来ずっと赤字だから、その赤字をこれで補う。
そのうえ、テレビはいわゆる「文化人枠」であって、スタジオ生出演でも地方なら例外なく赤字、東京でもいわゆる「些少」、ただし謙遜語の「些少」ではなく、ホントに些少、ましてやコメント収録なら、テレビ界以外のひとが聞いたら誰しも絶句するぐらいの額だ。
これは海外の常識とも違うらしく、一度、アメリカ国務省の幹部に聞かれるまま、金額をありのままに言ったら、何度も聞き返された上に、最後は大笑いされてしまった。
だから独研としては実は、ぼくにほかの仕事をしてもらった方が、はるかに独研の収支に貢献する。
ぼくも1日は24時間しかなく、1年は365日しかないから、誰にも媚びず独立不羈(ふき)でいられるよう自分で食い扶持を稼ぐために会社組織である独研は、ぼくを本来は有効に使いたい。
ただ、苦渋としては、それよりも、とにかく時間、命ある時間、二度と返ってくることはない時間という一番かけがえのないものを、周りからほとんど好き勝手に奪われることにある。
それはやむを得ない。周りは周りでご自分の責務を果たすのに必死であり、その結果、ぼくの時間を奪うことにまで気を遣っている場合ではないだろう。
▼たった今の苦渋は、それだけではない。
ほんとうの苦渋は、不公正な手段で真実を世に問うほかないと信じた海の保安官の苦悩が、不肖ながらこのぼくと共にあることだ。
尖閣諸島のビデオをネットにアップした者は誰か、それがまだ特定されない以上は、その真意はまだ分からない。
しかしアップした者であってもなくても、誠実な保安官ほど苦しんでいる。
尖閣の海だけじゃない。竹島の海、北方領土の海、いずれの現場でも、同じ現場に入ると、保安官たちの引き裂かれた苦しみを、非力なぼくも共にする。
現場にいない時も、東京にいても、その苦渋の共感は胸の奥にある。
一般的なテレビ番組では、なかなかそれを伝えられない。
しかし、ほんの欠片(かけら)でも、ふつうの生活者に伝えられるかもしれないのなら、自分が疲れるからといって、膨大な時間を取られるからといって、避けるべきじゃない。嫌がるべきじゃない。
だけども、失われた時間を取り戻すには、睡眠を削るというか、なくす、それしかない。
それでは、せっかく人間ドックに入って、躯づくりをすると決心した意味が失われる。
この土曜にようやく診察が実現した声帯ドクターも、「食べてすぐ寝るのも、声帯にたいへん良くありません」とおっしゃっていた。
しかし食べて眠くなった勢いで、ぐっと深く、短く仮眠する、それ以外にない生活をしている。
テレビ局だけではなく、いわば「仕事の側」が、ぼくの躯をほんとうの意味で考えてくれることは、まったくない。
独研の秘書室すら、ぼくを案じながらも、無茶な日程だってどんどん入れるほかない。
そして睡眠を削りに削ってなお、特に執筆時間が失われるのは、回復できない。
ぼくは最後には、ひとりの物書きであることが原点だし、それが根幹だ。ものを愉しんで書く時間がなくなれば、青山繁晴ではなくなる。
まぁ、たとえば風邪を引いていても気づかないということが、どうにかぼくを支えているのでしょう。
ひとの危機管理にささやかに寄与するのが仕事で、おのれの危機管理はしない。
それで実は、どうにか持っているらしい。
ふひ、五連発。
よければ、みなさんも、どうぞ。誰しも生きるのはたいへんだから。ちいさく一緒に、ふひぃ。
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