On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2021-02-13 06:42:03
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
Comments (0)

【推敲しました】 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長人事をめぐって不肖ぼくがほんとうに考えていること

 船乗りになりたいのなら、それにふさわしい心身の力をみずから蓄えていけるかどうかがすべてであり、男性なのか女性なのか、まったく関係が無い。
 それは、たとえば画家になりたくても、宇宙飛行士になりたくても、すべて同じことですね。
 ぼくが23歳か24歳の頃、横川千春という当時の有名人、新聞やテレビに「日本女性で初めて大型船の船長を目指す女子学生」という扱いで良く出ていた女性に、たまたま初めて会ったときのぼくの、ありのままの気持ちでした。

「男の子は背筋を伸ばしていなさい」と厳しく育てる母のもとで育ちました。
 その幼児教育の結果というよりは、たぶんもともとの性格だろうと思いますが、おのれを客観視して申せば、ぼくは男っぽい性格です。または父性的な性格です。
 しかし、それと上記の考えはまったく矛盾がありませぬ。
「女の子はこうであれ」という考えを持ったことがありません。一度しか生きられないのだから、なりたいものになるは当たり前じゃないですか。

 そして、その母と父に紹介するために生家に連れて帰ったとき、母も父も「女だてらに船乗りになる人を選ばなくても」という考えや言葉はまるで無く、前向きな女性であることに好意を持ってくれました。
 古い家の、正式な玄関の間で、父はにこにことネクタイを締めて、迎えてくれました。
 業界では「鬼社長の青山さん」として知られていたそうです。
 大きな獅子がゆったりと横を向いて座っている、伝来の屏風のまえで、父はほんとうに穏やかでした。
 あとで聞くと、当時の横川千春さんは「青山くんのお父さんは、家の中でも、いつもネクタイをしているの ? 」と内心で、ちょっとびっくりしたそうです。
 いえいえ、家の奥での父は、いつもパジャマでしたよ。

 ぼくは末っ子ですから家督を継ぐことがありません。
 そして、いずれ遺産相続も放棄して兄や姉に譲ることを自分で勝手に決めていました。
 ちいさい頃から母に「おまえだけは、一人で生きていくんや」と育てられ、おかげさまで自立する心を持ち、気の強い男子に育ちました。
 父はなにも言わず、母の家庭教育をゆったりと見ているだけでしたが、すべてを知っていて、だからこそ、その末っ子が連れて帰ってきた女性を、温かく、そして敬意を持って迎えてくれたのでした。

 その後、青山千春となり、共に育児をして、そこから配偶者が海に関わる博士号を取ろうとしたとき、当時の大学をはじめ日本社会から「せっかく女が船を降りてくれたのに、もう戻るな。子育てをしていなさい」という非常に強い圧力に配偶者が直面して、ぼくは大いに呆れ、呆れるだけではなく即、全面支援して、徹底的に戦いました。
 理念とか、理論とかを持ち出す必要もまるで感じませんでした。
 まったく当たり前のことじゃないですか。
 まだ若くて、何者でもなかったぼくですが、たとえば大学の学長室にも乗り込んで直談判を致しました。

 そのときのぼくと、今回の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の問題について水面下交渉をささやかに致すぼくと、寸分、変わりません。
 東京オリンピック・パラリンピックを清潔に、前へ進めるために適任のひとが居ます。
 国会議員となってから初めて、その方と知り合いました。その方と向かい合うと、地位に驕 ( おご ) らず、徹底的に謙虚で、人の話を公平によく聞き、スポーツに見識があり、まことに僭越な物言いながら、まさしく適材だと考えます。
 これがすべてです。
 そして、たまたま女性です。

 日本は天照大御神、卑弥呼が開いた邦です。清少納言や紫式部が文化の重要な根っこのひとつをつくった邦です。
 日本が男女差別の国 ? なにを言ってらっしゃる海外の方。ぼくは世界を回って、西欧社会を筆頭に奥深い性別への拘 ( こだわ ) りをたくさん知っていますぞ。
 日の本は、もともと女子と共に建国し、困難を切り拓いてきた歴史です。
 そこへ欧米列強の風潮を短兵急に導入したために、上述のように「女性は船乗りになろうとしちゃいけない」などという世にも狭量な、父性を喪った圧力をかけてきたりするのです。
 アジアの一員、日本に対する根深い偏見をむしろこの機会に打ち破るためのメッセージにもなる、良き女子の人材が、すぐそこに、いらっしゃいます。
 その人材を、新しい組織委員会会長に起用していただけませんか。

 これが現在のぼくの、何の権限も無い、ただ人との信頼関係だけに基づいて、国益と国民とほんらいのオリンピック運動のために動いている、水面下交渉です。

 天はわたしたちに女と男、男と女を与えてくださった。そのことに、いつも深く感謝しています。





 
  • 前の記事へ
  • 記事の一覧へ
  • 次の記事へ
  • ページのトップへ

 

コメントは原則非公開です。それをご理解のうえ、投稿してください

名前
タイトル
メールアドレス
コメント
認証入力
画像認証 CAPTCHA Image 画像変更

※入力欄はすべて必須です。
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
※文字化け等の原因になりますので、顔文字の利用はお控えください。

もう一度、コメントがすべて「原則非公開」であることを確認され、投稿ボタンを押してください。

  • ページのトップへ