On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2023-03-09 23:03:25
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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【推敲し、追記しました】  これが、日本の自前資源のうち、狭義の鉱物資源です ( メタンハイドレートは凍った天然ガスですから広義の鉱物資源です )



▼みなさん、お待たせしました。
 今日も早朝からずっと・・・すみません、こんな言い方で・・・凄まじい日程なので、ブログに記すのがこんなに遅くなりました。
 WBCをご覧になりながら、待ってくださっていたかたも、いらっしゃるかなと思います。よかったですね、日本が無事、初戦を勝利で飾って。
 うれしく思い、ほっとしてもいます。
 これから続く戦い、肩の力を抜いて、すべて打ち克ってほしいです。

▼ではまず、冒頭の1枚目の写真です。
 これは、このエントリーでお見せした、熱水噴出口の先端部の、別写真です。

 写真はすべて、わたしがスマホで撮りました。
 スマホですから精度が悪いですが、みなさん、見えますか ?



▼目を凝らしていただくと、何とか見えますか ?
 光る点は、銅です。
 日本の海底から噴き出す熱水鉱床は、金に銀に銅、さらに鉛、亜鉛、インジウム、錫、アンチモンなどの多様な資源を含んでいます。
 この写真にも、ほんとうは金も含んでいます。



▼次は、マンガン・ノジュールです。
 この場合の nodule ( 英語 ) は、団子のような塊という意味になりますから、マンガン団塊 ( だんかい ) とも言います。
 ぼくはふだん、そのマンガン団塊という呼び方を使っています。

 このマンガン団塊も、多くの資源を抱擁しています。
 マンガン、ニッケル、銅、コバルトです。
 鉄、ケイ素、アルミニウムなどを含んでいるタイプのマンガン団塊もあります。

 このマンガン団塊は、日本の海底に、見渡す限りダンゴが並んでいるような場所もあります。



▼次は、コバルト・リッチ・クラストです。
 海の中には、地上よりも高く、雄大な山脈があります。
 その「海山」の頂上から大斜面をマンガン酸化物が覆っていて、コバルト、ニッケル、銅、白金、マンガンを含んでいます。



▼そして最後は、お馴染みのレアアースです。



▼レアアースを豊富に含んだ海底の泥は、地上に揚げてサンプルにすると、見た目も触感もチョコレートそっくりです。
「豊富」というのは、実際にどれくらいなのか。
 わたしが議員になってすぐ、「中国の陸上産レアアースより純度の高いレアアースが、日本の海で採れることを実証しましょう」と政府に働きかけ続けました。
( 民間の専門家時代にも働きかけていましたが、議員になると、政府の耳の傾け方は、まるで変わりました。国会議員の特権とか、そんな話ではありませぬ。議員は、主権者の負託を受けているからです )

 内閣府のSIP ( 戦略的イノベーション創造プログラム ) の「革新的深海資源調査技術」チームを、知友の石井正一プログラムディレクターが率いて、まさしくその結果を出しました。
 なんと5500メートルを超える深海底で、パワーグラブで、レアアース泥をぐわしと摑んで、海面の調査船上に引き揚げたのです。
 その泥のなかには最高品位の高濃度レアアースが、中国の陸上産レアアースのおよそ20倍の純度で、入っていました。

「そんな深海底の資源など、採れるはずがない」という、これまでの世界の常識を覆すものです。

▼わたしがいつも講演などで申してきたように、中学生の時に教わったことを、みなさん、ちょっと思い出してください。
 地球は大きく言えば、陸と海のふたつからできています。
 どちらが、どれぐらい広いかは、中学で教えます。

 そうです、陸が3割、海が7割、海のほうが遙かに大きいのです。
 したがって、もともと資源は、海のほうがずっと多いわけです。

 しかし海は、海中で人間が呼吸できないこともあり、そしてそれよりも、巨大な水圧が資源開発を邪魔していました。
 深さ5500メートルを超えるような深海底の水圧を打ち破って、資源が採れるはずはないという常識があったわけです。

▼だから上記の、日本の成功は、世界を変えるたいへんな可能性があります。
 ロボティクスをはじめ、新技術で、これまでの「できないという常識」を乗り越える歩みが、この「資源はない」と思い込まされてきた日本で始まっているのです。

 そして日本は、陸地こそ広くないですが、海は、世界6位の素晴らしい広さです。国連に加盟している国だけで193か国ある中の6位です。
 日本の海洋資源というものが、どれほど豊かな希望を秘めているか、分かっていただけると思います。

▼海洋資源の本格開発は、人類の永い歴史でも、まったく初めての試みです。
 したがって、課題が幾つもあるのは、当たり前です。

 ところが、たとえば自由民主党の部会に講師として来てくださった、大資本傘下の民間の研究者は、レアアースをはじめ資源を、中国など海外から輸入する話をなさいました。
 そこでわたしが「日本のレアアースを含め国産の海洋資源にも触れてくださいませんか」と問うと、できない理由を断言なさいました。
 そのできない理由とは、実際は、新しいことをやるときにはいつだって存在する「これから解決していくべき課題」なのです。
 しかも、レアアースの話はされずに、マンガン団塊とコバルト・リッチ・クラストのことだけを言われました。

 レアアース、それから今回の展示 ( それをわたしが撮った写真 ) にはないメタンハイドレートの話などはせずに、現状ではより課題の多いマンガン団塊とコバルト・リッチ・クラストの話だけをされたのです。

( ちなみに、メタンハイドレートは、凍った天然ガスですから、海底と同じく高圧低温に保つ装置に入れていないと融けてしまいます。だから今回のような、ただの会議室にそのまま展示することはできません )


( このエントリーの写真の鉱物はすべて、壁際に、そのまま常温で置かれています )

 わたしは、申し訳ないですが、この優秀な研究者にもう一度、お尋ねするべきかと考えました。
 しかし自由民主党がお願いして来てもらっている外部講師を、追及してはいけないと考え、それ以上は問いませんでした。政府側に部会で問うのとは、違うのです。

 それでも、この研究者がまだ若い人だったので、この会が終わったあとに近づいていって、「なぜ日本のレアアースの話をなさらずに、外国からの輸入の話だけをなさったのですか」とお尋ねしました。
 すると「あ、レアアースは確かに有望ですね」と仰いました。
 わたしは「こころから恐縮に思いますが、日本では、かつて成功していた組織の民間が、むしろいちばん官僚的なのです。いつもできない理由を探して既得権益に安住なさることが、日本のいちばん深刻な問題なのです。今日のことをヒントにすこし考え直していただけませんか」と、人生の先輩として僭越ながら申しあげました。

 そして、いつもの通りエレベーターを使わず、階段を降りていると、アスリート出身でやはり階段を多用する、同期議員にして護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 ) メンバーの朝日健太郎さんに追いつきました。
 朝日議員は「さっきの研究者の話を聴いて、日本の海洋資源はやっぱり、実用化できないんだなぁと思いました」と仰ったのです。
 そこで朝日さんに、公平を期して丁寧に、全体像をお話ししました。
 朝日さんはとても飲み込みの良い人なので、よく分かってくれたと思います。
 いつも本会議場で、朝日さんの質問に、楽しく答えています。

 わたしは、非礼を承知で、追及すべきだったのかも知れません。
 しかし、ひとりの人間としては、礼を喪うことがないよう常に努めたいというのも、人には求めずおのれ自身には課しているテーゼ ( 基本方針 ) なのです。

 このことは、「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」でも、個人情報が決して分からないように気をつけて、本質論に絞って話すかも知れません。ずっと考え続けています。
「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」といえば、今夜、新しい分をアップしました。
 いま、高市早苗・経済安保担当大臣が苦闘されている問題に絡んで、「国営放送をつくれ」と根本命題を提案しています。
 ここにあります。

 そして、作家でもあるわたしが断筆して、2か月以上になります。
 小学生のときに、原稿らしきものを勝手に書き始めてから、初めてのことです。
 断筆まえに書いた最後の作品、「夜想交叉路」を、できればここで手になさってください。






 
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