On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2024-08-14 17:46:34
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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岸田総理の不出馬


( アフリカ大陸から地中海へ脱ける瞬間です。
 祖国への帰途、長く辛いフライトで、『反回想 わたしの接したもうひとりの安倍総理』の再校ゲラ直しに没頭しつつ、地中海を心待ちにしていました。
 民間の専門家時代に、ヨーロッパからイラク戦争の戦地に向かうとき、満月が照らす地中海の洋上で突然、海が真っ暗になりました。機内を見ると乗客がみなすやすやと眠っているのがふつうに見えて、目の異常では無いことを確認し、目を窓に戻すと地中海がふたたび月光に輝いています。
 戦地で死が待っていることを警告されたんだなぁと、ごく淡々と思いました。
 その警告を頭に、生き延びて帰国し、やがてまさかの国会議員となり、いま総裁選出馬を宣言して、今度はアフリカから地中海に入ることに、いくばくかの感慨がありました。
 だからゲラに赤ペンを入れつつ、フライトルートを何度も確認して、地中海を待っていたのです。今度は、太陽に輝いていました。
 地中海は美しく、やがてアフリカの航空会社のちいさな機体は、中継地のイスタンブールへ降下していきました )

▼きょう8月14日水曜の午前に、岸田総理が総裁選に出馬されないという、非公式の情報を聴いたとき、正直、意外でした。
 岸田文雄総理がどれほど強く、出馬を望んでおられるかを知っていたからです。

 その情報がまもなく現実となり、実際に「不出馬会見」を始められる時までには、その理由を理解していました。
 わたしが接する現職議員がことごとく、岸田派 ( 派閥は実態として存在しています ) の議員も含めて「現総理では衆院解散・総選挙ができない」と述べていたからです。
 例外は、少なくともわたしが話した議員のなかでは、ひとりも居ませんでした。

 お盆の季節、国会議員はふつう徹底的に地元を回ります。
 回らないのは、ささやかな信念として地元をつくらず、後援会もつくらず、後援会長を置かないわたしぐらいです。
 わたしに「岸田総理じゃ選挙ができませんよ」と語る議員は、これもことごく、「地元で反応が悪すぎる」ということでした。

▼岸田総理の内心の無念は、不出馬会見での「政治家の意地」という言葉に、充分に込められていたと思います。
「 ( 総理退任後は ) 一兵卒で」という言葉がすこし話題になっているようですが、それは、岸田総理が旧来の政治の常套句を使う方だということであって、さしたる意味は無いと考えます。

「派閥とカネの問題で誰かが責任を取らねばならないから」、という趣旨の退任理由を仰いました。それは、違うでしょう。
 総理にほんとうにその覚悟があれば、政治改革がまったく違いました。

 しかし退任を決断なさった総理に、これ以上は、もはや申しませぬ。
 それを「日本的だなぁ」と揶揄する声も届くと思いますが、そうです、日本的です。それは良き日本だと考えています。

▼現職総理が不出馬となったことで、総裁選をめぐる情勢は、ガラリと変わりました。
 これからは現職閣僚も、これまでの「大臣で居ながら総理にたてつくわけだから、水面下に潜らないと」としつつバレバレで動くというスタイルが一変し、公然たる動きにもなるでしょう。
 すると、現権力にべったりのマスメディアとしては、ますますそちらに擦り寄る報道に徹することができます。
 わたしが現時点で、唯ひとり、出馬を明言し、表明していることを無かったことにする傾向は、ますます、どんどん強まるでしょう。

 もうすでに、今日の報道ぶりからそうなっていることを、主権者のみなさんはとっくにお気づきでしょう。

 しかし、困難は、最初から覚悟の上です。
 困難の無い、あるいは困難の少ない変革など、世界にありませぬ。





 
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