On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2025-01-25 02:01:11
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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世に、人に、黙々と尽くした友を送る



▼もう昨日になった1月24日金曜に、通常国会が開幕しました。
 不肖わたしは、昨年11月28日から12月24日の臨時国会に引き続き、この第217回通常国会でも参議院環境委員会の委員長を務めますから、他の委員長らと共に天皇陛下をお迎えして開会式に臨みました。

▼この日は、早朝7時台にまず東京都港区虎ノ門の共同通信会館に入り、虎ノ門ニュースに参加しました。
 共同通信会館は来月に取り壊され、跡地は公園になるそうです。 ( 共同通信の本社はとっくに汐留に移転しています )
 26歳のとき、早稲田大学の大隈講堂の前の公衆電話から共同通信の人事部に電話して「ウチは25歳まで」と、入社試験を受けることを拒まれ、この共同通信会館の4階か5階にあった人事部に押しかけました。
 それが始まりでした。やがて新人記者となり、18年9か月の記者生活を送って辞めるとき、再びこのビルを訪れることはないと思いました。
 ところが虎ノ門ニュースで思いがけなく、ご縁が復活しました。それが消え去ります。

 きのう朝の番組の最後に、MCの生明さんから「ひとことを」と促され、思わず腕を突き上げて「さらば、青春」と叫びました。

▼次の瞬間、感傷に浸る暇はなく、また、たくさん集まってくださっていた主権者のみなさんにも、申し訳ないことに『反回想 わたしの接したもうひとりの安倍総理』にサインしたり、言葉を交わしたり、握手したりする時間もなく、坂のすぐ上にある、国会議事堂へ大急ぎで向かいました。
 国会は、いかなる日程についても1分の遅刻も、30秒の遅刻も許されないからです。

 ありのままに申して、野党に遅刻する人は居ます。
 また、遅刻じゃないけど、本会議に来て出席の札を立て、すぐ出ていってしまう、採決の時だけは戻ってきて問題が記録に残らないようにする、これを延々と繰り返す野党の著名議員も居ます。
 自由民主党はけちょんけちょん、ぼろかすに言われています。そう言われるには、正当な理由があります。
 それどころか憎悪もされています。その憎悪にも正当な理由があります。
 このままでは夏の参院選も大負けするでしょう。
 ただ、この党に遅刻する人は居ないし、党内で遅刻が許されることもありません。

▼議事堂に着くと、古い大きな階段を、いつものように駆け上がり、一緒に走っている議員たちをすべて抜き去って、しかし安全に、議員総会の部屋へ余裕を持って時間内に滑り込みました。
 自由民主党大阪府連がパーティをやめる改革としておこなう運動会の予行演習・・・ではありませぬ。
 国会内は、議員と、行政官 ( 官僚 ) と、政党や国会の職員と、記者らでいっぱいです。走ると言っても安全を確保し、静かに、滑るように走るのです。

▼開会日の国会日程は、この議員総会から始まりました。
 議員総会のあと、まず、一度目の本会議です。
 議場に入ると、これも古い机に向かい、白く名の書かれた黒く四角い木札を立てました。これで出席となります。

 ところが、すぐ隣に、足立敏之参議院議員の木札が寝かされてあります。
 足立さんは昨年の12月27日、モルディヴの海で、シュノーケリング中に事故死されました。
 そのわずか3日前まで開かれていた臨時国会で、わたしの隣の席で、いつものように穏やかにニコニコされていました。

 きのうは、うしろの席の山田宏さんと「まだ名札は残されているんだね」と感慨を持って話しました。隣の席の同僚議員が急に、永遠に居なくなる。こんなことは誰も予測しません。
 わたしは足立さんの木札にそっと手を触れました。
 去年の臨時国会が終わるまで、足立さんはこの木札を、その手で立てていたのです。まるで、温厚な足立さんの手の温もりがわずかに残っているかのようでした。

 すると若い女性の衛視さんが背後からやって来て、机の木札の前に白菊の花束を、ゆっくりと丁寧に置きました。
 そして、足立さんの木札をそっと立てたのです。
 足立敏之・日本国参議院議員のみたまが、最期に本会議に出席されたかのように、わたしは間近で感じました。

 気がつくと、本会議場の演壇の前にも、白菊のブーケが置かれています。
 その演壇には、森屋宏・前官房副長官 ( 参議院議員 ) が礼装で上がり、追悼演説を始められました。

▼足立さんは、安倍晋三総理と同い年です。
 神戸の隣の西宮市に生まれ、京都大学工学部で国のインフラの建設と改善を学ばれ、建設省に入られました。
そして国土交通省で技術系トップの技監になってから、国政に転じたのでした。
 足立さんと議員会館の事務所が隣同士だという森屋さんは、ふだんの冷静な様子が次第に変わり、嗚咽しながら、足立さんの命の歩みを振り返られました。

 本会議場の高い位置の座席では、足立さんの家族が揃って耳を傾けておられます。

▼わたしの同期議員のひとりとして国会に来られてからの足立さんの歩み、仕事ぶりは、わたしも承知しています。
 ひとことで申せば、国民の眼には見えないところで、川を改造して洪水が起きないようにしたり、土砂崩れが起きないように住宅地の裏山を整えたり、その計画立案と工事の指導もなさっていました。

 もしも足立議員が、ネットの批評に晒されたら、「政治は結果だけだ。何もしていないじゃないか」と非難されたでしょう。
 なぜか。
 洪水が起きにくくなった川も、土砂崩れが起きにくくなった裏山も、無事であれば、ほとんどの人が川や裏山の変化に気づかないし、ましてや、足立議員の仕事があって変化していることを知る人は居ません。
 国会議員の仕事とは、ほんらいは、こういうものです。おのれが報われないことを前提に仕事をするのです。
 しかし・・・同じ国会議員であっても、こうした仕事をしていないと、それ自体が分かりません。
 分からないまま、ネットで発信してしまいます。
 わたしたちは耐えるほかない。
 足立さんも黙って耐えていました。
 森屋さんは追悼演説の最後の方で「足立さんは篤実な人でありました」と仰いました。その通りだとわたしは思いました。

 森屋さんの追悼演説によると、モルディヴは家族と行かれたのですが、そこからスマトラ島沖地震の跡を訪ねて、悲惨な災害のなかで津波を防ぐことに成功した壁を調べ、日本に応用する計画だったそうです。
 技術者としての人生を貫いた足立さん、その壁だけは調べたかった、触りたかった、そして日本へ感触を持って帰りたかったのではないでしょうか。

 わたしは胸の底でそう思いながら、通常国会の初日を終えました。
 足立さんを追悼する本会議のあと、政府開発援助 ( ODA ) 沖縄・北方特別委員会に出席、礼装に着替えて陛下をお迎えし、国会開会式に臨み、陛下をお見送りしました。
 わたしたちの天皇陛下は、永遠のような穏やかな表情でいらっしゃいました。
 平服に戻り、地方交付税をめぐって総務省と交渉し、自然エネルギー施設がその自然を破壊している事実をめぐって、志ある民間団体の意見を丁寧に聴取しました。

 それから、この日二度目の本会議に臨みました。
 足立敏之参議院議員の木札はすでに、撤去されていました。
 しかし、議員それぞれの胸のなかにあの木札はあります。

「政府四演説」が行われたこの本会議で、石破総理の施政方針演説が空虚であることにあらためて危機意識を深めました。
 岩屋外務大臣の外交演説には、中国人のビザ緩和がひとことも出てきませんでした。
 岩屋さんの性格、そして石破総理と岩屋外相のラインの親中ぶりからすれば、「日中の交流を前進させる」とか何とか胸を張ってしまいそうな場面です。
 しかし外交部会でのわれわれの反撃が、大きく影響して、出せなかったと考えます。
 ただし、もちろん戦いは一筋縄ではいきません。いま重い権力を持っているのは石破総理です。石破さんでも、とにかく総理であればその権力は格段に重い。しかし重いからといって諦めたりしません。

 そして本会議から議員会館の青山繁晴事務所へ戻り、護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 ) の今国会での活動をめぐって、幹部と議論し、羽田空港へ出発しました。
 いま、大阪に入っています。

 自由民主党大阪府連の会長として、これまでの「府連会長はこんな所までは来ない」という常識を覆して現場を回りに回っています。
 心身、費用とも負担は大きいですが、意味はあると考えています。 ( 府連会長は、当然、無報酬です )

 ところがホテルの部屋の照明が壊れています。修理もできないという異常な状態です。日本の頼みである「きちんとしていること」そのものが壊れかけていることを考えながら、そのなかでこのブログを書いています。

 夜が明ければ、茨木市議選の現場に入ります。二度目です。選挙応援は、一度入ればいいという考え方ではありません。 ( 冒頭の写真は、出陣式に臨む永田まき候補です )
 そこから東京へとんぼ返りして、ことし最初の独立講演会に臨みます。
 2月に京都で開く独立講演会に来てください。みんなの眼を見て話したいことが沢山あります。ここです。

 どんな時にも、無償、無条件の発信である「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」の発信は続けたいです。
 最新分のひとつは、これです。トランプ大統領の再来政権を考える、第1弾です。

▼このブログの「激闘オーサカ その2」はいずれアップします。
 ブログと動画・・・無償、無条件の発信を続けることは、命を削ることによってしかできませぬ。せっせと削ります。





 
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