On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2007-09-24 16:20:09

からだ、というやつ




 きょう未明3時ごろ、自宅前の道路で珍しく、すってんころりん転んで、両足にけがを負ってしまった。
 とくに右足は、あまり軽くないけがだ。

 すると、それまでできていたことが直ちに、ほとんど困難になった。
 歩くとか階段を駆けあがるといったことは当たり前ながら、たとえば机に向かってパソコンで原稿を書くことも、たいへんに難しくなった。
 足の血流が変わるのか、痛みが倍加して、精神が持たない。

 思いは自然に、きょうの夕刻に入院先で記者会見をするという、安倍さんのことに向かった。
 心身の不調のなかで孤独と孤立を深め、それでもなお、海外で首脳会談をいくつもこなし、入院するまえに辞任会見をおこない、記者の質問にも答え切った。

 身体に問題が生じると、ひとの正常な活動をこれほど簡単に、ストレートに阻むことを考えると、世に山ほどの批判があって、その批判は正しくて、これから歴史の上でも、代表質問の直前に辞任したという異常事態の責任から、安倍さんは永遠に逃げられないけれども、こころの底から、よく奮闘されました、ほんとうにお疲れさまでしたと、胸のうちで言わないではいられない。

 きのう出雲で講演したとき、安倍さんの辞任について、「わたしたちのこの祖国が、国家主権をフェアに回復しようとする時、その壁がいかに厚いか、それを学んだということを、この政治的な悲劇から、せめて汲みとりたいですね」と聴衆のかたがたに語りかけた。

 ぼくの稚拙な話で、どこまで伝わったのか、それは正直、自信がない。
 ただ、出雲の大きなホールに集まってくれた聴衆は、びっくりするほど若い世代から、年配の世代まで、とても幅広く集まってくださった。
 それは、うれしかった。
 ぼくは、若いひとが聴いてくれるのもうれしいし、80歳、90歳、それ以上のかたが耳を傾けてくださるのも、すごくうれしい。
 この祖国を、同時代人として背負うのに、性別も、仕事の違いも、貧富の違いも、年代の区別もないからだ。
 ずっとまえに定年を迎えて、もう仕事はしていない…そんなの、関係ないです。



 珍しく転んだのは、身体が異様に寒くて、体温が下がって、がたがた震えるように凍りつく感じだったので、急いで帰ろうと、変な走り方で走ったからだった。
 この、夜もそう涼しくはない、残暑のなかでね。
 出雲で講演するために前日入りしたホテルの一室でも、同じように体温が下がって凍りついた。
 そこで湯をためて入ってみたけど、変わらないのには、ちょっとだけ驚いた。

 まぁ、おおむねは、なんてことはない。
 足も、なんとか明日の出張までには、歩けるように、します。
 かつて学生時代に競技スキーに夢中になって、足のけがには、慣れていることは慣れているから。

 天から命を預かっているときだけ、せいいっぱい、仕事をする。
 命をお返しするときには、さらり、お返しする。
 それだけです。

 この地味ブログをわざわざ訪ねてくれるひとに、すこし心配させるかも知れないけれど、ここは、ぼくの個人ブログなので、こういうありのままのつぶやきを許してください。



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