On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2008-07-06 06:59:18

怒り




▼いつも申しているように、この個人ブログへの書き込みについて、質問の形になっている書き込みに個別にお答えすることはしません。
 それをやれば、ぼく本来の仕事、シンクタンクの社長あるいは作家としての仕事に必ず大きく影響するからです。
 ほんとうは、ぼくの現在の仕事量、オブリゲーション(義務、責務)の幅と量は、ひとりの人間が処理できる適正量をすでに大きく超えていますから。
 ぼくはこれで10年と7か月あまり、年末年始を含めて1日も休んでいませんが、それでも積み残したままの仕事が山のようにあるのが実情です。


▼書き込みのうち、ぼくが『おかしいな』と思うものも、時折はあります。
 基本的な事実関係が、単純に間違っているものもあります。
 それから、思わず不快な気持ちをぐっと呑み込むもの、あるいは怒りに似た気持ちを覚えることさえあります。
 しかし、それでも上記のみずから定めた原則に従って、ここで返答することはしません。

 また、少なからぬ有識者のかたがなさっているような「書き込みの禁止」「書き込みの制限」をするつもりも、今のところありません。


▼これまで返答したことはありました。
 しかし、それは不快感や怒りによるものではなく、たとえば旧軍のフェアな名誉に関わることだったり、社会的な公正さから放置できないイッシュー(事柄)に限られています。


▼今回はまったく初めて、怒りとともに、返答せねばなりません。
 それを悲しく思います。

 ただ、この返答も、個人的な怒りによるものではありません。
 わたしたちの社会の大義、あるいはフェアネスのために強い怒りを禁じ得ないのです。


▼「素人」というハンドルネームのかたから、次のような書き込みが2度、されています。

▽2008-07-04 01:08:17
「ズバリ・ぶったまのファンで、You tubedeに上がるのを楽しみに必ず見てます。
青山様のTV解説で、日本海側のメタンハイドレードは、直ぐにも採掘可能な日本に数少ない有望な資源との事で、日本人として単純に嬉しかったです。
が、試掘関係者からの情報では、石油高騰した現時点でも経済的採算性は殆ど無く、埋蔵量も日本の消費量の10年分も見込めず、採掘可能な量になれば更に数分の一で民間業者が参入する事は経済的に不可能と言われてます。
この間の青山様の情報とは真逆な結果を聞いて、青山様の情報源が気になった次第です。」

▽2008-07-05 23:46:55
「私も、政治外交面で青山さんの情報を一番信頼してますが、日本のメタハイは業界では有名なトンでも教授が牽引して来た経緯があり、青山氏の姿勢に危うさを感じ心配なんです。
マンガン団塊は早く実用化出来れば、中国の輸出停止などの嫌がらせにも対抗出来るし、良いんですがね。
深海底掘削探査船「ちきゅう号」が、近々民間の資源開発業者に払い下げられるという話もあり、それらも関係しているんでしょうかね。」


▼あなたのお書きになっている「日本海側のメタンハイドレート」というのは、「太平洋側のメタンハイドレート」」の誤りではないですか。

 あるいは、誤りと分かっていて、すなわちエネルギー・資源の学界や業界で現在、「太平洋側のメタンハイドレートに比べて、日本海側のメタンハイドレートが、はるかに有望ではないか」という声が強くなっていることを承知の上で、わざわざ、太平洋側と日本海側を入れ替えているのでしょうか。

 これは、ぼくの「情報」というレベルの話ではありません。
 情報とは、ぼくが当事者から直接、ヒヤリングしたインテリジェンスの内容を指します。
 しかしこの件では、ぼく自身が、まさしくその当事者です。

 日本のメタンハイドレートの研究・試掘は、大きく分けて、太平洋側(主として南海トラフ)と日本海側があります。
 太平洋側には、すでに国の予算が500億円、投じられていますが、日本海側は、ごくごくわずかな予算しか投じられたことがありません。
 太平洋側は、政府・学界・業界が一体となって10年にわたり、単年度ざっと50億円、総額で約500億円の予算を使ってきました。
 一方、日本海側は、独立総合研究所(独研)の研究本部・自然科学部と東京大学の松本良教授の研究室が、大赤字で、すなわち純粋な研究と国民益、国益のために、みずから持ち出しで取り組んできました。
 国の予算は、単年度で最大1500万円、総額で2000万円ほどしか出ておらず、これでは研究船を数日間、日本海に出せば、その油代だけですでに大幅に足が出ますから、足りない分をみずから補うしかありません。

 ところが、太平洋側ではこれまで確たる成果は出ませんでした。メタンハイドレートが海底から深いところにあり、分かりやすく言えば泥や砂と、とことん混じり合っていて、取り分けるのが難しいからです。
 一方、日本海側では、海底の表面に露出していたり、そうでなくても海底から浅いところから、大量に良質のメタンハイドレートが発見・確認されました。

 日本海側に、独研と共に取り組んでいる松本良・東大教授は「日本が1年に消費する天然ガスの100年分」と、松本さんらしく慎重に控えめに公表されていますが、実際には200年から250年以上分あるのは、すでに確実とみられます。

 しかし太平洋側も、原油が1バレル(ひと樽)140ドルを突破する資源高の時代にあっては、ペイすると思われますから、これまでの試掘は無駄ではありません。
 原油はいずれ100ドル当たりまでは下落する可能性がありますが、それでもおそらく太平洋側も採掘コストに見あうでしょう。

 日本海側は上記のように、きわめて取り出しやすい形で賦存(ふそん、資源などが蓄積されていること)していますから、日本国にとって史上もっともコストの安い、そして日本史上初めての自前大型資源になる可能性が高いと考えられます。


▼これらのことは、一部はすでに「日中の興亡」(PHP出版、6月20日発刊)のなかでも明らかにしていますし、ずっと以前から、独研の公式ホームページでも公表しています。

 また独研の自然科学部長である青山千春博士も、松本良東大教授も、それぞれ国内の学会や国際学会で発表し、共同発表も行い、当然ながら学術論文も多数、発表しています。
 いちばん最近では、6月末から7月初めにかけてアラスカで開かれた「永久凍土学会」で青山千春博士が日本海側のメタンハイドレートの探索について直近の成果を発表し、今回も大きな反響を呼びました。
 青山千春博士は、超音波を用いたまったく新しい探索方法で国内特許のほか、国際特許もすでに取得しています。
 特許を取っていますから、その中身はもちろん公表されています。

 この「青山メソッド」は国内よりも、国際社会で有名です。
 これがあるからこそ、日本海側で大量の良質なメタンハイドレートが発見できました。
 従来の方法に比べ、漁船で使う魚群探知機を応用して超音波を発する方法ですから、はるかに安価で、使い易いのです。

 こうした事実は、前述したように、一部は著書で明らかにし、ホームページや学会、学術論文では、ほぼすべてを明らかにしていますが、テレビではあまり述べません。
 なぜか。
 この国では、まるでテレビを使って利益誘導をしているように誤解、曲解される怖れが強いからです。
 たとえばアメリカでは、自分が当事者であればあるほど、話の中身によっては「正確な話だ」とテレビ番組でも評価されることがあり得ますが、日本は、良い悪いではなく客観的にみて、嫉妬、ジェラシーの文化ですから、それはまず期待できません。


▼独研は、株式会社組織のシンクタンクですが、株式会社であるのは利潤のためではなく自立、自律を保つためです。
 お手本のひとつは、幕末に坂本龍馬の創立した亀山社中です。

 亀山社中は、司馬遼太郎さんがお書きになっているように、日本初の株式会社とみることができますが、利潤のために存在したのではなく、幕府にも、いかなる殿様にも従わなくて済むように、みずから食い扶持(ぶち)を確保して、だからこそ自由自在に動き、旧勢力を倒し、旧態依然たる利権構造を壊し、国家の再生を目指すために存在しました。
 独研も、政府であれ旧財閥であれ、どこかのヒモ付きになることを一切せず、みずから立って、自由自在に、国家再生のために働くために、株式会社でいます。

 したがって、日本海側のメタンハイドレートについても、私益のためではなく、日本を資源大国にして、ほんものの独立国家をつくるために取り組んでいます。

 東大の松本良教授は、世界でも指折りのメタンハイドレートの専門家であると同時に、学会の良心とも言うべき清潔なひとであり、官僚や業界のための利益誘導は決して行わない、ほんものの学者です。
 だから、独研とおたがいにその志と専門能力を認めあって、連携しています。

 独研には、総務部のほかに、研究本部があり、その研究本部は社会科学部と自然科学部を擁しています。
 社会科学部は、テロ対策をはじめとする危機管理などに取り組み、自然科学部は日本海側のメタンハイドレートの研究などに取り組んでいます。
 実際は、これら以外に、幅広い実務を行っています。独研のホームページで、すべて公表しています。

 ぼくは、この独研の代表取締役社長・兼・首席研究員です。
 日本海側のメタンハイドレートの研究は、前述したように大きな赤字ですから、独研の存続と将来の発展に法的な最終責任を有する社長として苦しんでいますが、日本国のために耐えて耐えて、遂行しています。
 太平洋側は、これも前述したように大きな予算が付いていますから、業界も深く参入しています。
 日本海側は、実質的に独研と東大のボランティアに近いですから、利権などは一切ありません。

 また、ぼくは経済産業大臣の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」の専門委員(エネルギー安全保障担当)を長く務めており、この公職からも、当事者です。
 この公職にあることも、もちろんホームページなどで公表しています。


▼さて、「素人」というハンドルネームのかたは、上記の事実がありながら、太平洋側と日本海側を逆にして、こう書き込まれています。

「青山様のTV解説で、日本海側のメタンハイドレードは、直ぐにも採掘可能な日本に数少ない有望な資源との事で、日本人として単純に嬉しかったです。
が、試掘関係者からの情報では、石油高騰した現時点でも経済的採算性は殆ど無く、埋蔵量も日本の消費量の10年分も見込めず、採掘可能な量になれば更に数分の一で民間業者が参入する事は経済的に不可能と言われてます。
この間の青山様の情報とは真逆な結果を聞いて、青山様の情報源が気になった次第です。」

 この試掘関係者とは、いったい誰でしょうか。
 前述したように、太平洋側の「試掘関係者」は山ほどいますが、日本海側の「試掘関係者」とは、まさしく、ぼくを含むわれわれ自身です。
 あなたは、われわれに何かをお聞きになりましたか。
 われわれに、その記憶はありません。

 そして、あなたは、2度目の書き込みで、こうお書きになっています。
「私も、政治外交面で青山さんの情報を一番信頼してますが、日本のメタハイは業界では有名なトンでも教授が牽引して来た経緯があり、青山氏の姿勢に危うさを感じ心配なんです。」

 トンでも教授が、松本良教授とは、まさかあなたも言えないでしょう。
 松本良教授とは対極の評価を受けているらしい学者は、確かにいらっしゃいます。ぼくとはお付き合いがありませんが。
 しかし、あなたは「素人」と名乗りながら、どうして、業界内の噂話をこうやってご存じなのですか。
 またメタンハイドレートと記さずに、「メタハイ」という業界用語を、さらりと使っていますね。
 さらに、この2度目の書き込みでは「試掘関係者に聞いた」というスタイルをとらずに、みずからの話として、書き込まれています。

 あなたは、いったいどなたなのでしょうか。
 ごくふつうに考えれば、可能性は最大で5つです。
 ひとつめは、太平洋側のメタンハイドレート開発の関係者で、日本海側をアンフェアに貶めようと、素人を名乗って書き込まれた。
 ふたつめは、日本海側のメタンハイドレートに重大な関心を寄せている外国(中国、韓国、ロシアなど)の関係者で、日本国がこれから、太平洋側から日本海側にシフトする可能性を封じたいと、書き込まれた。
 ちなみに、あなたもおそらくご存じのように、こうした外国は太平洋側のメタンハイドレートには、全くと言っていいほど関心がなく、逆に、日本海側のメタンハイドレートには、それが日本の排他的経済水域(EEZ)はおろか日本の領海内に賦存するものであっても、重大な関心を寄せています。

 みっつめは、あくまでも善意の、ほんとうに素人のかたであり、その「試掘関係者」も実在して、素人だから太平洋側と日本海側を間違えて記憶された。
 よっつめは、あくまでも善意の、ほんとうに素人のかたであり、全体に混同や記憶違いがあった。
 いつつめは、あくまでも善意の、ほんとうに素人のかたであり、その「試掘関係者」に嘘を言われて騙された。

 せめて、後者の3つのどれかであることを祈ります。
 それであるなら、この場で、すべてを赦します。
 弁明も要りません。

 一方で、前者2つのどちらかであるなら、決して赦しません。日本の国益のために、草の根を分けても探し出します。
 この場合、わたしたちの大切なコミュニケーションであるインターネットを不当に利用した、情報工作ですから、捜査機関に、法に則った公正な告発も致します。





  • 前の記事へ
  • 記事の一覧へ
  • 次の記事へ
  • ページのトップへ
  • ページのトップへ