On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2011-12-17 05:41:19

みなさん、おはようございます



▼いま出張先の雪国にいます。
 夜明けまでには、まだ時間があります。
 きのう、列車の中から一面の雪野原をみて、学生のとき下手くそなりにアルペン競技スキーに打ち込んでいた頃がありありと甦りました。
 思い出した、なんてもんじゃなく、あの時の身体と心に一瞬にして戻るような感覚です。

 何かのきっかけで、過去の時間が甦る…そのことだけを生涯かけて追求し続けたのがマルセル・プルーストですね。
 彼は36、7歳ごろからは「失われた時を求めて」という永遠の一作の小説を書いてゆくことだけに命を費やして、そのまま51歳で世を去りました。
 裕福な家に生まれたから、それができたのですが、ぼくは中学生の頃に、この生き方を知って関心を惹かれ、高校生の頃は「新しい手法、新しい感覚の実験小説」を産み出すんだと人知れず、考えて、試作をしたりしました。
 しかし、その当時から『小説を書くだけじゃなく、いろんな事をやる人生になるんだろうなぁ。ぼくは世の中を良くすることに、必ず貢献したいから』と感じてもいました。

 その通り、小説は、まったくの無名だったぼくの処女小説に近い(正確には2作目)の「平成」を文藝春秋社がいきなり単行本にしてくれる幸運に恵まれながら、その後の仕事の嵐で、次作を書かないまま、ここまで来てしまいました。

 ノンフィクションの「ぼくらの祖国」が12月29日に全国発売になるのを機に、小説の次作も、取り組み始めています。実に9年半ほどまえに初稿を起こした一作の完成を目指します。

 独研(独立総合研究所)から会員制で配信している東京コンフィデンシャル・レポート(TCR)の年末特集も、11本の集中配信の予定が、あと6本残っているし、この出張のような民間・独立系のシンクタンクとして国民を護る仕事も年末年始にも沢山あるし、テレビへの参加も幾つかあるし(レギュラーの参加に加えて、来週月曜のTVタックル生放送への参加や、大晦日に放送の関西テレビの特番「青山繁晴の緊急提言」などがあります。後者は、初めてMC、メインキャスターを務めます)、さらには次のノンフィクション執筆の準備も始めているし…まぁ、少年時代の予感どおりに、プルーストさんとは真逆の人生ですね。
 そもそも人類史に残るマルセル・プルーストと比べてみたりすることが、僭越の限りですが。


▼さて、「ぼくらの祖国」の版元、扶桑社の編集者から、Eメールが届いていました。
 大阪ジュンク堂に、サイン会についての問い合わせが殺到して、まだ開催日だけしか決まっていないので、書店が対応に困っているそうです。
 みなさん、まことにまことに恐縮ながら、詳細が決まるまでは、書店への問い合わせはなるべく控えてくださるようお願いします。

 サイン会は、大阪だけではなく、東京や京都でも、あるいは他の都市でも開催していきたいと考えています。
 今後は詳細が決まったときに限り、この地味ブログでもお知らせすることにします。

 日本列島の多くの場所に、初雪が降った翌朝のきょう、みなさんが愉しい一日を送れますように。
 そして北海道をはじめ、すでに雪との戦いが始まっている地域のかたがたも、愉しい一日になりますように。

 ぼくは、きょうこの後、まだ帰京はせずに大阪へ向かって「たかじんのNOマネー」(テレビ大阪)に参加(出演)します。
 車中で雪をみつつ、執筆を続けます。


▼きのう野田総理が「福島第一原発は冷温停止。事故は収束」と記者会見で述べましたが、ぼくは全くそう考えません。冷温停止ではなく、以前からずっと言い続けているように「冷温破壊、という未経験の事態」だし、事故全体も収束とはとても言えません。

 来週月曜には、早朝から福島へ入り、飯舘村の村長さんと再会します。
 大晦日に放送する関テレの特番のためでもあります。
 福島から東京に戻ったら、そのままTVタックルのスタジオ入りです。






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