おのれが決してしないこと、できないこと。
　それをやってみたいと思うことは、結構あるのかも知れません。

　ぼく自身は、ふだんまったく、そんなことは思いません。
　ところが今日、遅いランチを食べているときに、ふと思ったのです。

　今は参加していない地上波のテレビに、急に参加して、今回の内閣改造・党人事をめぐって、いい加減なことを言っているひとたちを、冷笑してみたい。
　何も言わず、ほんの一瞬だけは、そうしてみたい。

　ぼくは冷笑はしない。したことはない。
　そういうことは、しない。

　だけど、今回はしてみたいと、ふと思いましたよ。
　どれほどいい加減なことを言えば、気が済むのか。
　ご自分の卑しさに、かすかにでも気づいているのか。

　たかじんさんが、知られざる苦闘の果てに亡くなったあと、大阪のホテルの大宴会場で民放テレビ主催の偲ぶ会が開かれました。それを思い出します。
　会場の隅っこ、おそらく誰にも見られないだろうところに、ひとり佇んでいると、聞き覚えのある声が聞こえてきました。
　ただし、ひそひそ声です。
　同じテレビ番組にご一緒したこともある大学の先生、そして大新聞の論説委員か編集委員のような人です。
　どの芸能プロダクションに属せば、有利にテレビ番組に出られるか、ギャラはどこが高いか。たかじんさん亡きあと、芸能プロダクションやタレント、学者やジャーナリストを含むテレビタレントの勢力地図がどう変わるか、それをほんとうに熱心に話し込んでいるのです。
　このお二人の居るところも、充分に隅っこなので、まさかそのさらに奥にぼくが居るとは思いもしなかったのでしょう。
　ぼくは別に隠れていたわけではありませぬ。ただ、静かに、たかじんさんを偲びたかっただけでした。

　それ以上、黙って聴いているのはいやなので、前に進み出て、お二人にちいさく、しかし丁寧に会釈をして、会場の人混みのなかへ戻っていきました。
　そのときのお二人の表情、申し訳ないけど、印象的でした。

　この光景もふと、思い出しました。
　実際には、冷笑など、できません。したい人はどうぞ、していいけど、おのれはしたくありませぬ。
　それは変わりませんけれども・・・あぁ。
　みんな、みなさんと一緒にため息が出ます。
　
　国会は閉会中です。午前から昼にかけて、しかし公務をいくつかこなしたあと、遅い午後の今、さまざまな原稿に取り組んでいます。多くの議員が選挙活動中だと思いますが、ぼくは選挙活動はしません。
　ぼくなりに十全の責任を持って、内閣改造をめぐり東京コンフィデンシャル・レポート ( TCR ) も執筆途中です。
　同時進行にて、みんなの熱意ある表情を思い浮かべながら、独立講演会@大阪にて何を話すべきか考え中です。
　これもまた、おのれなりに、ささやかに生きることだと感じています。