On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2019-11-29 22:35:45
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
Comments (6)

昭和から平成の御代へと、繋いだひと  (推敲しました)

▼ ( ひとつ前のエントリーの関連です )

 みずからの名を刻んだ墓石を生前に立て、「ここに入るんだよ」と仰りながら墓室の蓋を明けて覗き込まれた中曽根康弘総理には、やはり、かつての帝国海軍主計大尉の姿もありました。
 死せる戦友を残して生きて日本に戻られたことを、胸の底に常にひっそりと置かれていると感じました。 ( 敗戦時には海軍主計少佐でしたが、中曽根総理とお話をしていると、主計大尉の意識でいらっしゃることが、そこはかとなく伝わってきました )


 一般の総理番記者は、たとえば朝日新聞や産経新聞であれNHKであれ、総理のいわば昼の姿しか知りようがありません。
 取材の混乱を避けるために、かつて新聞協会とNHK・民間放送連盟の話し合いで早朝と夜は、共同通信と時事通信の2社の総理番だけが総理を取材し、無償にて全社にその取材結果を送ることになりました。
 ぼくが総理番記者になる、ずっと前の話です。
 そのために、この2社の総理番は、やり方によっては、その工夫によっては、内閣総理大臣と若手の総理番記者が、それなりにこゝろを通じ合わせることにもなるのです。

 こうしたことを含めて、すべてをほぼ事実のままに物語にして描いたのが「平成紀」 ( 幻冬舎文庫、たとえばここ ) です。
 平成紀に登場する総理は、中曽根康弘総理、その人です。

▼「平成紀」は今のところ、ぼくが唯一、世に出した純文学小説です。
 未完の小説原稿をたくさん、抱えたままです。
 膨大な時間を要する公務、それにノンフィクション分野の執筆を優先させていて、発表した小説はまだこの一作です。

 なぜか。
 小説の執筆が自分のいちばんやりたいことだからです。
  自分のやりたいことは後回しです。

 こうした生き方は、決して人には薦めません。
 しかし、ぼくはこう生きています。

▼「平成紀」に、おのれなりに込めたものは多いのです。
 単行本として文藝春秋社、いまの変わり果てた文春ではない頃の文藝春秋から出版した「平成」を、幻冬舎から文庫本として再生するときに、全文に手を入れました。
 そのとき、中曽根康弘総理のことも、あらためて考えました。
 風見鶏と揶揄された一面も、確かに、間違いなくありました。
 それは、憂国の総理という一面と、矛盾なく共存しているように見えました。中曽根さんが現職の総理、ぼくが現役の記者だったときは、そう感じていたのです。
 しかし「平成紀」を推敲しているとき、いくらか考えを変えました。
 一寸先は闇である政界を生き抜くためには、風見鶏であることも必要不可欠だと割り切られつつ、暮夜ひそかに、おそらくは魂の奥で、ある後ろめたさもふと感じられていたのではないか。

 おのれの記した小説から、あらためて知った新事実のようにも思いました。

 ひとりの人間の中に、さまざまなおのれが共存し対立する。
 それが、わたしたちの裸の姿でしょう。

▼令和の元年に、ほんとうは昭和から平成の御代 ( みよ ) へ見事な橋渡しをなさった中曽根康弘総理がついに喪われたのは、とても偶然とは思えません。
 令和元年を締めくくる神戸にての独立講演会 ( ここです ) では、こうしたお話も、しみじみと、ふかぶかと致したいと今夜、感じています。

 
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いつもありがとうございます。【Na】
2019-12-02 12:20:17
ブログを見て、もう一度読み返して見ようと
本棚から平成紀を取り出して開いてみると
去年の9月に頂いた青山さんのサインがありました。
願いは叶う
何故か全てがここに繋がっているように感じました。

夫の実家に帰省するおかげで
12月の神戸独立講演会に申し込みする事が
出来ました。

青山さんへの質問に
一番のお薦めは?と書いておいて
私は3ヵ所程書いてしまいましたが
答えて頂けたら嬉しいです。

神戸でお会い出来るのを楽しみにしています。
平成紀【一点法師】
2019-11-30 14:31:06
いつも魂からのご発信をありがとうございます。

11月の最初の虎ノ門ニュースのときに『平成起』にサインをしていただいて、2週間もかけて読み終わった今週末に、中曽根元総理の訃報に接しました。 

『平成紀』読了後一番に感じたことは、僭越ではありますけれども、以前青山さんが議員になられたときによく仰っていた「おのれの人生を壊して議員になった」というそのお気持ちが、少しだけわかるような気が致しました。ほんとうは小説がお書きになりたいのだなあと、文章の間から、そのお気持ちが沸き立ってくるような感じを受けました。

そして『平成紀』では、総理執務室に大量の天皇陛下と中曽根元総理のツーショット写真が掲げられていたことを知りました。

さらにきょう、青山さんのブログの文章をお読みしました。
中曽根元総理が突然予定を変更してまで青山さんにご自分のお墓をお見せし、ご自身の心胆をお伝えしたそのお心を忍びました。
中曽根元総理のお志が、青山さんへのおふるまいを通して、そして青山さんの文章を通して、わたしたちにも届いていることを、深い感慨をもって受け止めています。

時をおかずのご発信、あらためて心から感謝申し上げます。
ひとりの人間の中に~【安野 一】
2019-11-30 08:58:45
『ひとりの人間の中にさまざまなおのれが共存し対立する。
それが、わたしたちの裸の姿でしょう。』

私は、この言葉に吸い寄せられました。仰る通りと思います。
青山さんの物事を貫徹する心と眼には驚きます。「ハッ、とします。」
今までにもお聞きしました歴代の総理や国会議員の方との繋がり、
心と心が響き合っている感じが致します。誰にも心を開いている
青山さんだからこそ、対面している国会議員は心を許してしまう
のでしょうね。たとえ、考え方は違うとしても~
超多忙な中、お疲れ様です。日本は今、妨害の嵐。ここを駆け抜けてこそ
日本の真の姿があるのだと確信しています。
新しい道が示される【sakiko】
2019-11-30 01:24:46
 平成から令和元年にかけた今年は、天は見ていらっしゃると思いたくなるようなことが起きてみたり、なぜ今なの、と思うことが、幸か不幸かに関わらずいくつも起きたりします。
その上で、オカルトという言葉を使ってしか東洋の神秘を語れない人を、わたしはいつも残念に思って見ています。
 例えば仏像にはっきり掘られている頭の後ろにある輪の後光とか、西洋絵画にはっきり描かれている頭上の光輪(halo)を、昔の人は誰でも実際に目にしていたから、それが現代でも手で触れる実在で残っているのだと、私は思うのです。
 昔と今のある境で、その力を人間は忘れてしまったか、奪われてしまったか、必要としなくなったのか、どれなのかはわかりません。医療が発達しすぎたり、テクノロジーが発達しすぎたりして、人間は本来力を持っていたのに、それを使わせないようにされてしまったのかな?とも思います。実在する仏像や絵画の存在が、それを語っています。でも、それらが現代でも、時々、残像のように顔を出すことがあるから、人によってはそれをオカルトという安直な言葉を使って、さも見抜いたかのように論じたい人がいるんだろうな、と心の中では冷めた思いがよぎります。
 天からのお知らせはいつでも、どこにでも、私たちに分かるように示されてると思います。
 新しい道を創るべき何かが現れて、令和にこの世は明けはじめると信じたいです。
「平成」読みました。【IDC,0422平田】
2019-11-30 00:11:46
青山さんが関西テレビ「アンカー」出演中図書館からかりて「平成」読みました。
フィクションストーリーと思い込んで読み込む中.時系列と物語があまりにもリンクするのでノンフィクションストーリーだと途中で確信しました。
激動の昭和から平成へうつる時、様々な持ち場の方がどう動き何が起こったかよくわかる内容でした
虎ノ門【中島栄治郎】
2019-11-29 23:08:39
連日ありがとうございます✨
虎8、もし?
青山さんが、出演しない事態あれば、僕は見ないと思います。

金曜日は、見るかも知れないないですが!(笑)

虎金トリオは、

(笑)

でも、最後まで見てしまいます✨(笑)

眼から鱗です。


そもそも、水曜日。
今は月曜日、しかも、隔週になりましたが。
僕は、ワイドショーはチラ見の参考程度です。
実態、現実、事実、問題を知りたい。
月曜日、いつも、楽しみにしてます。
虎8の発信、続けて下さいませ。

他の報道よりも断然、緊張感が違う。

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