On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2013-11-30 14:03:32

あぁ無念

(*このエントリーは、11月29日金曜から翌30日土曜にかけて書きました)

▼いま11月29日金曜の夜、最終便で帰京するために伊丹空港の人混みのなかにいます。
 今週は、羽田と伊丹のあいだを飛ぶのが、これで6回目です。1週の間にこれだから、航空会社のクルー並みかな。
 海外出張では、行きのフライトのクルーと、帰りのフライトでまた一緒になることが、この頃は頻繁に起こります。
 クルーに同情されたり、噴き出されたりするんだよね~。
 フライト・アテンダント(すっちぃ)やパイロットは、その到着地で海外の休息を楽しんで疲れを取ってからから、帰りのフライトに乗務するわけですが、こちらは仕事だけして、あっという間に帰りのフライトに乗ります。

 ぼくだけではなく、海外出張に同行する独研(独立総合研究所)の研究員や、自然科学部長の青山千春博士もたいへんです。
 研究員のなかにはテロ対策の研究調査などで、ひとりで海外出張に出る者もいるし、青山千春博士も単独の海外出張がありますが、こんな無茶な日程にはなりません。そもそも、社長のぼくが彼らにそんなことをさせません。
 ぼくの海外出張に同行する時だけ、こうした旅程になります。


▼年末年始を含めて1日も休むことがなかった、この約16年のあいだでも、ことしの11月はいちばん過酷な日程のひと月だったんじゃないかなぁ。
 今週の火曜日、客員教授を務めている近畿大学経済学部で講義するまえに控え室で、うとうとして、おのれが死にかける夢を見て、眼が覚めたら、ほんとに死にかけじゃないかと思う体調になっていたのであります。
 ふひ。

 目の前にいた独研・総務部秘書室の優秀な秘書さんは、まったく心配しない。
 青山千春博士も同行秘書も、ぼくがロボコップか何かだと思い込んでいるんじゃないかと思うぐらい、ぼくについては心配しない。
「海と女とメタンハイドレート」(ワニブックス)にも、ぼくが大腸癌手術のあとの腸閉塞で死が間近に迫ったときに、心配せずにお弁当を食べていたと青山千春博士が書いていますね。この本の中には、「死なない化け物」とぼくを表現する場面もあります。
 わはは。何でやねん。死ぬよ、そのうち。
 そのうち、お別れです。

 …しかし、うーむ確かに、このあと授業を始めてみると、学生たちにどうやって自分の頭で考えさせるか、それに自然に集中しきって、授業が終わった頃には体調がすっかり回復してしまったのであります。
 この近畿大学での講義は、実はぼくにとっていちばん重い負担になっている任務です。
 受講する学生諸君の数は多く、ひとりひとりの表情も眼も、学力、気力も違います。
 ただひとりも、取り残したくない。特に、学力、気力が充分とは言えない学生こそ、ぼくは手助けしたい。
 そのために重い荷物を背中に乗せて、坂を上がるようです。学生諸君にはそう見えなくとも、ぼくの胸の内はそうです。
 しかし不思議なもので、荷が重ければ、それだけ心と体の奥の奥から湧き出てくる新しい力は、大きくなります。


▼それにしても、この短かった秋は、ひとりの物書きとしてのぼくにとって無念の秋になりました。
 文学、すなわち小説新作も、そしてノンフィクション、すなわち「ぼくらの祖国」(扶桑社)の続編も、いずれもまさかの越年。
 小説新作はいったん完成し、伝統ある文芸誌に掲載も決まっているけど、編集者とぼくの話し合いで、さらに深掘りしてから、さらに磨きあげてから掲載することが10月下旬に決まりました。

 小説を書くことは、ただの木から仏を彫り出していくことに似ていると、ぼくは常々、考えていて、その仏がまだ充分には姿を現していないと判断したのです。
 この越年の決断は、今も正しいと考えています。
 けれども、いったんそう決まると、他の仕事がどっと洪水のように時間という時間を埋め尽くして、小説の原稿に触る時間も作れなくなっています。
 来年の6月号までに、必ず掲載としたいので、原稿の最終的な校了は来年4月の下旬がデッドラインです。

 最初に印刷されたぼくの小説である「平成」(文藝春秋社刊)は、文芸誌の4月号に掲載されたので、できれば今回もそれまでに掲載としたいのが本音です。
 それなら校了は来年2月下旬。もう早くも時間が無くなってきています。
 編集者と議論する時間を考えると、来年1月の第2週までに書き直し原稿を上げていないと、4月号には間に合わないでしょう。

 一方、10月下旬に小説新作の越年を決めたとき、「ぼくそこ」(ぼくらの祖国)の続編を年内発刊しようと、ノンフィクション担当の編集者といったん決めました。
 そして11月27日のぎりぎりまで力を尽くしたけれど、時間は誰にも24時間しかない。

 ぼくの生きる力のひとつは、スポーツをすることです。
 今年は現役以来初めて、自前のスキー板を買って、いつか滑れる日を待っているけど、早稲田大学の後輩が選んでくれたその板には、なぜか24hoursと大書されてる。何これ。どういう意味かな。24時間、楽しめと?
 それなら最高だけど、ただし、もしもぼくに24時間のスポーツ時間をくれるのなら、4輪モーターレース、アルペンスキー、障害越えを含む乗馬、そして南の島のスキューバダイビングという、ぼくのやって来たスポーツを全部やり、それからハワイのアメリカ太平洋軍司令部、太平洋艦隊司令部との議論で出張したとき、帰りのフライトに乗るまでのぎりぎりの時間に生まれて初めて波に乗ってみたサーフィン、これもやる。

…思わず話が逸れたけど、時間は誰にも24時間しか無いので、洪水のような11月の過密日程に阻まれて、ノンフィクションもついに11月27日をもって、越年が決定。

 いま16刷のロングセラーになっているノンフィクション、「ぼくらの祖国」は、2011年12月にサンフランシスコで開かれた、エネルギーを含む地球物理学の世界最大の国際学会「AGU」(American Geophysical Union)に参加しながら、ホテルで苦しみ抜いてぎりぎり完成させました。
 つまり、日本時間2011年12月8日の未明に、校了して、わずか19日後の12月27日に、通称「赤本」の「ぼくそこ」が書店に並び始めたのです。
 今年はなぜ、デッドラインが11月27日になったか?
 そう連絡してきた編集者によると、今年は年末発刊の本が多くて、出版社や取り次ぎ、書店の手が回らないのだそうです。

 物書きの仕事は原稿を期限までに書くことであって、詳しい事情を詮索しても始まりません。越年した責任は、ぼくにあります。
 小説もノンフィクションも、みなさんの目に触れるのが越年したのは無念だけど、越年は本質的な問題ではありません。
 本質の問題は小説もノンフィクションも、言うまでもなく、あくまで中身です。


▼さて、今朝11月30日土曜に、朝日新聞の朝刊を広げると、下掲のような短い記事が載っていました。

~ここから朝日新聞のネット版から引用。著作権は朝日新聞にあります。原文のまま~

メタンハイドレート、日本海側でも確認 経産省
2013年11月30日05時00分

 経済産業省は29日、海底資源「メタンハイドレート」が日本海側にも広範囲に存在していることを初めて確認したと発表した。商業化できるだけの量があるかを確かめる調査を来年度に始めるという。
 経産省によると、これまでに、新潟県上越沖と石川県能登西沖で、メタンハイドレートがあるときにできる「ガスチムニー構造」と呼ばれる地形が225カ所見つかっていた。無人探査機を海底に沈め、そのうち1カ所でメタンハイドレートの存在を確認。他地点でも存在している可能性が高いという。
 太平洋側では3月、愛知県沖で世界で初めての試掘に成功した。

~引用ここまで~

 は?
「日本海側でも確認」?
「初めて確認」?

 馬鹿言ってんじゃないよ~という古い歌(※「3年目の浮気」。佐々木勉作詞)を思わず、口ずさんでしまった。別に好きな歌じゃないけどね。
 関西テレビの報道番組「アンカー」などをご覧になっているひとなら、みな知っているとおり、わたしたちは2004年から日本海でメタンハイドレートの純度の高い塊を実際に採取しています。
 経産省がどんな文章で発表したかは知らないけど、おそらくは「政府も確認した」という意味では初めてだというような言い訳を用意しているのです。

 政府がこういう発表の仕方をすると、さっそく、ある種の人たちは喜んで(一部の外国人も一緒になり)ネットに中傷誹謗をどっと流します。
 真実を知っているひとたちからは、具体的にそうした書き込みをぼくに知らせて「名誉毀損で訴えるべきだ」と義憤に駆られたコメントが、たくさん来ています。
 ぼくと独研(独立総合研究所)をめぐる不法な名誉毀損については、ずっと内偵捜査が行われています。
 ぼく自身は、そうした書き込みをまるで相手にしていません。読んでもいません。
 メタンハイドレートの調査研究は、ビジネスでやっているのではないから、そんなものに拘(こだわ)っていると、やる気を失ってしまうからです。
 日本国民に信を置いていないと、今ささやかに力を尽くしていることが、馬鹿馬鹿しくなってできなくなってしまいます。
 鉄槌を下すことも必要だと考えます。同時に、過度には拘りません。

 こうした事実に反する発表などに対しての反証の、もっとも有力なものが、最近にぼくと青山千春博士の共著で世に問うた2冊だと思います。
「希望の現場 メタンハイドレート」、「海と女とメタンハイドレート」(ともにワニブックス)ですね。
 前者は、祖国を自前資源の国にする歩みの克明な現場証言であり、後者は、それをめぐる人間の生き方を考える書です。
 前者は、誰にも分かる範囲内で科学的に記述していて、その記述とともにメタンハイドレートの実物写真が、永遠の証拠です。

 この書は、経産省でも、ぼくらが手渡すまえに経産省・資源エネルギー庁の担当セクションですでに買って担当官が読んでいて、責任者から「たいへんに参考になった。これからも教えていただきたい」という明言も聞いています。
 それでも、こうした発表ぶりになる。
 経産省・資源エネルギー庁で人事異動が行われてから、政府の対応はずいぶんマシになりました。
 特に、ぼくと独研の呼びかけに知事さんたちが真正面から応えてくれて昨年9月、「日本海連合」が発足してから、官僚とメディアの様子は変わりました。
 それでも、政府はこうして公正さよりもメンツを重んじ、マスメディアは、政府、お上のご発表となれば、そのまま垂れ流しです。

 今朝にこの地味ブログに書き込まれたコメントの中には、「まあ結果的には日本海側の調査に力を入れるようですが、青山先生が以前言っていたように日本では『東大』みたいに、なにか権威が無いと報道もしないのは残念な社会ですね」というコメントもありました。
「近大卒業生」というハンドルネームです。
 ぼくの授業を実際に受けた、まだ若い人だと思います。
 その通りです。まさしく残念でアンフェアだと考えますが、いちばん肝心なのは、日本が自前資源によって、ほんとうの独立を果たすことです。


▼できれば、国民のみなさんが真実を知るために、上記の2冊を手に取ってみてください。
 きのう講演で大阪に入ったとき、書物にサインをして、大阪に置いてきました。
 ぼくのサインの他に、いつもの「脱私即的」(だっしそくてき)、「祖国は甦る」、「深く淡く生きる」という銘に加えて、「希望」、「日本の出番」、「王道」、「一緒に国を救おう」、「友情」、「友ありて」という言葉などを銘として記した本も、中にあります。

▽ブックファースト梅田店(新阪急ビル) TEL 06-4796-7188

*「ぼくらの祖国」10冊
*「海と女とメタンハイドレート」10冊

▽スカイブック大阪空港店(伊丹空港ターミナルビル中央1階。飛行機に乗らない人でも、誰でも利用できます) TEL 06-6856-6647

*「ぼくらの祖国」1冊
*「海と女とメタンハイドレート」7冊
*「希望の現場 メタンハイドレート」6冊
*「青山繁晴、反逆の名医と『日本の歯』を問う」(ワニブックス)2冊
*「救国 超経済外交のススメ」(PHP)2冊
*「王道の日本 覇道の中国 火道の米国」(PHP)3冊
*「日中の興亡」(PHP)2冊

▽スカイブック17G(伊丹空港ターミナルビル・JAL17番搭乗口前。飛行機に乗らない人でも、上掲の誰でも利用できるスカイブック大阪空港店で頼めば、この店から本をすぐに持ってきてくれます) TEL 06-6856-6683

*「海と女とメタンハイドレート」10冊

…青山千春博士とぼくの共著の「海と女とメタンハイドレート」、「希望の現場 メタンハイドレート」は、ぼく単独の本に比べて、まだまだ読むひとが少ないのです。
 公正なフェアな情報が日本国民に伝わるためにも、手に取ってみてください。
 サイン本にあるぼくの筆跡は、その祈りの表れです。
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