On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2020-11-10 00:24:13
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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まさしく覚悟を決めていたとおりの、出だしです。出だしは出だし、読んでもらうのは、これからです。

▼先ほど日付が変わって、11月10日火曜となりました。
 編集者からの連絡では、「わたしは灰猫」は、きのう9日月曜に都心部の書店へ本が搬入され、並び始めるということでした。
 あのわずかな初版の部数で、それがあり得るかなと懸念し、そして覚悟していました。

▼きのう、みなさんから「わたしは灰猫」について頂くコメントを、正直、すこし固唾を呑む気持ちで拝読しました。
「都心部の大型の書店をまわってみたけど、『わたしは灰猫』は1冊も無かった」、「書店員さんに聴いてみたけど、入ってくる予定は未定だという答えばかりだった」というコメントだけですね。
 みなさんには、こゝろの底から感謝します。
 わざわざ書店に行ってみてくださったのですね。

 武漢熱のさなかでも努力されて、工夫されて、サイン会をやる計画が進んでいる書店の名も、そこにはありましたが、同じく「いつ入るのか分かりません」という答えだったそうです。

▼長いあいだ、少なからぬ本を出してきましたが、「都心部の書店に並べ始める」と連絡を受けた日に、こうしたことが起きるのは、まったく初めてです。
 しかし「18年4か月あまりをかけて書きあげて、これか」といった風には、全く思いません。考えていません。
 幾度ものゲラ直しを含めると、印刷の開始までにちょうど18年7か月かかったのならば、ひとにほんとうに読まれるのには、倍の37年かかるのかもしれません。
 あるいは逆に、半分の9年数か月で、読んでもらえるのかも知れません。
 いくら掛かっても、いいのです。登場人物の存在はもはや、不滅です。

▼そして発行部数を決めるのは、出版社の専権事項です。
 また理由がちゃんとあって、そのようにされているのだろうと理解します。

▼同時に、ぼくの職業としての書き手の信念は「本は著者が書きあげて本になるのでは無い。それだけでは、個人的な日記を書いたのと実は変わらない。読者に読まれて、その体内に入り、読者ひとりひとりの体験や自由な考えをくぐり抜けて、読み終わってもらって、初めて、その読者ひとりひとりの本として誕生する」ということです。

 読者も、本が無いことには、読みようがありませんね。
 きのう書店に行ってくださったみなさん、ごめんなさい。

▼同じぼくの書いた本、というだけではなく、ほぼ同じ時期と言っていい10月に発刊した本で、ノンフィクション分野の「きみの大逆転 ハワイ真珠湾に奇蹟が待つ」(ワニブックスPLUS新書)は、書店によっては平積みになっているようです。
 同じく、みなさんから頂くコメントで、それが伺えます。
 文学、物語をめぐる情況が、「わたしは灰猫」の本が1冊も書店に無いという出だしの様子から、よく分かります。
 それ自体、得がたい体験だと考えています。
 
▼少ない、僅かといってもゼロではありませんから、ネット書店で予約してくださったかたには、いずれ届くでしょう。
 その届いた先で、「わたしは灰猫」は、ついに本になることができます。
 きょう本が並ばなかった「都心部の書店」にも、ネット部門があります。たとえばここですね。

 みなさん、きのうはありがとうございました。あらためて、深々とお礼を申しあげます。
 みなさんという存在があってこそ、ぼくも深更、そして未明におのれを励まして、脚力を鍛えるための立ち机にて、今夜も原稿を書くことができます。
 おひとりおひとりが、なんという、有り難い存在でしょうか。





 
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