On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2021-05-03 10:25:04
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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浦先生のこと   日本という国と社会は、知られざる国士、あるいは知る人ぞ知る国士があちこちにいらっしゃいます

▼残念ながら、ぼくはその放送を視ていないのですが、NHKで浦先生、浦環 ( うら・たまき ) 東京大学名誉教授のことをやっていたそうですね。

 浦先生は、先生が東大の生産技研の教授、ぼくが民間専門家の時代に、青山千春・現東京海洋大学特任准教授 ( かつ独立総合研究所の3代目社長 ) から紹介されて知己となり、そこから長いあいだ、連携すべきは連携しているひとです。
 先進ロボット工学の世界的権威にして、特に海中ロボット ( Underwater Robotics & Application ) について泰斗です。
 この浦先生や浅田昭・現東京大学生産技研名誉教授 ( 海中音響システム工学 ) の要請で、ロボット工学の専門家ばかりの学会で、ぼくが日本の海の自前資源について講演を致したこともあります。

▼浦先生は今も、日本の技術力の回生や前進に献身されながら、なんと、帝国海軍の潜水艦を、沈没している海底から取り戻す取り組みをなさっているのです。
 これを国士と言わずして、何と言うべきか。
 浦先生はそのためもあってのことだと思いますが、長崎県の五島列島に住まいを移してらっしゃいます。
 五島列島は、中国の国土浸食から日本を護る最前線のひとつです。
 離島を護るために、不肖ぼくも加わって制定した「有人国境離島法」に基づいて、地域社会を維持すべき重要な島々として国に指定されています。
 ぼくの公設政策秘書のふるさとでもあります。

 この五島列島の海にも、たくさんの日本海軍の潜水艦が沈んでいて、浦先生は、それに関する本も出してらっしゃいます。
 先生から、五島にいらっしゃいと青山千春博士経由で仰っていただいていながら、この過密日程の生活で、まだ行けずにいます。

▼浦先生との思い出のひとつは、新橋の狭い飲み屋です。
 ぼくが、思いがけず国会議員になる前です。

 大切な本のゲラ直しを、いつもの通り、締め切りのギリギリのギリギリで抱えていて、どうしても1時間半以内に仕上げないと本が出せなくなります。
 これもいつも通り、もう取次 ( とりつぎ。版元と書店を繋ぐ仕事 ) への手配も終わってしまっていて、いまさらスケジュールを変えられない絶体絶命です。
 それでも浦先生と呑む約束はキャンセルしたくなかったので、浦先生、青山千春博士、それにぼくの3人で、ちっちゃいテーブルを囲みました。
 編集者がもしも目撃したら、気絶したでしょう。

 日本酒の飲み比べで知られる店でしたから、次から次へとおいしい日本酒を取り替えて呑みながら、焼き鳥も食べながら、おでんも食べながら、しかし、浦先生はぼくがややこしいゲラ直しを赤ペンを動かしてやっているのを目の前4センチほどに見ても、まったくカケラも気にする気配がありません。
 ぼくにどんどん深い質問もされるし、みずから中身の詰まった話もがんがんされるし、青山千春博士も持論をしっかり話すし、ぼくはぼくで、その会話の内容とはまるで関係のない分野のゲラ直しを赤ペンで続けながら、浦先生の問いに答えて・・・ちょっとない凄絶な飲み会でありました。

 それでも浦先生は涼しい顔で、「きょうは実に愉しかった」。
 ちょうど、ゲラ直しも終わりました。
 あとで考えると、浦先生からすれば、同時進行なんて当たり前、ということだったのでしょう。わはは。

▼ぼくは謙遜ではなく正真正銘の怠け者ですから、浦先生という福の神がいらっしゃったからこそ、あのゲラ直しも間に合った、いくらか大袈裟に言えば極限状況のおかげだったと分かります。

 この浦先生の国士ぶりが、テレビで取りあげられたようで、たいへんに嬉しかったです。
 研究者から小耳に挟んだところでは、浦先生はクラウドファンディングも募られているそうです。
 ロボット技術の進展のためかな ? 帝国海軍の潜水艦の引き揚げのためかな、その両方かな ?
 浦先生のホームページをちょっと拝見したのですが、それは分かりませんでした。クラウドファンディングの募集の場所も見つかりませんでした。いまは違うのかも知れません。あるいは、これから募ろうかという話かな ?
 すみません、もうこれ以上は時間を取れません。
 もしも関心のある方は、ここを覗いてみてください。浦先生の生みだしたいろんなロボットも見られて、愉しいですよ。あの飲み屋並みに、たのしいかも。

 自律型海中ロボット「ツナサンド」なんてのも、あります。
 われらが浦先生、食べるのお好きだからナァ。





 
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