On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2021-05-28 04:11:54
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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白馬は放たれ、みんなの元へ

▼きのうの朝、先のエントリーに記したように、最後の3時間で皇位継承まんがの『誰があなたを護るのか 不安の時代の皇 ( すめらぎ ) 』 ( 扶桑社 )の念念校ゲラ直しをすべて終え、国内外との情報交換も短めながら終えて、自前資源メタンハイドレートの開発をめぐる電話交渉をしながら、国会へ。

 国会の構内に入ると、みなさんがよくご存じの国会議事堂の本館 ( とんがり屋根 ) 、その向かって右に隣接する参議院・分館に入りました。
 白亜の議事堂に比べると、現代のふつうの建物です。
 階段を登って、経済産業委員会の開かれるフロアに入ると、まだ「経済産業委員会」という看板が掛かっていません。
 さすがに時間が早すぎるためだろうと考えながら、ぼくは経済産業委員会の理事なので、理事会室へ。
 ところが鍵がかかっています。

 ぼくはこの5年のあいだ常に、国会日程の時間よりずっと早く、現場に到着するようにしているので、こういうことはそう珍しくありません。
 しかし・・・それにしても、事務方 ( 参議院の職員 ) が誰も居ないのはちょっと不思議です。事務方は国会内には到着しているだろうけど、委員会の準備中かなにかで、まだこちらには来ていないのかなと思いつつ、廊下の椅子に腰掛け、パソコンを開きました。
 そして、他の委員会の行政官 ( 官僚 ) に声をかけていました。
 すると、そのうちのひとりが、こう仰います。
「青山センセイ、部屋が変更になっていますよ」

 びっくり。
 大びっくり。
 聞けば、経済産業委員会の審議は、議事堂の本館の、ふだん予算委員会を開く部屋である「第一委員会室」に変更になっているとのこと。
 そして経済産業委員会の理事会も、その部屋の近くに変更されているそうです。
 ぼくはまったく知らされていませんでした。
 とても早く来ているので、移動の時間はたっぷりあります。
 しかし、分館を駆け出て、小雨のなかを走りました。走る必要はない。それでも一種のショックで走らずにはいられない。
 議事堂本館に入り、階段を駆け上がり、重厚な第一理事会室に入りました。
 国会議員はまだ、誰ひとり、来ていません。
 参議院の事務方は、男女ふたり、いらっしゃいました。ふたりとも、ぼくが早いのには慣れているので、ごくふつうに朝の挨拶をしてくれます。
 ぼくの内心は、こゝろの奥は、ちいさな嵐です。
『参議院では、副大臣の遅刻で二度、審議が止まった。ぼくが国会議員の常識的な時間、つまり開会の直前に来ていたら、ぼくの足で走っても、30秒か45秒か1分かは遅刻していたかも知れない。すると審議が止まった恐れがあった。野党が、三度目は許さないと声高に言っていた、そこに嵌まったかも知れなかった。なんたることか』

 その感情を出さないように、事務方に聞いてみると、前日の午後1時に、メールと電話で、ぼくの事務所には部屋の変更を確実に伝えたとのこと。

 連絡ミスです。
 実に5年間、進歩がない。
『こういうときのために、ふだん、無駄な努力と思っても、早く来るようにしていた。その意味があった』と考えつつ、内心のストレスは一瞬、数万倍になり、それを一瞬で抑えて、やがて集まり始めた与野党の議員に朝のあいさつをし、理事会に臨み、そして委員会に臨みました。

 皇位継承まんがの念念校ゲラ直しを、奇蹟の如く完遂した歓びは、みごとにひとかけらも残らず、粉々になりました。
 しかし、これが人生です。

▼この日の委員会はやや長時間の審議です。
 短い昼を挟んで、4時間、続きました。
 その昼の終わりのごく短い時間に、念念校の直しは終わりましたというエントリーを書いて、みなさんに届けました。

 審議が終わると、第一委員会室を飛び出して、衆議院第二議員会館の地下会議室へ。
 経済産業政策をめぐる議連の役員会です。
 しかし着くと、終わっていました。
 国会日程が絶対優先ですから、やむを得ません。
 そして夕方の早い時間に、自由民主党本部の下村博文政調会長の部屋へ。
 これも経済産業政策の関連です。自由民主党の経済産業部会長代理として、佐藤ゆかり経産部会長らに同行しました。
 終了後、下村政調会長と別件で短く、言葉を交わしました。

 自由民主党の本部を出るとき、ふと、皇位継承まんがの『誰があなたを護るのか 不安の時代の皇 ( すめらぎ ) 』におのれが書いた「裸の姿を見よ 前書きにかえて」の一節が、ふいに、何の前触れもなく、浮かんできました。

 念念校のゲラ直しが終わったということは、もう、ぼくの手は離れたのです。
 事実、午後4時半に、担当編集者からショートメッセージをもらっています。
「おかげさまで先ほど、校了しました。発刊は ( 予定通りの ) 6月18日です。見本の本は、すこし早く出ますので、届けます」という趣旨です。
 ぼくは、「我に、万感あり」というひとことだけを即、返しました。

 すべて終わっているのです。
 もはや修正はできません。
 ところが、「裸の姿を見よ 前書きにかえて」の一節が、気になります。
 執筆したとき、その原稿を見直したとき、それがゲラ ( 仮印刷 ) になって、初校ゲラ直し、再校ゲラ直し、念校ゲラ直し、そして念念校ゲラ直し、すべてのときを通じて、ただの一度も気になったことがない部分です。

 これも人生です。
 重荷を降ろして初めて、気が付くこともあるのです。

▼午後7時近くなって、暗い自宅に戻り、わずかな灯りだけ付けて、念校段階のゲラで、その部分を見てみました。
 意を決して、担当編集者に電話し、修正を打診してみました。
 何と、間に合いそうです。
 月刊Hanadaの連載エッセイと同じく、いわば青焼き ( 最後の最後の仮印刷 ) の段階で、最後の修正を入れました。

 協力してくれた版元の編集者、製作担当者には深い感謝しかありません。

▼みなさん、こうして、皇位継承まんがはみなさんの元に届きます。
 もはや完全に、ぼくらの手を離れた今、白馬のように荒野を駆けることを祈るばかりです。
 みなさんのおかげで、予約が千部を超え、価格は100円下がりました。
 それを達成したあと、がくんと、予約は減っています。

 このまんがのほんらいの目標は、ただひとつ。
 皇位継承をめぐって日本人が教えられなかったこと、知らされなかったことを、知り、天皇陛下のご存在が護られていくことです。

 それを考えれば、ここから先が本番です。
 できますれば、おひとりおひとり、ひらりと白馬に乗って、駆けてください。
 ここを活用なさってください。




 
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