On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2022-12-29 21:14:08
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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変わらないということ



▼この写真に、ひよっとしたら見覚えのある人もいらっしゃるかも知れません。
 そうです、12月半ばに防衛増税の是非を烈しく議論した、自由民主党の税調 ( 税制調査会 ) の平場です。
 平場 ( ひらば ) とは、税調の役員でなくても、自由民主党の議員なら誰でも参加できる場、という意味です。

 最初は、増税に反対する議員が圧倒的だったのに、税調が何度か日を変えて開かれる度に、反対の声ががくん、がくんと減っていきました。
 なんと情けない話でしょうか。

▼それぞれの議員の属する派閥から、締め付けがあったからです。

 各派閥がふだん、所属議員にお金を渡して養っているのは、あるいは政務官、副大臣をはじめポストを分配しているのは、さらに国会議員の本分とも言うべき国会質問の機会も分配し、特に予算委員会では質問時間を長めに確保しているのは、ひとつには、こうした時、すなわち今回の税調のように政府方針に反対が噴出したときに言うことを聞かせるためなんだなぁと、あらためて実感しました。

 政治記者の時から分かっちゃいるけど、もう一度、深く体感せざるを得なかった、ということです。

▼不肖わたしは、完全無派閥の議員ですから、もちろん、こういう派閥から配られるお金はゼロです。
 今のような年末になると、特に、まとまったお金が派閥所属の全議員に配られているのですが、当然、それも皆無です。
 無派閥と仰っている議員も、その多くは実は『グループ』に属しています。たとえば菅義偉・前総理は、『菅派』はつくっておられませんが、派閥そっくりのグループは形成されています。

 わたしが、いかなる派閥にもグループにも属さないのは、逆に、こうしたお金を受け取らないためです。
 お金に縛られるわけにいかないのです。
 わたしが耳を傾けるのは、主権者・国民のみなさんです。お金やポスト、そして質問の機会や時間まで配る派閥ではありませぬ。
 ひとつ前のエントリーに、やむを得ず赤裸々に記しましたように、その主権者から返ってくるのは、ほとんどが理不尽な怒声、罵声、際限なき要求だけです。
 それでも、わたしが向かい合うのは、国会議員で居る限り、主権者・国民のみなさんです。

 いかなる政治献金もお断りし、政治資金集めパーティも一切開かないでパーティ券を売らず、団体支持も旧統一教会だけではなく防衛産業だろうが自動車産業だろうがすべてお断りし、後援会もつくらない・・・派閥に属さずカネをはじめどんな利益の提供も受けないのと、すべて同じことです。
 政治献金、パーティはいずれも法が全ての国会議員に保障しているお金集めですが、やりませぬ。

▼だから、わたしという議員は、自律と自由を常に確保しています。

 非常に苦しいですが、必要な政治資金は自分だけでつくります。
 海外に出張して米国政府や米軍、諸国の政府、軍部、あるいは安全保障や資源エネルギーの担当部局と直に英語で議論し、日本の国益を実現するために交渉することを含め、政治活動に必要な資金は、要は、筆一本でつくります。
 それが基本です。
 つまりみずから骨を削ってでも続ける作家活動で、つくるのです。

 歳費をはじめ公金は、国会の全日程に出て、本会議と委員会に参加するという最小限度の議員活動を、賄うことができるだけです。

▼国会にまったく来ない議員がいる、という問題がありますが、それだけではありません。
 本会議や委員会の冒頭に出席して、審議の途中で居なくなり、採決の時だけちゃっかり帰ってきて、記録上は何も問題が残らない議員も、著名な議員を含めて野党や無所属のかたに、かなり居ます。
 そういうことをしている議員は、いつも同じ議員です。こうした議員も全員、主権者に選ばれて国会議員になるわけです。投票なさった主権者が、これをご存じとは思えません。

 歳費をはじめ公金を受け取っている以上は、本会議と委員会に全出席し、それも上記のようなズルい中抜きではなく、主権者が知らずとも、天に恥じない行動に徹するのは、あまりに当たり前のことです。
 先日、護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 ) の初当選組の議員たちと懇談しているとき、わたしが参議院議員の1期目6年のすべてを通じ、同期議員でただひとり予算委員会の委員を務め、長いときは朝9時から夜7時まで、6年のあいだトイレにも行かなかったことを話したとき、みな、たいへんに驚かれました。

 身体には、もちろん良くないです。
 だから初当選組の議員のみなさんには「トイレは、委員会の理事の諒解をちゃんと得たうえで、行ってください」とお話ししました。
 なぜ、身体に良くないことまでやったのか。

 国会審議が神聖であることを、この身をもって示す、与野党を問わず議員に無言で語りかける、個人攻撃とかは決してせずに、おのれで示す、それだけが目的です。

▼今はもう、この恐ろしい年も、12月29日の夜です。
 2月にウクライナの赤ちゃんから妊婦、お年寄りまで、ロシアの戦争会社「ワグネル」などに虐殺されはじめ、7月に安倍元総理が参院選の遊説で、わたしと機内で話した直後に、暗殺されました。
 毎年、いつだって、世界で恐ろしいことが起きるのです。しかし、ことしはまだ終息しない武漢熱も含めて、あまりにも恐ろしい年でした。

 しかし、どんな年でも暮れゆくのです。
 そこで、このブログでも、いくらかは回顧しようかと思いました。
 回顧して、今年いちばん情けなかったのが、防衛増税の税調で反対派の議員が減っていったことでしたね。

 回顧と言っても、このブログの他に話す場はありません。
 テレビ番組からのオファーは一切、途絶え、ラジオもニッポン放送ほかが稀にあるだけ、文筆も、月刊Hanadaからまさかの連載打ち切り、国会議員の現場を主権者・国民のみなさんに伝えようにも、発信の場は、どんどん狭められて、おのれ自身でわずかな抵抗のように発信するほかありませぬ。
 この傾向がますます強まった年でもありました。

 献金も受け取らない参議院議員がこうして現実に居るのですが、居ても居ないことにしたい日本の既得権益の社会による欲求が、さらに強まっていることを、ごく客観的に、静かに受け止めています。

▼だから、本音のわずかな一端を述べた、ひとつ前のエントリーの最後に以下のように書いたのは、その、おのれでやるほか無い、わずかな主権者への伝達なのです。

 こゝろある日本人は、ここに来てください。→ これは独立講演会です。
 こゝろある日本人は、この仲間になってください。→ これは東京コンフィデンシャル・レポート(TCR)です。
 こゝろある日本人は、これを視てください。→ これは「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」です。
 こゝろある日本人は、これを読んでください。→ これは最新の本の「夜想交叉路」です。

▼さて、防衛増税を議論した税調に話を戻すと、その税調で増税反対派がみるみる減っていったと、メディアがあざ笑うように報道していましたね。
 良く言いますよ。
 そのように議論をリードする役割の一つを担ったのが、オールドメディアでした。

 最初の頃こそ、税調が終わったあと、議員が自由民主党本部を出ようとすると、わたしのように反対を明言する議員にも、わずかながら取材がありました。
 しかし派閥の締め付けが始まると、記者諸君は、増税賛成を言う議員にどっと集まるようになりました。
 あたかも派閥と連動しているかのようです。

 わたしが増税賛成の議員たちとも一緒に党本部を出るとき、わたしは居ても居ないのです。
 増税問題に限りません。
 ずっとわたしが超少数派として続けている安倍元総理暗殺事件の真相究明にしても、記者が頼るのは派閥議員だけです。
 わたしはこの世に居ないのです。居ないから何もしていない、そのようにされています。

 空想ではありませぬ。
 18年9か月、最前線の記者を務め、はっきり申して特ダネも頻繁に取ってくる記者でした。
 メディアの手の内、現実は知り尽くしています。

 申し訳ないですが、評論家や学者には、メディアのほんとうの内情は分かりません。メディアは他を批判することが仕事、自分のことは批判しないし、内情を外に漏らさないことについては、会社が違ってもみごとに共闘しているので、外部からは分からないのです。
 仮に記者経験があっても、短期だったり、主流に居たことがないと、やっぱり分かりません。

 知り尽くしていると明言できる立場で申せば、税調で反対派を減らしていったのは、派閥とメディアの共作です。
 派閥と癒着し利害が一体化した派閥記者、それに引き摺られる他の応援組の記者、そしてこれまでのビジネスを変えたくない会社の上層部、これらメディアと派閥が手を組んでいるに等しい。

 わたしがメディアをオールドメディアと呼ぶのは、警告です。
 新聞を定期購読している日本人は、還暦を過ぎた世代ばかりなのです。50歳代ですら、もうあまり居ない。
 だから、明日なき産業の典型です。
 若い、意欲ある記者ほど、それに早く気づいて欲しいという願いを込めて、オールドメディアと呼びます。

 良き記者の居ないところに、良き民主主義社会は、決してありません。
 志の低い仕事に甘んじていないで、ほんらいの目的、主権者・国民のみなさんに伝えるべきを伝える、それに徹してほしいとこゝろから祈っています。

 ひとつ前のエントリーでありのままに述べた怒声、罵声、際限なき要求について「それは工作員の組織的な仕事だから気にしないで」という趣旨の善意のコメントが増えています。
 その善意に感謝します。
 ただ、事実は違います。
 日本人による反日の工作活動、外国の工作活動も、確かにあります。
 しかし、こちらも情報、インテリジェンスのプロフェッショナルです。
 工作活動は、区別がついています。

 多くは、前記のマスメディア、あるいはほんとうはメディアと噂話から情報を取っているネット、それらの情報によって誤解している主権者・国民のみなさんなのです。
 よく「テレビの影響はまだまだ多いから、それに出ないのが問題だ」というコメントも来ます。
 議員になった最初に、TVタックルと朝まで生テレビを断ったのは事実です。それぞれ、理由があってのことです。
 しかし、覚えていらっしゃいますか ?
 議員になったあとも、関西テレビの番組には、東京から大阪へ行って、参加していましたよね ?
 民間の専門家当時に、関テレの報道番組「アンカー」でおよそ30分、制限なく語らせてくれて、それが9年半続いたことに恩義を感じているからです。

 ところがこの番組でたまに論争した、タレントから政治家になりタレントに戻った人が、わたしの番組参加を嫌がっているという話が関係者からあり、わたしはもちろん争わず、そのままになったのです。
 こういう人は必ず、芸能プロダクションに属していて、テレビ局は芸能プロとの深い関係がなにより大切ですから、当然、タレントが優先です。

 派閥と記者、テレビ局と芸能プロ、これらも一例に過ぎず、日本はどこもかしこも癒着社会です。
 だからかつては戦争に負け、今は沈みかけています。
 その典型的な現実にわたしは囲まれているから、前掲の4つの自主発信に、接してくださいませんかとお願いしているのです。
 純然たる小説、文学の「夜想交叉路」 ( たとえばここ ) にしても、にんげんの本質、日本人の根っこ、さらに百年にわたる日本人の歩みを包括した、発信のひとつです。

▼わたしは、新しい年も、苦闘に挑むことを変えません。
 民間の専門家時代も、国会議員になってからも、なにひとつ変わっていません。
 創業社長を務めた独立総合研究所も、寄付をお断りし、「民間会社が私利ではなく国益を追求する。国益を官だけに任せているから、日本がおかしくなる」という社是を掲げていたのです。

 どんなに苦しくても、変わらない。
 そのことに、ほっと安心なさるひとがひとりでも増えれば、充分に報われます。



 
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