On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2007-12-27 11:47:23

追伸の2




 もっと、ありのままに書かねばなりませんね。

 テレビなどのメディアで、裏取りのされた事実が事実として、なかなか伝わらないことがあるのは、ぼくの話しぶりなど、もろもろが、どうしようもなく下手くそなのが第一の原因です。放送が終わると、実際に、後悔ばかりが次から次へと沸いてきます。おのれが情けない。
 ただ、それと同時に、日本国のどうしようもなく深い権威主義の壁もあります。

 官僚だった経験が一度もない、純然たる一民間人が、国や自治体の安全保障に関わると…怪しい、となる。
 旧財閥系のシンクタンク、三菱総研にいたときは、怪しくなくて、独立系のシンクタンクを同志と一緒に創建したら、とたんに怪しいとなる。
 大組織の共同通信で記者をしていたときは、情報入手の絶対のルール、モラルとして情報源を明かさないことが社会的にも当然だったけど、共同通信を去って情報に接し、それをもとに発信すると、情報源を明かさないから怪しい、となる。

 このままでは、わたしたちの祖国は、いつまでも官僚をあがめ、旧財閥のヒモを必要とし、大組織に属さず自立しようとする人間はむしろ信頼されない国であり続けるのではないでしょうか。

 もう一度申せば、事実が事実として伝わらないことがあったときの最終責任は、すべて百パーセント、ぼくの下手くそぶりにあります。
 権威主義の壁を打ち破れないのも、下手くその一種ですから。

 ただ、いつかは、権威主義にまみれていない、みんなが自律している国民国家に変わりたい、変わってほしい。
 それが、ぼくの短い生が終わり、ぼくが跡形もなく消え去ったあとでも、いいから。
 ぼくのように下手くそな人間は、きっと、その新しい国民国家をこの眼で見る権利がないのだろうと今、思います。

 ビートたけしさんが、かつてTVタックルを収録するスタジオで、ふと「あの人は下手くそじゃん」と、ある評論家をさして、小声で漏らしていました。
 ぼくに語りかけたのじゃなくて、たまたま耳に入りました。
 もう何年も前のことです。
 ははぁ、テレビ参加(出演)にも、上手下手がやっぱりあるんだなぁと、ぼくは素朴に感心し、それ以来、テレビとかそういうことだけじゃなく、自分の万事にわたる下手くそぶりを見つめています。




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