2008-03-20 02:22:07
勇気
▼いま春分の日、3月20日の未明2時8分。
広島県は呉市のホテルにいる。
雨もやんで、軍港の街は、水辺に灯りを映して静まっている。
去ったばかりの昨日、19日の水曜日には、いつもの水曜と同じく大阪で関西テレビの報道番組「ANCHOR」の生放送に参加し、ぼくのコーナーではチベットの反乱をめぐって話した。
コーナーは、テレビ番組としては長い15分ほどが割り当てられているのだけど、それでも、いつものことながら時間が、ない、ないのだ!。
カメラの背後のフロア・ディレクターや番組ディレクターが、時間切れという趣旨を書いた紙をかざして、ぼくの目を惹きつけようと懸命だ。
スタジオ内に「時間が足りなくなるっ」という異常な緊張が満ちるのを肌で感じながら、それは視聴者には関係のないことだから、視聴者に最低限、伝えるべきはどうにか伝えたいと、内心ではひそかに冷や汗を流しながら、言い足りないところを残しつつも話し終えて、どうにか時間内に収まったと、ほっとして、最後に「中国を一方的に非難するんじゃなくて…」と言いかけたら、キャスターのコメントが入って、ぼくは言葉を飲み込んだ。
コーナーの最後は、やはりキャスターや、ほかの出演者の自由な語りがあってほしいし、そのキャスターのコメントは印象深い、明快なコメントだったから、ぼくが言葉を続けられなくても、それはそれでいい。
ただ、ぼくが「中国を一方的に非難するんじゃなくて…」の後に続けたかった言葉は、「事実をあくまでもフェアに観て、考えたいのです」ということだった。
ひょっとして視聴者には、「中国にも言い分はある」と青山は言葉を続けようとしたのかと、誤解するひともいるかなぁと、関西テレビから新大阪の駅に向かうタクシーのなかで気になった。
チベット民衆の反乱をめぐっては、中国にもそれなりの言い分があるなどと偽善的に認めるわけにいかない。日本が日本であるように、チベットはチベットであり、中国ではないのだから。
ま、テレビの番組に参加したあとに、ああ言えば、もっと伝えるべきが伝わったのにナァと後悔するのは、いつものことです。
ただただ、ぼくがまだ下手くそなだけ。
コーナーは、今回が98回目だった。100回まで、あと2回。
このごろ、「コーナーをみるうちに、自分の頭で考えるようになった」という趣旨のeメールや書き込みをいただくことがあるのは、魂から、うれしく感じる。
きのうの生放送のあと、少年時代にプラトニックな女ともだちだったひとから「あのコーナーで、自分には関係ないと思っていた政治に、目を向け耳を傾けられるようになった」というeメールをもらって、自分の下手くそぶりを悔いる気持ちが、やわらいだ。
ありがとうっ。
そして、へたっぴで、ごめん。
▼いつもは関テレから帰京するのだけど、きのうは新幹線で広島へ。
車内で原稿を書いているうちに、新幹線が強風で遅れていると知って、広島駅に着くと、同行の独研・自然科学部長といっしょにダッシュで走って、在来線の普通電車へ。
思いがけず、満員電車。
それに揺られつつ、またモバイル・パソコンを開いて原稿を書き続け、呉駅で降りた。
もう夜の10時になろうとしていた。春の小雨が降っていた。
きょう夜が明けると、呉から江田島に移動する。
桜は、すこしは咲いてるかなぁ。
江田島には、海上自衛隊の幹部候補生学校がある。
海軍兵学校であった帝国海軍の時代には、イギリスのダートマス、アメリカのアナポリスと並んで世界の三大海軍兵学校と呼ばれた。
その江田島で、幹部候補生たちの卒業式に列席する。
もちろん、海上自衛隊と何の利害関係もない。
なぜか招待状をいただき、お受けした。
正直、この3月の年度末の季節は、すべてのシンクタンクにとって地獄の季節だ。
ありとあらゆる調査・研究プロジェクトが報告書の締め切りを迎えるから。
東京へ帰らずに西へ向かっている場合じゃない。
誇張じゃなく、1分1分を惜しんでも、まだ、まったく時間が足りない。
徹夜の続く夜に、ふとぼんやり、おのれにはひとつの身体、ひとつ分の時間しかないのだから、どうやって割り振っていけばいいのかと、呆然とすることもある。
だけども、この卒業式への招待だけは、どうしても受けたくて、受けた。
もしもぼくが戦前に生まれ、戦前に思春期を迎えていたら、作家になるか、海軍軍人になるか迷い悩んだあとに、おのれひとりで、ものを書いているわけにいかないと、この江田島の海軍兵学校を受験し、幸いにして難関をとおれば、どうにか卒業して海軍少尉となり、戦闘機に乗り、そして、そそっかしいぼくはあっという間に、昇進も、ろくな戦果もないままに、さっさと戦死しただろう。
これはつまり、かつて、わが母が唱えていた説でもある。
「だからね、今のあんたの苦労なんて、さしたることもない。生きてるんやから」
その思いがあるから、江田島の卒業式への招待を初めていただいて、即、受けた。
▼さて、今朝も早起きせねば。
あと2時間ほど経って身体が要求すれば、仮眠しよう、いろんな後悔は、うずめて。
そして夜が明けて今朝に会う、卒業生たちよ、もののふの誇りもて遠洋練習航海に旅立ってほしい。
イージス艦の衝突事故で深く傷ついた海上自衛隊よ、悔いが希望を生む。
いつの日か、この国の永い2千年の歴史で初めて、国民軍が誕生し、国民海軍となる。その日に備えて、謙虚に、フェアに、わたしたち主権者とともに歩もう。
あらためて、思う。
テレビ番組に参加するときも、ただ、ほんらいの目的に集中したい。
スタジオにいるときの、ほんらいの目的とは、ひたすらに視聴者、国民に伝えるべきを伝える。
それだけだ。
おまえがどう、みられるか、できればカッコよくしたい。そんな偽の目的は、命を曇らせる。
そして、番組にはさまざまな制約があり、番組スタッフのためにもさまざまな配慮が欠かせない。
それは、大切に踏まえつつ、ほんらいの志は貫こう。
たとえばチベットの反乱をめぐる、ほんらいの志、それは仏とともに生きてきた優しい心根の民衆の、チョモランマの朝のような勇気を支えることにある。
※写真は、まだ足の骨折で松葉杖をついていたころ、東京の晴海埠頭へ、東京海洋大の調査・研究・実習船『海鷹丸』(うみたかまる)を訪ねたときです。
シンクタンクである独研(独立総合研究所)の、研究本部・自然科学部は、東大と並んでこの東京海洋大とも連携し、日本の革命的な海洋資源、メタンハイドレートの探索に取り組んでいます。
われらがパートナー、海鷹丸に敬意を表しに行ったのですが、ギブスの右足と松葉杖を無意味に掲げている、ただの怪しい奴ですね。
ふひ。
空と海が青かった。
海上自衛隊にとっても、漁船にとっても、大学の研究船にとっても、帝国海軍にとっても、海は青い。
- 2014-12-31 19:29:41
- さらば
- 2014-12-30 23:57:22
- あらためて祖国へ
- 2014-12-30 17:37:16
- 簡潔にお答えしておきます
- 2014-12-26 12:00:17
- みなさん、一気の情報です。(サイン会福岡の曜日を訂正しました)
- 2014-12-26 06:46:31
- きょう欧州出張へ出発なのですが…
- 2014-12-23 22:08:28
- 知らせてくれ、というリクエストが多いので…
- 2014-12-23 12:45:01
- 実はぼくも今、知ったのですが…