On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2008-05-16 22:46:56

とうとう、お知らせできます




▼ぼくは作家です。
 ぼくの本業は、ひとつが、独立系で株式会社組織のシンクタンクの社長、そして、もうひとつが物書きです。

 ところが4年間、1冊も本を出していません。
 2004年に「日本国民が決断する日」を出したのを最後に、出していません。

 物は書いています。
 たとえば月刊の経済誌に連載記事を書いています。ときどき論壇誌にも求められて書いています。
 もちろんプロとして書いていますから、作家であることに、変わりはないのかも知れません。

 しかし、ぼく自身が自分に課すのは、単行本を出せないなら、もはや作家ではないということです。
(ほかの書き手のかたのことは、一切、関係ありません。あくまでも、ぼく自身が自分に課したモラルです)

 なぜか。
「青山さんの本を読もうと思って書店に行ったのに、もう1冊も売っていない」という読者の声が、繰り返し届いているにもかかわらず、それに応えられないのでは、プロとは言えません。


▼出版社からの依頼は、計6社からあります。

 そのうち、ノンフィクション分野としてはもっとも早くから依頼があり、諦めずに単行本の原稿を求め続けてくれたPHP出版から、6月に、ついに新刊書が出せることが、ほぼ固まりました。

 きょう5月16日の金曜日、午後3時半、PHP出版の担当編集者に、全文の原稿を送付できたからです。

 来週の水曜日に、これがゲラ刷りになって出てきます。
 それを月末より少し前に、赤(手直し)を入れて、編集者に無事に戻せば、6月中に書店に並ぶことが実質的に、確定します。

 きょう送った全文は、原稿に関してだけは完全主義を採るぼくとしては、まだまだ不満いっぱいの段階の仕上がりですから、極めて短期間に全文に直しを入れるのは、充分に重い仕事量です。
 そしてもちろん、そのあいだに他の(数えてみたら)54種類ほどの仕事も同時進行ですから、まだまったく油断はできません。
 それでも、ここまで来たら、どんなに無茶無理をしてでも、編集者との約束通りに6月出版を実現します。


▼タイトルも、すでに決まっています。
 しかも、ぼくが私案として決めていた案を、ズバリそのままPHP出版でも最終決定してくれました。

 たとえば、4年前の本、「日本国民が決断する日」も、ぼく自身が考えたタイトルです。しかし、そう決めてもらうまでは、相当に苦しい交渉が続きました。
 これは、出版の世界では、ごくふつうのことです。
(それとぼくとしては、長いサブタイトルは、なるべくなら付けたくなかった)

 今回のように、タイトルをめぐって紛糾せずにすんなり、ぼくの案が通ったのは初めてです。
 ちょっとだけ、よい予感です。

 ここで、その決まったタイトルも明らかにしたいところですが、我慢します。
 PHP出版から、書店などに公式にお伝えしてからにします。


▼今回は、表紙のデザイン原案も、ぼくが自分でつくります。
 写真も、たくさん入れます。


▼さて、これでなにかを達成したのではありません。
 そうではなくて、作家として再生する戦いが、これでやっと始まるということです。

 ぼくはノンフィクション作家ではありません。
 分野を定める作家にはならないつもりです。

 文藝春秋社が、まったく無名だったぼくの書いた純文学小説を、かつて2002年8月に、異例な形で単行本として出版してくれました。「平成」です。

 その前の本は、テリー伊藤さんとの対談本でした。
 だから、この「平成」の出版が、作家としてのまさしくデビューでした。

 独立総合研究所の社員たちが思いがけず、寄せ書きまで作ってくれてお祝いしてくれたのを、鮮明に思い出します。

 実は、この後の小説の文章も、ずいぶんと書き進んで、完成はせずにパソコンの中に眠っています。
 作家として再生するなかで、これを完成させます。

 ほかのノンフィクションの諸編も、かなり書いているのに未完成のまま放置しているものが、数冊分あります。
 これらをすべて、年末に向けて、完成して、どしどし新刊書にしていきます。


▼物書きとしてのぼくを、ずっと変わらず支援してくださっている、みなさん。
 みんな。

 ほんとうはまだ油断禁物だし、早すぎるけど、やっぱり今夜、最初のお礼を、深々と頭を下げて申します。

 きょう全文を送った原稿は、日中をめぐるノンフィクションです。
 中国をめぐる現実が凄まじ勢いで動くだけに、苦吟に苦吟を重ねて、ほんとうに苦しみ抜きました。

 奇跡のような辛抱強さで待ってくれた、まだ若い女性編集者にも、感謝…あ、これは、ほんとうにまだ早い。
 ゲラ直しをきっちり、締め切りまでに終え、写真や図版の準備も、表紙デザインも全部、締め切りまでに終えてから初めて、ぼくには、彼女にお礼を言う権利が生まれます。

 でも、まずは、みーんな、ありがとうっ。





  • 前の記事へ
  • 記事の一覧へ
  • 次の記事へ
  • ページのトップへ
  • ページのトップへ