On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2008-10-09 06:59:21

聴く




 すべてのことのなかで、一番はっきりしているのは、ぼくの残った命を、ただ一度切りの命のうち、わずかに残った時間と力を、祖国と世界に最後の一滴まで捧げたい、そのことだ。

 では、どうやって捧げ尽くすのか。
 それをめぐって、みんなに聴いてみたいことがある。
 みんなの意見を広く聴いてみたいことがある。

 ほんとうに聴くことができるのかどうかは、まだ分からない。
 個人としてのぼくは『勘弁してほしい』と思うことに関して、だから。
 しかし、もしも、聴くことになれば、みなさん、感じること、考えることをそのまま、ぼくに伝えてください。

 ぼくの考えの中心のひとつは、欲で動いて当然と思われているところへ、おのれの欲、すなわち名誉欲、出世欲、金銭欲、それから、自分だけはいつまでも生きているはずだと知らず知らずのうちに思い込む欲から来る保身の欲、それらから自由になって献身する生き方もあるという一石、ほんとうに小さな一石を投げて、そして死すことだ。

 それは、むしろ日本のたいせつな伝統だ。
 幕末という国家の青春に、次から次へと現れた人材は、多くがそうだった。
 坂本龍馬や高杉晋作だけじゃなく、無名の草莽(そうもう)の志士たちも、みなそうだった。
 あれからたったの140年、150年だ。
 日本人の王道は変わらない。

 武士道といふは死ぬことと見つけたり。


 二千八年、平成二十年神無月九日木曜日、朝六時五十分、出張先の北陸、敦賀市にて。





 あたたかい一杯のコーヒーを、ぼくに飲ませたいと思うひとの気配を、今、こうやって書いていて感じました。
 ありがとう、こころから。




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