On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2008-10-23 00:57:00

近況というやつかなぁ、これは




▼ひさしぶりに東京・湾岸の夜景を眺めながら、原稿書きです。
 新刊書の原稿と、独研(独立総合研究所)から配信している会員制レポートを、同時進行で書いています。



▼振りかえれば、10月14日の火曜に羽田空港から出発し、大阪の近畿大学経済学部での講義をはじめ、なかなかタイトな日程をどうにかこなした。
 翌15日水曜は関西テレビの報道番組「アンカー」に参加(生出演)し、その翌16日木曜には特急電車で福井県敦賀市に入り、独研(独立総合研究所)の研究員たちと大切な調査・研究プロジェクトに専心した。
 中身は機密です。

 独研の社会科学部と自然科学部の若い研究員たちが、ずらりと揃って役割を果たしているのをみると、胸の奥で勇気づけられた。



 その夜は、敦賀市のホテルで徹夜で新刊書の原稿を書こうとして、夜明けにパソコンに突っ伏して眠ってしまい、首の右を痛める。
 首は右にはまったく動かなくなり、左も動かしにくい。
 要は横を見るときには、首ではなく身体全体を動かすほかない。
 その動かない首のまま、17日金曜も敦賀市で調査・研究プロジェクトに専心し、夜に新幹線で帰京。

 しかし帰宅はせず、東京駅からほど近いところで開かれていた、若いひとたちのための講座によたよたと駆けつけて、ミニ講演をして、深夜になってからようやく帰宅。
 首は依然、動かない。
 だけど誰も気づいていないはず…と思う。



 あくる10月18日の土曜だけ東京にいて、朝から独研の社有車を運転して出かけ、情報源と会う。気づいたら3時間。

 午後に3週間ぶりぐらいにジムへ行き、トレーナーに動かない首のことを話す。
 人に首の一件を話すのは初めてだ。
 トレーナーに首と全身にスポーツマッサージを施してもらったあと、いつもと変わらないメニューでバーベルやダンベルを挙げる。
 首に痛みとショックは走るけど、トレーナーと相談し、指導を受けながら、最後までメニューをこなす。

 夕方からは、会員制レポート「東京コンフィデンシャル・レポート」のための情報収集と、新刊書の原稿書きに取り組む。



 あくる10月19日の日曜の朝、首は動かないまんま。
 トレーナーは、全身の筋肉を動かしたから大丈夫になるはずと言ってくれていたけど、残念でした、駄目でした。
 小さい声で本音を言うと、大丈夫どころか、悪化している。

 しかし独研(独立総合研究所)の秘書室が組んでくれた予定通りに、午前に東京を離れ、伊丹空港から車で神戸市の西部に入り、神戸流通科学大学の明るい雰囲気の学園祭で講演した。

 講演のあと、聴講されたかたから「さまざまな年代、幅広い世代のひとびとが聴きに来ていて、それに感激した」という趣旨のEメールをもらい、内心で共感した。

 みなさん、わざわざ聴きに来てくれてありがとうございました。
 講演のなかで、「お聴きになっているみなさんも、年齢は関係なく、ただ一度切りの人生の尊い時間を使って聴いていただいています」と述べましたが、いつも、ありとあらゆる講演のとき胸の内でそう思うのです。



 その夜は神戸で泊まり、動かない首でパソコンを覗きこんで、締め切りが来ていた論壇誌『VOICE』のための原稿を書く。苦吟する。
 金融危機とロシアの動きを軸に据えて、世界を読み解くことを試みている原稿だ。
 論壇誌の原稿であっても硬くならないように、そして論壇誌らしく現場の事実と分析、予測の組み立てを、広い視野で大きな流れとして捉えて、細部もかっちりと。
 そこが苦吟のしどころ。
 完璧にはいかなくとも、すこしは志すところに原稿を近づけたい。



 翌日の20日月曜には、車で神戸市の中心・三ノ宮へ向かう。
 車の中では、まだ脱稿できていない『VOICE』のための原稿の続きを書く。
 車内のほかの人が気を遣って静かにしてくれているのが、ちょっと辛い。

 三ノ宮に着き、生田神社で講演する。
 藤原紀香さんが結婚式を挙げた神社だそうな。
 神戸生まれのぼくが、幼いころに遊んだ湊川神社も近い。

 これは、全国の若手の神主さんたちの研修会だ。
 ずいぶんと講演してきたけど、神社で講演するのも初めてだし、神主さん、神職の集まりで講演するのも、初めてだ。
 なんと驚いたことに、この若手の神主さんたちの集団には、霊気がありありと漂っている。
 それも、これまでに遭遇してきたような、ひとの魂というより、もっと自然界に近い霊気という感触がある。
 これが日本の伝統なのか、日本の根っこなのか、あまりに不思議で、講演しながら実はちょっと緊張していた。

 学徒出陣をどう捉えるかについての研修会だったから、ふだんの講演とはすこし中身を変えて、沖縄戦、戦艦大和の最期、それから硫黄島について話し、動かない首のまま、懇親会にも参加した。
 そのあと別な場所で別なひとたちから政局の行方について、ちょっとディープな取材をし、深夜、車で神戸から大阪へ。
 車の中でも、モバイルパソコンで『VOICE』の原稿を書く。
 首はずーっと動かない。
 ま、反乱を起こしているというか、警告を発しているというか、頑固な首さん。

 大阪の定宿に着き、ぼくの身体をよく知っている練達のマッサージ師さんに、首をほぐしてもらう。
 しかし、ほぐれない。
 凄いな、がんばるな、首さん。



 あくる10月21日火曜は、定宿で、会員制レポートのための取材と同時並行で『VOICE』の原稿を書き続け、終わらないまま、車で近畿大学経済学部へ向かう。
 大学に着く直前に、ようやく脱稿し、送信。
 やれやれ。
 苦吟しすぎだよ、おまえは。

 揺れるタクシーの中で、あまりにも根を詰めて書き続けたために、ついにすこし気持ち悪くなり、講義を始めるときには、動かない首と、ぐるぐる回る眼、うっぷと吐き気の胸というか腹、というありさま。
 ふひ。

 しかし当然ながら、講義はいつものように完遂して、講義のあとは熱心な学生たちの質問に答える。
 学生たちも、貴重な人生の時間を費やして、受講している。
 講義しているうちに、吐き気はどこかへ消えた。

 近畿大学から、やはりタクシーで関西テレビに向かい、今度は車中で、新刊書の原稿書きと、会員制レポートの執筆に戻る。
 それにしてもタクシーは揺れる。

 揺れるなかで、これだけモバイルパソコンで書いて、よく乱視にならないなと、自分でも思う。
 しかし眼に異常は起きなくても、かつてはタクシーの中は頭を自由に遊ばせて、発想を喚起する時間だったことを思えば、いずれ、それに戻したい。

 関西テレビで、報道番組「アンカー」のメインキャスターのおふたり、スーパー人気アナのヤマヒロさん、大器の若手アナの村西利恵ちゃん、それにプロデューサー、ディレクター、ADらスタッフ勢揃いで、明日の放送のための議論を活発にする。
 動かない首だけど、その上に乗っかっている脳みそは、なんとか動かそうと、内心で必死じゃわい。
 首のことは、やはり誰も気づかないはず。
 自分で勝手にパソコンに突っ伏したのですからね、ひとに言ってどうする。

 大阪の定宿に戻り、二晩連続で、同じマッサージ師さんに、ほぐしてもらう。
 ようやくにして、すこし、ほぐれ始めた。
 多分、こうなれば、あとは自前の回復力で、急角度で良くなるはず。うん、頼むよ、わが首さんよ。



 翌10月22日水曜は、まず早朝に、福岡のラジオ局「RKB毎日放送」の生番組で「ニュースの見方」というコーナーに電話でレギュラー出演する。
 そのあと、新刊書の原稿と会員制レポートに取り組みつつ、関テレのディレクターと電話で打ち合わせ。

 この長電話の打ち合わせというか議論は、かなり辛いものがある。しかし放送の質を最大限に上げるためには、通らねばならないプロセスだ。
 その前後には、生放送に備えて、最新の情報の仕入れや、すでに仕入れていた情報の再確認などを電話やEメールで続ける。

 それはいつも通りなのだけど、今週はいつもより時間がかかって、プールで泳ぐ時間がなかった。
 ふだんは視聴者への礼儀として、放送前にはプールでわずかでも泳いで、脳みそを含めた全身をリフレッシュさせるのだけどなぁ。

 夕方には関テレに入り、報道番組「アンカー」の「青山のニュースDEズバリ」のコーナーで、今回はアメリカ大統領選挙について話す。
 よその国の大統領選挙について話しているのだけど、ほんとうのテーマは、わたしたち日本国民がアメリカと世界の歴史的な変化を、祖国の自律と、ほんものの独立へ活かしたい、という願いにある。
 いつものように時間との戦いだ。
 どこまで、その願いを伝えられたかなぁ…。
 とにかく、ぼくの話はすべて、みんなが自分の頭で考えていただくための問題提起だ。問題提起にすぎない。

 テレビカメラは、いろんなものをありありと映し出してしまうけど、首はそこそこ動くようになっていたし、視聴者には異常なくみえた…はずです。

 生放送のあと、伊丹空港から飛行機に乗る頃には、首はほぼ動くようになった。
 やれやれ。
 首さんの長い抵抗も終わりました。無駄なレジスタンスでしたね。はは。



▼そして無事に羽田に着き、ようやくにして今、東京・湾岸の夜景を久しぶりに見ながら、新刊書の原稿書きと会員制レポートの執筆に戻っているのです。



▼というわけで、「日中の興亡」に続く新刊書、「王道の日本、覇道の中国、火道の米国」の原稿はまもなく仕上がります。

 仕上がったら、出版社の努力によって、日を置かずに緊急出版されるはずです。
 その頑張ってくれる出版社は、「日中の興亡」と同じくPHPです。

 新刊は長いタイトルですが、必然性のあるタイトルだと思っています。
 火道は、かどう、ぼくの造語です。
 意味は、できれば新刊書をパラパラとめくってみてください。

 実はもうアマゾンにアップされていて、予約を受け付けています。
 もしも、よろしければ、どうぞ。

 この長い出張中、伊丹空港に寄るたびに、ANAのターミナルビルの書店では「日中の興亡」がベストセラーの4位、JALのターミナルビルの書店では3位に掲げてありました。
 ひえー、意外。
 首の動かない情けないぼくでも、正直うれしかったです。
 新刊は、その「日中の興亡」の続編でもあり、金融危機と世界の運命に踏み込んだ新しい書でもあります。



▼ことしは、一つ前の書き込み「聴く」ですこし触れた、新規のことも検討課題かもしれませんが、物書きの原点に戻っている年でもあります。
 もっと書きます、もっと出します。







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