On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2009-06-06 03:04:34

あ、書いていませんでした





▼下の、いちばん新しいエントリーの写真、なんの写真かを書いていませんでしたね。

 これは、つい最近に、横須賀の潜水艦隊司令部を訪ねて、日本の最新鋭の潜水艦のひとつ「八重潮」(やえしお、八重に重なる潮の意。美しい日本語です)に、独研(独立総合研究所)の社員たちと一緒に、搭乗したときの写真です。

 下の写真では、向かって左側が、潜水艦隊幕僚長の三木伸介・海将補(国際社会では海軍少将   Rear Admiral )、そして右側が、八重潮の艦長(the captain)の藤田泰三・二等海佐(国際社会では海軍中佐 Commander)です。


▼下の写真は、八重潮の甲板上で、艦尾の旭日旗を背にして、撮っています。
 海の色と見分けがつきにくいですが、足もとは、かなり広い甲板ですね。
 広くても潜水艦ですから、甲板は丸みを帯びていて、気をつけないと海に落ちます。

 上の写真(このエントリーの写真)は、桟橋に降りて、八重潮のセール(潜水艦の真ん中あたりで上に突き出た部分)を背にして、三木少将とふたりで撮っています。
 写真の左脇に、礼式をもって見送ってくれた若い乗組員たちのひとりが、わずかにうつっています。


▼ぼくが、ささやかながら「現場主義」を掲げていることは、ご存じのひともいると思います。

 独研の社員たちとも、それを共有したくて、たとえば海上自衛隊機にみんなで搭乗し、尖閣諸島や中国が日本の資源まで吸い上げてしまっている東シナ海のガス田を見て回ったり、護衛艦(ミサイル駆逐艦)に乗って、すばらしい海風に吹かれながら海洋国家日本の護りの最前線を航行したり、そうした機会をつくるようにしています。
 そのなかでも、潜水艦への搭乗は、もっとも機密性の高いものです。

 今回の八重潮でも、艦内をくまなく回りながら、独研の社員たち(総務部員や研究員たち)は艦長らと自由に議論し、質問していきます。

 実は艦内で撮った写真も、その多くについて三木少将、それから藤田艦長から公開許可を得ています。
 それは別の機会に、みなさんに見てもらおうと考えています。
 もう少し正確に言えば、公開許可が出ているからと言って、それをインスタントにすぐに全部、公開してしまうのではなく、ぼくなりにもう一度、精査してから公開すべきを公開しようと考えています。
 潜水艦というものは、それぐらい機密性が高く、また現代の海の護りを支えているものです。


▼それから、独研の社員たちにも汲みとってほしい「現場主義」というのは、もちろん、こうした防衛(国家安全保障)の最前線に限りません。
 現場に触れることができるのも、独研の社員たちに限りません。

 ぼくが大学の講義などで紹介しているのは、たとえば誰でも入れる京都御所の玉砂利の上も、世界に類例のない『現場』です。
 なぜか。
 また、いつか書きましょう。書籍ではすでに書いています。新刊でも、もう一度、触れるかもしれません。

 現場、ゲンバ。
 この言葉を口にするとき、ほんとうはぼくの胸に、どっとさまざまな思いがあふれます。

 たとえば、戦火のイラクで、首に大きな、大きなコブをこしらえた少年と会った、その土ぼこりの道。
 アメリカ軍は劣化ウラン弾の健康被害を否定しているけれども、その劣化ウラン弾で破壊された戦車の墓場へ、少年に導かれて行き、そこで、カネになるものを漁らねばならない少年、それにその友だちと身振り手振りにわずかなアラビア語で話しているとき、アメリカの頭ごなしの否定をきちんと諸国で検証せねばならないという思いが込みあげ、敗戦国のドイツや日本では、この劣化ウラン弾を保持していない事実を、あらためて考えたこと、それが甦ります。

 たとえば、沖縄の白梅の塔で、暗い自決壕の奥へ降りていくと、訪れるひとがごく少ないために、学徒看護隊の少女たちが亡骸になり、骨になっていった、その柔らかな黒い土がそのまま残っています。
 その土の手触り、この手の平にありありと伝わった少女たちの魂の名残を、思い起こします。

 たとえば、ぼくの原点ともなっている記者時代の、そのいちばん最初の若い新米のサツ回り(事件記者)時代に、あるマンションで、「いなかから、おいしいものを送ってきたので」と隣室の男から言われてドアを開けた、若い奥さんが、その男に襲われて植物人間になってしまった、その部屋のドアノブの冷たい感触も、思い出します。



 あ、気がついたら、もう午前3時50分だ。
 今朝は、関西テレビの「ぶったま!」に生出演する日だから、午前4時半に「起きる」つもりだったのに、起きるどころか、寝る時間がないや。
 でもね、ちょっとだけ、これから寝ます。
 みなさん、また朝に会いましょう。





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