On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2011-06-27 18:01:37

つとめを果たすことができて感謝しています


▼みなさん、今は6月26日の日曜日、夜7時を回ったところです。
 東北新幹線で帰京する車中です。
 すこしホッとしています。
 きょうの午後3時から被災地の宮城県・南三陸町で、町長の佐藤仁さんと再会し、みなさんから預かっていた義援金300万6,400円の目録を無事、お渡ししてきたからです。

 佐藤町長は深々と頭を下げられ、たいへんに喜ばれました。
 町が、自在に使える復興資金をすこしでも多く求めていることは、現地で証言を聴くと、とてもはっきりしていますから、みなさんの志は直ちに生きると思います。


▼町長らとの会談を終えると、近くにいらっしゃった消防団員のかたがたが「青山さん、お願いがあるんです」と声をかけてこられました。
 聞くと、七夕の日に、みんなで復興への願いを込めて、短冊(たんざく)を書いている最中だから、ぼくにも一つ書いてほしいということでした。

 もちろん引き受けて、こう記しました。
「わたしたちはみな、南三陸町のみなさんの強さを信じています。全国民と連携して、復興、福興を。  青山繁晴 拝」

 きょう南三陸町に入って、最初に訪れたのは、「福興市」(ふっこういち)でした。「復興市」ではないのですね。
 単なる復興だけではなく、幸福を新しく興すという願いで、「福興」という言葉をつくり、フリーマーケットを始めたそうです。
 そこには、まさしく全国から駆けつけた農家やボランティア、ミュージシャンらさまざまなひとが、野菜をはじめ各地の産品を持ち寄っていて、その収益を義援金に当てるということでした。
 前に訪れたときには、想像できないような明るい笑顔も、その「福興市」にはありました。
 そこでぼくも、短冊の中にその言葉を使わせてもらいました。ちょっと嬉しかったからです。


▼町内の被災地を、海辺から内陸まで現状を把握するために、歩きました。
 地元選出の小野寺五典代議士が同行して、ありのままに説明してくれました。
 彼は自民党の代議士ですが、政党色は関係ありません。東京水産大学(現・東京海洋大学)の出身という珍しい衆院議員で、青山千春博士の大学の後輩に当たります。それがきっかけで知り合いましたが、にんげんとしての良心を持ったひとです。
 被災者と一緒に、雨に打たれ、汗と泥にまみれながら苦しみ抜いています。
 小野寺代議士をみていると、もはや既存の政党で政治家を分けるのではなく、ひとりひとりの個性と能力、そして良心を、有権者が見分けていく時代だと、実感します。
「政党よりも、その政治家そのものを見て、投票しませんか」という問題提起をこれまで述べてきましたが、大震災で、その考えをさらに深くしました。

 そして最後に、南三陸町役場の防災庁舎を訪れました。
 みなさんがご存じのように、遠藤未希さん(南三陸町役場の危機管理担当の職員)とその上司の三浦毅さんのおふたりが、みずからを犠牲にして町民に避難を呼びかける放送をなさった場所です。

 南三陸町の役場は、庁内の他の多くの建物と同じく根こそぎ、津波にさらわれて土台しか残っていない惨状なのですが、隣に建ててあった防災庁舎は、赤い鉄骨だけはかろうじて残りました。
 その鉄骨に、遠い海の沖合の漁具やら、あるいは町民が着ていた衣服まで、息を呑むほど大量で、想像を絶するほどさまざまな物が、絡まりついていました。
 その写真を、この個人ブログに以前、アップしましたね。

 その、絡まった物は驚くほどきれいに取り除かれていました。
 町長に聞くと、たいへんな努力があったことが分かりました。
 そして、手作りの祭壇が置かれ、お花や寄せ書きやお菓子、お酒、お水などが祀られていました。

 町長さんたちの話によると、いたずらをするひとや、「面白半分で防災庁舎の屋上に登ろうとする人」(佐藤町長)なども、訪れる人々のなかには、いるそうです。
 町長さんは「それが心配です。青山さんからも、みなさんに、よろしくお願いしますと伝えてください」と、おっしゃっていました。その通り、よろしくお願いします。

 写真は、現在の防災庁舎です。
 赤い鉄骨に絡まった物は取り除かれても、周りには、あらためて深いため息が出るほどの瓦礫があります。
 写真の鉄骨はどこから来たのか。防災庁舎の一部なのか、それとも、はるか遠くにあった建物の一部なのか。何が起きても不思議ではなかったのが、この震災なのです。





※神戸で開いたチャリティ講演会の収支は、以下の通りです。

【収入】

▼講演の受講料

・第1部講演(3時間)の受講料として振り込まれたもの=371人
 185万5,000円
・第2部講演(3時間)の受講料として振り込まれたもの=288人
 144万0,000円
・当日、現金で支払われた受講料=23人
 11万5,000円

▼募金

・会場に設置した募金箱への募金
 42万5,201円
・振り込まれた募金
 34万9,210円

▼青山繁晴著の書籍の売り上げ

・120冊
 18万0,000円

▼以上を銀行口座に仮保管していたための利息

・39円

▼合計

・436万4,450円


【支出】

▼受講料の返金(当日に不参加だったかたに返金)=2人

・1万0,000円

▼会場の設定、受付業務などを委託した「株式会社アイス」への支払い

・105万0,000円

▼旅費

・東京の独立総合研究所と神戸の講演会場間(青山繁晴、青山千春博士、研究員)
 14万5,170円

▼書籍の売り上げのなかの出版社(PHP)の取り分

・15万1,200円

▼南三陸町の口座への振り込み手数料

・1,680円


【差し引き、義援金として南三陸町の口座に振り込み】

・300万6,400円


【支出はあったが、計上しなかったもの】

▼東京の独立総合研究所と南三陸町の役場などの間の旅費(目録の手渡しのための旅費を含む)

▼仙台における宿泊費

 以上の支出は、今回の義援金贈呈の企画・実行に必要な経費であり、独研(独立総合研究所)の総務部から青山繁晴(独研社長)に提出された原案には計上されていました。
 しかし、青山繁晴の判断として「支出として計上するのは、講演会開催のための直接経費に限定したい」という理由から、支出から外し、独研の負担としました。



(以上、日曜日に新幹線の車中で書き起こした書き込みを、帰京後に完成させました。6月27日月曜夕刻、記)
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