On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2011-11-08 15:08:40

後日談をすこし



▼11月3日の木曜、ぼくの出張先に、わざわざ関西テレビの報道番組「スーパーニュース・アンカー」の若手ディレクターとプロデューサーがやって来られました。
 アンカーのなかの「青山のニュースDEズバリ」のコーナーで使われた中国の地図で、台湾が中国と同じ色に塗られていた一件で、説明と謝罪にお見えになりました。

 ぼくとしては、ほんとうは「来なくてももいいよ、電話でいいよ」とプロデューサーの携帯電話にかけて、言おうかなと思いました。
 しかし今回は、「電話でもメールでも足りません。お会いして話をさせてください」という若手ディレクターの言葉を尊重したほうが、いいかな、と思い直しました。

 ディレクターとプロデューサーが現れ、ほんとうにこころからの誠実さで、「あまりにも申し訳ないことだと考えています」と謝罪されたうえで、経緯を説明されました。
 それによると「「たとえば、日本の学校教育で使われている帝国書院の地図では、台湾と中国は同じ色に塗られています。しかし、それと、報道番組としてのアンカーは姿勢が異なるべきです。また、青山さんが、台湾を中国の領土の一部と考えていないことは、われわれとしても重々、承知しており、その青山さんのコーナーで不用意な地図を、チェックミスで安易に使用したことを、深く反省しています」ということでした。

 あの地図は、関テレの美術部門で制作した地図だけれど、報道部としてきちんと対応したいという意味でもありました。
 ぼくからまず、「来週(11月9日)水曜日のアンカーで訂正をなさってください」と求めました。そして「ぼくの語りでの間違いであれば、放送界の慣習(番組内の誤りはどんなケースでもメインキャスターが訂正し謝罪するという慣習)とは関係なく、ぼく自身が訂正し謝罪します。しかし今回は、違いますね。ぼくとしては不可抗力でした」と述べました。
 ディレクターとプロデューサーからは「その通りですから、11月9日の水曜アンカーでヤマヒロから話させます」という答えがありました。


▼それから、「青山さんも、台湾は中国領土とお考えなのか」という趣旨のコメントを寄せられたかたから、再び、コメントがあり、その中にこう書いてありました。

「コメントを書いた当時、関西テレビのあまりの対応の酷さに怒りが冷めず、感情的になっておりました。ブログを拝見し、アンカーに対する誤解が解け冷静になった今、青山さんに八つ当たりするコメントであり大人げなかったと大変反省しております。アンカーに向けるべき怒りを青山さんに向けてしまいました。八つ当たり以外の何ものでもありません」(原文のまま)。

 さらに、このようにも書かれています。
「今、振り返ると、私自身、電話中、『青山さんがそんな(=台湾が中国領土である)立場なわけないでしょっ!!!なのに、そんな地図使うわけ!?』と言っておりました。
 また、ブログを拝見し、応対した男性スタッフが報道局所属ではなかったことと、彼の対応と報道局の対応とのギャップに驚きました。
 どうして報道局所属でもないスタッフが『台湾は中国領土ですので、訂正はしません。それが、関西テレビ・アンカーの方針です』と言い切ったのか腑に落ちません。最初に電話に応対した女性は事の重大さに気づき慌てているようでしたから、彼の応対は残念でなりません。アンカーを愛する一視聴者として、アンカーの信用を失墜させるような対応が二度とないよう、関西テレビに意見してみることにします」(原文のまま)。

 このかたのお気持ちは、深く諒解しました。


▼察するに、このかたの電話に対応した関テレ社員(報道部の所属ではなく、たぶん視聴者窓口のひと)は、おそらく、「日本が1972年に日中国交回復した時点で、一つの中国という中華人民共和国の主張を受けて入れているから、この地図でいいんだ」ということではないでしょうか。

 しかし、仮にそうだとすると不正確な認識です。
 日本国は、日中共同声明に基づいて、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であると表明するところの、中華人民共和国政府の立場を、充分に理解し尊重する 」という立場を取っているのであって、台湾が中華人民共和国の一部であるというのは、あくまでも中華人民共和国の主張です。
 日本国の認識でも主張でもありません。だからこそ、その中華人民共和国の立場を「理解し尊重する」のです。
 したがって、台湾の国民と政府が、主権と自由を主張していることをもまた、決して軽んじることなく尊ぶのが日本やアメリカをはじめとする少なからぬ民主主義国家の立場です。。

 そして、たとえばぼく自身、台湾を訪れた際、現地で触れあった国民、市民から「中国共産党の独裁に呑み込まれず、台湾の主権と自由と文化を護り抜きたい」という強い願いを何度も受け止め、しっかりと支持しています。


▼ぼくとテレビとの、ちと辛い関係については、驚くほかないほど沢山のコメントがありました。
 これらについては、まだ話す気になれません。

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