On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~

2006-03-20 07:31:17

歩きだす





 自宅書斎のカーテンが、窓ガラスとの間に光をため込むように明るくなり、3月20日の朝になりました。
 世界で初めての大規模な化学テロが、この日本の首都で起きた地下鉄サリン事件から11年、アメリカ軍がイラク戦争を始めてから3年、春分の日を翌日に迎えたこの日は、わたしたち日本国民も世界も記憶せねばならない日です。

 きのうはフジテレビの「報道2001」に参加したあと、ジムへ。
 躯(からだ)を造りなおすための新しいトレーニング・メニューに取り組む初日だったけど、中東出張ですっかり、なまったあとだから、ほんとうにキツかった。
 睡眠不足も加わって、胸の内では、もう投げだそうかとなんども思ったけど、トレーナーの励ましも効果的で、どうにかメニュー通りに最後までやりきりました。
 鍛錬のあと、プールでわりあい軽く泳いで調整し、スポーツマッサージを受けて、ひさびさにすっきりしました。

 新しい鍛錬メニューに取り組みはじめて、じぶんの躯が、瞬発力はあるけど意外に筋持久力に乏しいことが自分で分かったのです。
 アルペン・スキーヤーだった時代は、下半身に集中して鍛えていたけど、いまは全身をバランスよく向上させた筋力をつけていきたい。
 世界の転変にかかわっていくならば、強力な体力を維持し、充実させることは、ぼくが、みずからしっかりやらねばならないことです。
 それに躯を造りなおすことは、鍛えているときは辛いけど、ときどき愉しい。

 実は、ジムで番組出演者のひとりとお会いして、背筋トレーニング中のそのかたと、にっこり挨拶。
 鍛えている人は、いますねぇ。


 今回の「報道2001」は、中国特集。
 テレビ局は、局によって、番組によって、やり方や雰囲気がさまざまに個性があります。
 この番組は、本番の前に、出演者がそれぞれ個室で備える普通のスタイルじゃなく、出演者の全員が同じ部屋で歓談します。誰にも、現職大臣であっても、個室はありません。
 報道番組らしいスタイルかも知れませんね。
 早朝の番組だから、コーヒーを飲んだり、旧交を温めたり、初めてのかたと名刺を交わしたりしていると、あっというまに生放送の本番です。

 スタジオは案外、コンパクトです。
 ぼくが出た番組のなかでは、もっとも狭い。
 画面では、とても広く見えるから、プロフェッショナルなスタジオ美術とカメラワークに感嘆します。
 そのカメラそのものも、見慣れた大型カメラは少なく、コンパクトなカメラが多くて、すこしだけ驚きました。

 ぼくを含めたゲスト・スピーカーは、4人。
 中国に近い立場が2人、このごろの中国に厳しい立場が、ぼくともうひとりの2人となっていたけど、わりあいフェアな議論ができたように思います。

 ぼくは中国を30数回、訪れています。
 中国共産党関係者にも、人民解放軍の関係者にも、こころをひらいて議論できる友人がいます。
 それだからこそ、言うべきこと、伝えるべきことは、タブーをつくらずに、きちんと話したい。
 中国の友人たちにとっては、「あいつと会って議論すると、怒鳴りあいにもなるけれど、日本がほんとうは何を考えているかが、嘘なく分かる」という存在でありたい。
 それは中国に対してだけではなく、アメリカにも韓国にもヨーロッパ諸国にも、どこの国々対しても、まったく同じです。


 さぁ、朝の光のなかを、原稿の執筆を続けます。

 次のテレビ番組は、3月27日放送のTVタックルになる予定です。
 関西テレビの新しい報道番組は、4月6日の木曜日が出演初回になります。
 ぼくの担当は、水曜日なんだけど、初回だけはアメリカ出張と重なるので、木曜日にずらしていただきました。

 独研の本社で、この週末も泊まり込むようにして研究プロジェクトの報告書原案づくりに取り組んでいる若い研究員たち、それから、この地味なブログにわざわざ立ち寄っていただくみなさんに、きょうも光の一日がありますように。


 写真は、報告書作りでもっとも苦労を重ねているひとり、シアトル育ちの若き主任研究員が、デンマーク出張のときにコペンハーゲンで撮ってくれた一枚です。
 この出張のときの写真は、前にも何枚かアップしましたね。
 今朝の気分にいちばん近いのが、これです。

 コペンハーゲンは、通りからすこし中へ入ると、このようにカラフルでいて落ち着いたアパートメントが並んでいます。
 ぴたりと隣り合わせでくっついて、それでいて、それぞれが個性豊かです。
 そして生活感と、童話のような感覚が、さりげなく同居しています。

 この、ちょっと不思議な世界から、気負わずに歩きだしていきたい。
 そういう気分です。

 写真はちっちゃいですが、もしもよおく見ていただくと、ぼくは左足を踏み出して歩き始めています。



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