2006-04-03 04:17:01
いちばんめ *アメリカ短期出張 その3
機内で考えたことが、もう一つあります。
こうやって海外出張に向かう機中でも、ぼくはいつも仕事でいっぱいです。
それは、この地味サイトにふだんから来てくれている人なら、みなさん、ご存じ。
そして、ぼく自身も、それは別段、かまわないのです。
若い時代にたくさん、たくさん怠けたので、いまが忙しいだけです。
神さまはすべてを見てらっしゃるから、ちゃんとバランスをとって今を忙しくさせているだけなので、この凄絶と言いたくなるような異常な忙しさも、実はごく自然なことなのです。
ワシントンDCのダレス空港に飛ぶ機中で考えたのは、それではなくて…
いつもぼくは目の前の仕事を優先させてきました。
今だったら、まず、ワシントンDC近郊で開かれる安全保障会議の準備ですね。
そりゃ、その会議に出るためだけに、この飛行機に乗っているのだから。
会議で議題の一つになる、地下鉄サリン事件への見解をまとめること。
アメリカ側から示されているAGENDA(議事進行)を頭に入れること。
パネル・ディスカッションで一緒に舞台に上がる人たちの経歴や主張をチェックすること。(ブレア英首相の現職のスポークスマンも居ます!)
それから、週刊誌から頼まれている原稿、会員のみなさんが配信を待ってくれている会員制レポート「東京コンフィデンシャル・レポート」の原稿、共同通信を辞めてもう8年3か月が過ぎたのに、いまだに共同通信のために書いている連載原稿。
それに、出版が遅れているノンフィクションの本の、書きかけ原稿。
5月の連休明けに、完成稿を編集者に渡す「最終約束」をしているから、もう待ったなし。
さらに、政府機関から委託された研究プロジェクトの報告書。
これは、独研からすでにドラフトとして、その政府機関に送ってあるけど、いずれ手直しが必要になるかも知れない。
機中でのぼくのモバイル・パソコンには、これだけの文書が開かれています。
なぜ、いちばん書きたい小説の書きかけ原稿が、開かれていないんだろう。
こうやっていつもいつも、ほかの仕事を優先させて、小説を書くことを後回しにするなら、一体いつ書きたいものが書けるのだろう。
いま書かないで、いつ書くのだ。
機中で取り組んでいる仕事で言うと、まず「東京コンフィデンシャル・レポート」は、書きたい。
会員のみなさんが待ってくれている!
ぼくと独研を、まさしく支えてくれているレポートなのです。
安保会議の準備も、必ず、充分にやりたい。
この会議へ、ぼくと独立総研の主任研究員が公式招待されるまでに、この主任研究員が尽くした努力を考えると、いい結果を出したい。
それに、日本国民をテロリズムから護るうえで、これ以上はないぐらいに大切な国際会議になる。
共同通信は、ぼくを育ててくれた。
だから恩返しと思って、共同通信の社員と同じ原稿料で、ずっと毎週、毎週、3本の原稿を書き続けている。
週刊誌の原稿は、なんともう20年以上書き続けていて、とっくに、やめるべき潮時は来ている。
独研の秘書室は、ぼくの忙しさに日々、直面しているから、独研の研究本部も、社長の力を取られるのは困り果てるから、みな声をそろえて「やめてください」と言っている。
だけども、ぼくが降りると編集者が困ると思うと、踏み切れない。
ノンフィクションの本も、ぼくの講演を聴いてくれる人を中心に、ずいぶんと待ってくれている人たちがいる。
編集者も、考えられないぐらい辛抱強く待ってくれた。「最終約束」は絶対に裏切れない。
研究プロジェクトの報告書は、もちろん完成度を徹底的に高めねばならない。
だからね、小説を書くのも、ほかの仕事と同時進行で、やるっきゃない。
だけどね、せめて同時進行でやらないと、永遠に小説は書けない。
小説だって、編集者が待ってくれているし、ほんの少数だけど、待ってくれている読者もいる。
単行本として出版された小説「平成」のあと、なぜ書かないのか、みなが首を傾げている。
なぜ、いつもいつも、小説以外の仕事が最優先なのか。
それはたぶん、小説をいちばん書きたいから。
いちばん、やりたいから。
いちばんやりたいことを、いちばん優先させると、悪いと思ってしまうのだ。
小説もプロとして書いている。
純文学として「平成」を仕上げて、文藝春秋から出版したのは、もちろんアマチュアの世界ではない。
プロとしてデビューしているのに、まるで自分の趣味を優先させちゃ悪いみたいに思って、いつも先送りする。
これは、間違いだ。
機中でそう思いました。
ワシントンDCのダレス空港まで、あと1時間ちょっと。
窓から、海と、アメリカの地方都市がみえています。
ナイアガラの滝の近くです。
地方でも、日本の倍くらいの幅の高速道路がどこにも走っていて、たとえば中東へ飛ぶ機中からみる光景とは、あまりに違います。
だけども、こうやってワシントンDCやニューヨークに向かう飛行機に乗っていると、2001年9月11日、テロリストにハイジャックされた飛行機に乗り合わせたひとびとの気持ちがいつも胸に迫ります。
その飛行機は、二度とひとびとを地上に降ろすことなく、超高層ビルや、国防総省の五角形のビルに突っ込んでいきました。
写真は、さっきと同じ場所の花です。
なんとなく、これがいちばん、ふさわしい写真なんです。
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