2023-07-11 03:53:07
この日時は本エントリーを書き始めた時間です
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LGBT法案の採決で退席★実録の4
▼このささやかな個人ブログには、急ぎのエントリーと、じっくり取り組むエントリーがあると考えています。
両方どんどん書いていくのがもちろん理想ですが、さまざまな公務と原稿に取り組むのは、ぼくひとりです。
宇宙人ではないので、あ、宇宙人でも同じか・・・24時間だけしか無いので、どうしてもブログのアップは、みなさんの期待どおりにはいきません。
赦してください。
▼さて、じっくり書いているエントリー「退席の実録」の続きをアップします。
~実録その1 ( これ ) 、その2 ( これ ) 、その3 ( これ ) からの続き~
▼去る6月16日金曜の午前、日本国参議院の本会議は、内閣委員長が登壇され、「委員会段階で自公維国の4党によるLGBT法案が可決され、この本会議に送られてきた」という事実の報告を始めました。
このあと参院議長が「賛成の方は起立を」と求めます。
議長がその発言をなさると、起立する人はすぐに起立し、採決はあっという間に終わります。
わたしは、みずから決していた退席に、いつ踏み切るかもよく考えておきました。
▼内閣委員長の報告が始まる前に、席を立てば、委員長に失礼に当たります。
一方で、議長の発言が終わるのを待てば、退席が遅れ、「起立しなかった」とカウントされて、立憲民主党や共産党の野党多数派の反対行動と同調したと誤って公式に記録される恐れがあります。
自由民主党の内部から反対の声を上げるのと、野党の反対と同調するのでは、決定的な違いがあります。
そこで、内閣委員長が報告なさっている間に席を立つと決めていました。
内閣委員長は、これまで政策審議の場でご一緒することが多く、人柄の信頼できる先輩議員です。
国民に与えられた自席からまっすぐ立ち、内閣委員長に黙礼し、素早く左へ動きました。
左に居るはずの同期議員は、武漢熱に感染されたばかりで、公式の病欠です。
同期議員はその後、感染からすぐ恢復されて良かったです。この日はたまたまその議員にも迷惑を掛けずに、さっと通路に出ることができました。
本会議場の通路は、両側に各党の議席が並んでいる、ごく狭い通路です。
▼大きく足を踏み出すとき、斜め後ろの席の和田政宗議員の顔を見ました。
これ以上はないぐらい、厳しい顔をなさっています。
これまで「青山議員に同調したい」と言ってこられたかなりの数の参議院議員は、和田さん以外はすべて「申し訳 ありません」と賛成に回られました。
後援会長に説得された議員、支持団体に苦情を言われた議員、主要な献金先や、あるいはパーティ券売却の面倒を見てくれる相手先から「やめてください」と言われた議員、さらには地元で「そんなことをしたら先生が今度、いい役職に就けなくなる」と言われた議員、そして派閥の会長をはじめ幹部に「絶対にやるなよ」と釘を刺された議員です。
それぞれの事情と経緯を、わたしは把握していました。
しかし和田さんは、最後まで変わりませんでした。
和田さんは、護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 ) の一員ですが、政治献金、政治資金集めパーティ、支持団体、後援会、後援会長、地元、派閥・派閥に類似したグループ、それぞれについて、あり方がおそらくわたしと違う生き方を選択されているでしょう。
わたしはいずれも皆無です。こういう日のためにも、自由と自律を確保してきました。 ( ちなみに和田さんは、わたしと同じ無派閥に分類されることがありますが、菅グループに属しておられます )
だから和田さんの決意と行動は大変です。
それでも、厳しい顔を拝見した瞬間、ああ、やはり和田さんは変わりませんねと理解しました。
わたしと一緒に立つことはなさいませんでしたが、わたしとは違うタイミングを模索なさっているのだろうとも分かりました。
▼わたしは、両側の議席から視線を浴びながら、すこし登りになっている通路を歩きました。
わたしの眼の向こうには、議場の安寧に高い意識で責任を持つ衛視さんが見えていました。
この本会議が始まるとき、衛視さんのひとりに「わたしはLGBT法案の採決でいったん退席し、再び議場に戻って、残りの採決に参加します」とあらかじめ告げました。
そんなことをする義務はありません。
しかし責任を負う衛視さんの立場からすれば、事前に知っているのと知らないのとでは、大違いです。この衛視さんはおそらく、上司に伝え、衛視さん全体が備えやすくなるでしょう。
わたしはその衛視さんに眼を送り、衛視さんはかすかに表情を変えました。
分かっています、という表情です。
▼わたしは、手洗いにも退席しません。
国会の審議は委員会も本会議も主権者から負託された神聖なものだという意識を、他の議員とできれば新しく共有したいと願うからです。
だから審議中の議場を後にしていると、ひとあしごとに、これまでにない感覚を感じました。
そのとき、左横から突如、山東昭子議員が通路のすぐ前方に登場されました。
はてな?
山東さんとも、民間の専門家時代から、いや政治記者の時代から、長いお付き合いがあります。
自由民主党が参議院で第2党に転落した時代に、参議院の女性初の副議長になられました。
そのとき、国会議事堂のどっしりとした副議長室を、独立総合研究所の代表取締役社長・兼・首席研究員としてお訪ねして話しました。
こうして副議長になってしまえば、おそらくは議長にはなれない。山東さんと不肖わたしの間に、その暗黙の理解がありました。
しかし山東さんはその後、参議院初の当選8回を果たされ、みごと議長になられました。
議長経験者がまさか、党議拘束に反するとは思いませんから、咄嗟に、たまたま手洗いに立たれたのかと思いすぐに、いや、とんでもない、そんなことはあり得ないと考え直しました。
審議中はまるで当然のように退席してしまう野党の著名議員らでも、採決には戻ってきて、主権者には分からないように帳尻を合わせます。
審議から採決となるタイミングで手洗いに出る人は居ない。
ましてや議長閣下でいらした山東さんです。
では、長い知友のわたしに、退席をやめるように説得しようと、通路に出てこられたのか。そんなことがあるのかなぁ。
山東前議長は、わたしのすぐ前に出てこられ、そのまま通路を出口の方へ向かいつつ、ちらりとわたしを振り返られました。
さっきの和田さんと同じく、見たこともないような厳しい表情でした。
この時はまだ、山東前議長の真意は分かりませんでした。 ( その後に極めてはっきりします )
▼衛視さんに事前に告げていたせいか、出口の厚い扉は開け放たれています。
本会議場は広く大きく、出入り口はいくつもあります。そのうちのひとつが、開かれています。
そこから一歩、出れば、メディアが詰めかけているのでしょう。
もしも取材があれば、わたしは「LGBT法案に反対するために退席した」と明言しようと決めていました。
そうすれば必ず、自由民主党からの処分がさらに厳しくなると覚悟していました。
本会議場から手洗いか、あるいは理由も分からないまま、退席する議員は、与野党ともに沢山います。前述したように、野党の中には、必ず審議を放棄して出て行く議員がいます。しかし日本のマスメディアは野党に不利なことは決して報道しないから、国民はほとんどご存じありません。
一方で、採決のときに退席すれば、それは記録に残ってしまうし、普段どんな様子の議員でもふつう退席しません。
しかし腹痛とか何か異変があれば、それは別でしょう。
したがって同じ退席でも、その後に「LGBT法案に反対」と明言するのと、そうは言わない、あるいは別のやむを得ざる緊急の理由を述べるのとでは、党議拘束違反という意味では、まったく変わってくるのです。
これは自由民主党に限ったことではありません。動画の「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」で参議院本会議の議事予定の紙をお見せして話したとおり、基本的に日本の政党・会派は、与野党を問わず反対、賛成を縛ります。
わたしは反対の意思を持って、退席する。
そのように世に明言し、そのために厳しくなるだろう処分もそのまま受容することまでを考え、決意したまま、本会議場の開け放たれた出口へ歩きました。
先に、山東前議長が、お出になりました。
▼わたしの全身がはっきりと、議場の外へ出たとき、凄まじい人数のカメラと記者が、廊下の窓際に結集しているのが見えました。
おそらく、衛視さんたちの配慮でしょう。
退席するわたしたちの行動をメディアスクラムが妨害しないように、取材は、退席の行動が完結してからとメディアに依頼してくれていたのでしょう。
おのれの全身が、擦り切れた赤い絨毯の廊下へ出たとき、その膨大な人の壁が動いて、わっと迫ってくるのが見えました。
『こうやって取材しても、おそらくわたしの話は記事にしない、音声も映像も収録しても、放送はしない。わたしという国会議員はこの世に居ないことにしてきたメディアの大勢はこれからも変わらないだろう』と考えました。
しかしそれはそれ、記者が取材するのなら、正当に、淡々と応える。報道するしないは上の判断、そう考えていました。
18年を超えて記者生活を送ったのです。それも主流に位置する記者でした。メディアの内情、手の内は知り尽くしています。
また仮に一部のメディアが報じても、わたしの行動をほんとうには理解なさらない国民も少なからずいらっしゃるでしょう。
しかし、国会議員とは、祖国の主権者に負託されつつ、主権者と闊達な議論を交わしつつ、おのれの信ずるところに最後は悔いなくしたがって行動し、連帯を希求しつつ孤独もありのままに受容する存在であるべきです。
さぁ、マイクとカメラと取材メモ帳の大群に真っ直ぐ向かい合います。
( 実録の5に続く )
▼正直、国会議員になってから、トンデモナイ日々です。
ほんとうの、正直な、こころの支えは、職業としての作家でもあるわたしの著作を読んでくださるひとです。
できれば、精魂を傾けた物語を読んでください。ここにあります。